住江織物株式会社 様
住江織物株式会社 様
Asprovaの導入で工場内の「見える化」を実現、
スケジュール立案時間を半減し、在庫量も約45~50%削減
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住江織物様の始まりは、1883年(明治16年)にまでさかのぼる。大阪住吉村で手織りによる緞通(だんつう:敷物の一種)の製作を開始、1891年には帝国議事堂に赤い絨毯を納入された実績を持つ。その後、1913年に住江織物合資会社を設立、1930年に現在の住江織物株式会社となっている。主な営業品目としては、カーペットなどの床材、ドレープなどのカーテン、大阪工場が生産している自動車や電車のシート地があり、開発から製造、販売までを一貫
して手がけている。 2003年9月、同社の大阪工場では工程管理システムとともにAsprovaを導入し、工場内の「見える化」を実現、その結果大幅な中間在庫の圧縮を果たした。Asprova導入前の課題、導入の経緯、導入の効果について、当時プロジェクトリーダーとして活躍された事業統括部 業務部 主査の大谷浩之氏、現在Asprova を利用して製造計画の立案を担当されている大阪工場 製造管理部 工務グループグループリーダーの木下明彦氏にお話を伺った。 |
住江織物株式会社 ■住所: 大阪市中央区南船場3-11-20 ■設立: 1930年12月26日 ■資本金: 95億5417万3950円(2006年5月31日現在) ■従業員数: 463名(連結1,709名)(2006年5月31日現在) ■事業内容: 機械織各種カーペット / 陸・海・空各交通機関座席用モケット・シート地 / ドレープなど、 床材、椅子張地、カーテン壁装地、手工芸織物の開発・製造・販売 |
■工場の稼働実績を把握するために、工程管理システムとAsprovaを導入 |
同社の主要品目である床材や椅子張地は、数多くの工程を経て作られている。例えば電車や自動車の座席用椅子張地であるモケット
は、まず原材料となる糸が外部の協力会社で「糸染め」され、それが自社工場内で、糸の本数や長さなどを揃える「整経」 → 実際に製品を織る「製織」 → 「半製品検査」 → 毛並みを刈り込んで揃える「シャーリング」→ 毛並みを整える「ブラッシング」 → 最終的なデザインを施す「染色/プリント」 → 「仕上」 → 「製品検査」という各工程を経て、最後に「梱包」され、「出荷」にされることになる。 工程管理システムおよびAsprovaの導入プロジェクトは、2002年末から2003年頭にかけて始まったが、その背景には、上記のような多くの工程を流れていくうちにモノの所在地が不明確になり、全体の作業の流れが混乱した状況にあった。事業統括部 業務部 主査の大谷浩之氏は、当時を振り返って次のように語る。 「以前は3~4工程と比較的に単純な流れだったのですが、近年は市場ニーズによって製品種類が多様化し始め、製造工程も現在のように複雑なものが求められるようになってきました。こうした状況で人手による生産計画は、限界にきていました。モノの所在地も分かりにくく、工程の管理者が現場に行き、次はこれをやってくれ、あるいはこれが急ぎなので先にやってくれという指示を出すという状態でした」。 また各工程の細かい作業順序や使用薬剤は、計画担当者“個人の頭の中”に入っており、その人間が休むと、スケジューリング作成に大きな支障を来すという課題もあった。 | |
さらに、大阪工場で生産管理を担当する製造管理部工務グループ グループリーダーの木下明彦氏は、スケジューリング作業自体の問題点を、次のように語る。「それまでは、担当者が約4~5時間もかけて行なっていました。また計画立案のノウハウがデータ化されていなくて、計画立案は専任担当者しか処理できない状況でした。」 そこで同社は“工場の現在の稼働実績を把握する”ことを第一の目標に掲げ、製造工程全体を管理するための工程管理システムを導入することを決定した。また正確な実績を取り製造工程の流れをデータ化して把握し、誰でも生産計画立案に携わることができる環境を整える事が重要だ。さらに、精度の高い稼働計画を立て、計画立案自体の効率を高めることも考慮して、生産スケジューラとしてAsprovaの導入を行なった。 |
■Asprova選定のポイントは、“自社の製造工程に対応可能だった”こと |
工程管理システムおよびAsprovaは、2003年9月に本稼働を開始した。スケジューラとしてAsprovaを選択した理由について、大谷氏は「私たちの製造工程に一番フィットしたのがAsprovaだったから」と語る。 同社の製造する繊維織物は、部品を組み立てていくという工程ではなく、原材料を加工していく工程を経ることになる。原材料の投入ロットも流動的で細かい。こうした特性を考えた時に最適な製品がAsprovaだった。Asprovaは数多くの導入実績を持つパッケージ製品で、あらゆる製造工程をカバー することが可能だ。また導入コストの低減や導入期間の短縮も期待することができた。 実際のスケジューリングにあたっては、製品ごとの製造工程や使用薬剤のデータがマスターとして工程管理システムに登録されており、ここから必要な情報をアスプローバに抽出して計画を立てる形になる。作業現場にはタッチパネル式のPOP端末機を設置し、各々の作業が終了した時点で“作業終了”の情報を入力してもらうことで、工程全体の進捗状況を把握できるようにした。 |
■ボトルネックの工程や最適な投入ロットの「見える化」を実現 |
Asprova の導入効果としては、まず製品の作業状況がよく「見える」ようになったことが挙げられる。「従来は各工程をモノが通過するタイミングを“勘と経験”によって設定していた」(木下氏)が、全工程を一元的に管理できるようになったことで、PCの画面上で、最適な生産計画を立てることが可能となった。 さらに稼働実績を取ることで、モノの流れが正確に把握できるようになり、これによって、“どの工程でモノが滞留しているのか”、つまりボトルネックとなっている工程までが明らかになったという。大谷氏は、「従来考えていた工程ではない箇所が、実は最大のボトルネックだったことが分かった」と、 「見える化」の効果を強調する。 また木下氏は、「投入する原材料のロットも、人の勘で適切と思えたロットサイズが、工程全体の流れから見ると不適切であることが見えてきた」と語り、効果として、部分最適から全体最適への計画実現を挙げる。 これまで作業者の“個人の頭の中”だけで管理されていた作業順序や使用薬剤についても、マスターデータとして登録することで、他の作業者にも「見える」ようになった。これによって、専任担当者以外の人でも作業を代行することも可能となったのである。 |
■計画立案時間が半減し、仕掛在庫量も約45~50%削減 |
この他、数値として挙げられる効果としては、それまでは基幹の1工程のみの計画立案に約4~5時間かかっていたスケジュールの組み換え作業が、全工程が約1~2時間でできるようになったことがある。この点について木下氏は次のように語る。 「物づくりの現場では、納期や作る製品の優先順位が常に変動するので、全ての計画をAsprovaだけで作ることにはやはり限界があります。しかしAsprovaを使って作成できる加工予定が自分の感覚と60~70%でも合致していれば、作業の大半は充分に助けてもらっていることになります。こうした計画作業の効率アップに、Asprovaは大きな効果を上げています」。 予定の組み換え作業も、紙ベースではなくPC上で行なうことができるようになったため、非常に楽になったという。ちなみに大阪工場におけるAsprovaでの管理対象機械設備は約50台である。 さらにAsprovaの利用で投入調整ができるようになったことで、「これまで約8~9日分だった仕掛在庫が、約5日分に減った」(木下氏)という。実質的に、約45~50%も仕掛在庫が減るという大きな効果が出ていることになる。 |
■“当面は現在の利用形態を維持する” |
大きな導入効果を上げている大阪工場だが、Asprovaを使いこなせるようになるまでには、大谷氏のひとかたならぬ苦労があったようだ。 それというのも、当初Asprovaで計画を立てた時には、人間の考えたものと全然違う結果が返ってきたため、それを当時の計画立案者がなかなか受け入れることができなかったのだ。 現場での利用は遅々として進まずにいたが、同社がリードタイムの短縮活動に取り組み始めたことを契機に、それまで独自にAsprovaの機能や動作をマスターしていた大谷氏は、Asprovaの活用に拍車をかけた。現場の人間を巻き込みながら使い続けるうちに、Asprovaが人間の感覚と違う計画を出してきても、後で見ると、それが最適な投入ロットだったということがだんだん見えてくる。こうしてAsprovaは現場に浸透していったのである。 今後の展開について、大谷氏は「当面は現在の利用形態を維持していくことになるだろう」と語り、長期的なスケジュールの把握や原価管理など、プラスαの機能が必要になった場合には、バージョンアップなども検討していくことになると締めくくった。 |
■お客様の声 |
製品数が増え、製造工程も複雑化していく中で、工場内ではモノの流れが非常に見えにくくなってきていました。こうした状態では、精度の高い製造計画を作ることもままなりません。そこで何よりもまず“工場の稼働実績を把握したい”と考えました。 | |
事業統括部 業務部 主査 大谷浩之氏 |
大阪工場 製造管理部 工務グループ グループリーダー 木下明彦氏 |