三現主義とは?デジタル化時代に欠かせない現場重視の考え方

2024.08.01A0 生産管理
三現主義とは

「業務の改善を考えているけど、いい方法はないか」「三現主義とは、どのようなものなのだろうか」と疑問に思っている製造現場の担当者や管理責任の方は多いでしょう。三現主義を理解し、活用すれば、業務の効率化と収益性の向上を実現できます。三現主義とは、「現場」「現物」「現実」の3つの「現」に着目し、これらを重視することで問題の本質を見抜き、効果的な解決策を見出そうとする考え方です。現場に足を運び、現物を確認し、現実を正しく把握することで、データだけでは分からない問題や課題を特定し、解決につなげられます。この記事では、三現主義とはどのような考え方なのか、なぜ三現主義が求められているのか、三現主義を実践するメリットは何かなどを詳しく解説します。さらに、三現主義を活用した企業の事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。三現主義を理解することで、自社の業務改善に役立てられます。

【目次】
■三現主義とはどのような考え方か
■三現主義を実践するメリット
■三現主義と五ゲン主義の違い
■おわりに

三現主義とはどのような考え方か

三現主義とは、「現場」「現物」「現実」の3つの「現」に着目し、これらを重視することで問題の本質を見抜き、効果的な解決策を見出そうとする考え方です。3つの「現」の具体的な意味は、以下のとおりです。

  • 現場:問題が発生している実際の場所や状況を指す。三現主義では、現場に直接足を運び、問題の現状を自分の目で確かめることを重要視する。
  • 現物:問題に関連する実際の物や製品、データなどを指す。三現主義では、現物を直接手に取って確認し、問題の原因を突き止めることを大切にする。
  • 現実:問題の本質や真の原因、影響範囲などを指す。三現主義では、現実を正しく把握し、問題の全体像を理解することに力を入れる。

三現主義では机上の理論に頼るのではなく、実際の現場で現物や現実を直接確認したうえで、問題解決を行うことを重視します。現場に赴き、現物を確認し、現実を正しく理解することで、机上の理論では見落としがちな問題の本質や真の原因を特定できるからです。このように、三現主義は製造業における問題解決のための重要な考え方であり、現場、現物、現実という3つの「現」に着目することで、問題の本質を見抜き、効果的な解決策を導き出せるのです。

三現主義が求められている背景

製造現場では、複雑な工程や設備、人員が関わっているため、データだけでは把握しきれない問題や課題が存在します。三現主義を実践し、現場に足を運んで現物を確認し、現実を正しく理解することで、これらの問題や課題を特定して解決につなげることが可能です。また製造業では、品質の維持・向上、コスト削減、納期厳守など、様々な要求に応えていく必要があります。これらの要求を満たすためには、現場の実情を踏まえた的確な判断が不可欠です。三現主義に基づいて現場の情報を収集し、分析することで、より正確で迅速な意思決定が可能となります。このように三現主義は、製造業における問題解決や意思決定に大きく寄与するため、多くの企業で求められているのです。

「三現主義=古い」とはいえない

近年、IoTやAI、ロボティクスなどの先進技術の発展により、製造現場の自動化・デジタル化が急速に進んでいます。これに伴い「現場に行かなくてもデータで状況が把握できるのではないか」と言う意見も聞かれるようになりました。

しかし、製造業におけるデジタル化や自動化は、三現主義を否定するものではありません。むしろ、先進技術を活用すれば、三現主義をより効果的に実践できる可能性があります。たとえば、IoTセンサーを用いて設備の稼働状況をリアルタイムで監視したり、AIを活用して品質検査を自動化したりすれば、現場の状況をより詳細に把握できます。また、VRやARを用いれば、遠隔地からでも現場の状況を確認できるようになります。ただし、これらの技術を活用する際にも、現場の状況を直接確認し、現物を手に取って検証することの重要性は変わりません。技術を過信せず、三現主義の本質を理解したうえで、先進技術と組み合わせることが求められます。このように、三現主義は決して古い考え方ではなく、先進技術と組み合わせれば、より強力な問題解決の手法となり得るのです。

三現主義の活用事例

三現主義は、多くの製造業企業で活用され、大きな成果を上げています。たとえばトヨタ自動車は、三現主義を企業文化の根幹に据えている代表的な企業です。トヨタでは、「現地現物」という言葉で三現主義を表現し、現場を重視する姿勢を貫いています。この姿勢は、トヨタ生産方式(TPS)の基盤となっており、カンバン方式やジャスト・イン・タイム生産など、トヨタの革新的な生産システムを生み出す原動力となっているのです。ホンダも、三現主義を重視する企業として知られており、この考え方を大切にしています。ホンダは、この考え方に基づいて、現場の従業員の意見を積極的に取り入れ、製品開発や生産工程の改善に役立てています。また日用品の製造・販売を行う国内トップクラスの企業となる、花王やP&Gも三現主義の考え方を取り入れている企業です。このように三現主義は業種や企業規模を問わず、多くの製造業企業で活用され、大きな成果を上げているといえます。三現主義を自社の文化に取り入れ、現場重視の姿勢を貫けば、企業の競争力強化につながるのです。

三現主義を実践するメリット

企業が三現主義を実践するメリットは、以下のとおりです。

  • 安全意識の向上につながる
  • コミュニケーションの円滑化につながる
  • データの裏付けがとれる
  • 企業全体の成長につながる

このように、三現主義を実践することで、安全性やコミュニケーション、データの信頼性など、様々な面での改善が期待できます。三現主義は、企業の競争力強化と持続的な成長に欠かせない考え方といえるでしょう。

安全意識の向上につながる

三現主義を実践すれば、安全意識の向上につながります。現場の状況を直接目にすることで、潜在的なリスクに気づきやすくなるため、現場や現物、現実(課題)を把握すれば、ミスや事故の防止意識が高まりやすくなるでしょう。また、一般社員だけでなく経営陣など上層部も現場に赴けば、社内全体の安全意識向上が期待できます。経営陣が率先して現場の安全に関心を示すことで、社員の安全意識も高まるでしょう。安全意識の向上は、ミスや事故の減少につながります。ミスや事故が減れば、生産性の向上や品質の改善、コスト削減など、様々な効果が期待できます。このように、三現主義を実践すれば、安全意識の向上を通じて、企業の競争力強化につなげられるのです。

コミュニケーションの円滑化につながる

三現主義を実践することで、現場で対面コミュニケーションをとる機会が確保されれば、電話やメールだけでは汲み取りにくかった意見や意思を伝えやすくなるため、コミュニケーションの円滑化につながります。face-to-faceのコミュニケーションでは、表情や身振り手振りといった非言語的な情報も伝わるため、相手の真意を理解しやすくなるでしょう。また、その場で質問や確認ができるため、誤解や行き違いを防げます。現場でのコミュニケーションを通じて、社員同士の信頼関係や一体感が生まれるため、チームワークの向上や、協力体制の強化につながります。このように、三現主義を実践すれば、コミュニケーションの円滑化を通じて、組織力の強化につなげられるのです。

データの裏付けがとれる

現場に行って現物を確認し、現実を見れば、データだけでは分からない事実が明らかになります。たとえば、データ上は問題がないように見えても、実際の現場では設備の不具合や手順の誤りなどの問題が潜んでいるかもしれません。三現主義を実践すれば、現場の状況を直接確認できるため、データの正確性を検証できます。現物を見て、現場の人に話を聞けば、データでは見えない真実が明らかになることもあるでしょう。また、三現主義を通じて得られた情報は、データを補完し、より深い洞察を得るのにも役立ちます。数字だけでは分からない現場の実態を理解すれば、適切な意思決定につなげられます。このように、三現主義を実践してデータの裏付けをとることは、正確な現状把握と適切な意思決定に欠かせないのです。

企業全体の成長につながる

三現主義を実践すれば、企業全体の成長につながります。経営幹部が実際の利益を生み出す現場に目を向ければ、現場の意見や現状の課題を経営判断へ反映しやすくなります。現場の実情を理解した上での意思決定は、的確で実効性の高いものになるでしょう。経営幹部が積極的に現場に関与すれば、現場管理職や一般職の意識変革や技術向上を促すことも可能です。経営陣が現場の改善活動を支援し、新しいチャレンジを奨励すれば、社員のモチベーションも高まります。現場と経営層全体の意識が変われば、企業文化の変革にもつながります。現場と経営層が一体となって、品質向上や効率化、イノベーションに取り組む風土が根付けば、企業の競争力は大きく高まるでしょう。このように、三現主義を実践すれば、現場と経営層の連携を深め、企業全体の成長につなげられるのです。

三現主義と五ゲン主義の違い

三現主義と五ゲン主義は、ともに問題解決のための考え方ですが、その違いは意思決定の有無にあります。三現主義では、三つの「現」を正確に把握するのがゴールとされています。しかし、三現主義では、把握した問題や課題に対してどのような意思決定を行うべきかまでは示されていません。一方、五ゲン主義では三現主義の三つの「現」に加えて、「原理」と「原則」の要素を意思決定の軸として取り入れています。「原理」とは、物事を成り立たせる根本的な法則やメカニズムのことであり、「原則」とは、多くの場合に当てはまる物事の決まりごとや規則のことです。五ゲン主義では、三現主義によって問題や課題を明確にした上で、それらが「原理」から外れていないか、「原則」と異なることが発生していないかという視点で意思決定を行います。このように、三現主義と五ゲン主義の違いは、意思決定の有無にあるのです。三現主義と五ゲン主義を合わせたフレームワークを活用することで、問題や課題を明確にし、原理・原則に照らし合わせて適切な意思決定を行えます。三現主義と五ゲン主義を合わせると、以下のようなフレームワークになります。

  • 現場:現場へ足を運ぶ
  • 現物:現物を直接確認する
  • 現実:現実を正しく把握する
  • 原理:物事を成り立たせる根本的な法則や、それを起こすメカニズム等
  • 原則:多くの場合に当てはまる物事の決まりごとや規則

このフレームワークを活用すれば、問題や課題を明確にし、原理・原則に照らし合わせて適切な意思決定を行えます。三現主義と五ゲン主義を組み合わせることで、より効果的な問題解決が可能になるでしょう。

おわりに

ここまで述べてきたように三現主義を実践することで、現場の安全意識が高まるだけでなく、生産性や稼働率に関する課題も洗い出しやすくなります。こうした課題が見つかった場合、改善の一環として生産計画を見直してみてはいかがでしょうか。

その際、生産スケジューラの利用がおすすめです。生産スケジューラを導入することで、生産計画の最適化や、リードタイムの短縮、在庫の適正化など、様々な業務改善を実現できます。

三現主義と生産スケジューラを組み合わせることで、製造現場の安全性と生産性を同時に高められます。「三現主義で現場の課題を正確に把握し、生産スケジューラでその課題を解決する」この相乗効果によって、製造現場の競争力は大きく向上するでしょう。

ぜひ、貴社の製造現場にも三現主義と生産スケジューラを取り入れ、競争力の強化と持続的な成長を実現してください。生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのかはこちらのページをご確認ください。

img_banner_aps