ABC分析とは?エクセルで簡単に分析できるやり方やメリットを解説
2024.08.01A0 生産管理「業務の改善を考えているけど、いい方法はないか」「ABC分析とは、どのようなものなのだろうか」と疑問に思っている製造現場の担当者や管理責任の方は多いでしょう。ABC分析を理解し、活用することで業務の効率化と収益性の向上を目指せます。
この記事では、ABC分析を活用するメリットや活用方法、注意点などを詳しく解説します。エクセルを用いて簡単に分析できる実例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
【目次】
■ABC分析とは
■ABC分析を行うメリット
■ABC分析を行う際の注意点
■ABC分析の方法
■おわりに
ABC分析とは
ABC分析とは、自社の製品やサービスを売上への貢献度に応じてA、B、Cの3つのグループに分類し、重点的に管理・分析する手法です。この手法は、重点分析とも呼ばれ、優先順位を設けてデータを管理することで、効率的な経営戦略の立案やマーケティングに役立てられます。ABC分析を活用することで、重要度の高い品目により多くの経営資源を配分し、利益や売上を効率的に向上できます。また、ビジネスをよりシンプルに分析・管理でき、運用の効率化にもつながるのです。ABC分析は、マネジメントにおいてよく使われる管理ツールであり、様々な場面で活用されています。次項ではABC分析の目的や活用例について詳しく解説します。
ABC分析を行う目的
ABC分析を行う最終的な目的は、マーケティング活動の効率化を通じて企業の経営力を向上させることです。この分析手法を用いることで、商品やサービスの重要度を明確にし、それぞれのグループに適した戦略を立てられます。たとえば、重要度が最も高いAグループの商品は、売上アップのために目立つ場所に配置したり、積極的な宣伝活動を行ったりするなどの施策が効果的でしょう。次いで重要度が高いBグループの商品は、定期的な発注や在庫管理に注力することで、適切な対応が可能になります。一方、重要度が最も低いCグループの商品については、在庫の確保に力を入れる必要はなく、仕入れ量の調整や陳列スペースの縮小などを検討し、他の商品により多くの売り場スペースを割り当てられます。
ABC分析の活用例
ABC分析は、様々な場面で活用が可能です。たとえば、DMやメールの送信対象を絞り込む際に、顧客グループを重要度に応じてランク付けし、優先順位の高いグループにのみ送信を行うことで、マーケティングの効率化が図れます。また、飲食店などの店舗運営においても、ABC分析を用いて売れ筋商品を可視化できます。売上への貢献度が高い商品を特定し、それらを中心に販売戦略を練ることで、売上アップにつなげることが可能です。このように、ABC分析は企業のマーケティング活動や経営戦略の立案に役立つツールであり、その活用範囲は多岐にわたります。
ABC分析を行うメリット
ABC分析の実施には、以下のような多くのメリットがあります。
- 製品やサービスの重要度を掴める
- 在庫管理の適正化にもつながる
- 顧客層も掴みやすくなる
- 将来の販売戦略にも役立てられる
ABC分析を効果的に活用すると、企業はより戦略的な意思決定を行い、ビジネスの効率化と収益性の向上を実現できるでしょう。
製品やサービスの重要度を掴める
ABC分析は、製品やサービスの重要度を様々な評価軸で分析できます。売上や利益率、顧客満足度などの指標を用いて、自社が提供する製品やサービスをランク付けすることで、注力すべき領域を明確に特定できます。この情報を活用して、重要度の高い製品の増産や、コストのコントロールなどの施策を講じられるでしょう。
在庫管理の適正化にもつながる
ABC分析は、在庫管理の最適化にも大きく貢献します。重要度の高い商品から優先的に在庫を確保し、適切な発注タイミングを設定することで、在庫管理に伴う無駄を効果的に削減できます。これにより、在庫コストの削減と、欠品リスクの低減を同時に実現可能です。
顧客層も掴みやすくなる
売れ筋商品を特定することで、自社の主要な顧客層も明らかになります。顧客の嗜好や購買行動の理解は、マーケティング戦略を立案する上で重要です。ABC分析を通じて得られた顧客情報を活用することで、より的確なターゲティングやプロモーション活動を展開できるでしょう。
将来の販売戦略にも役立てられる
ABC分析は、将来の販売戦略の立案にも大きく貢献します。売れ筋商品の傾向を分析することで、自社製品の強みや顧客ニーズを把握できます。この情報を新商品の開発や既存商品の改良に活かすことで、市場での競争力を高められるでしょう。さらに、重要度の低い商品のマーケティング手法を見直すことで、それらの商品のランクアップを図ることも可能です。
ABC分析を行う際の注意点
ABC分析は製品やサービスの重要度を評価し、経営資源の適切な配分に役立つツールですが、分析を行う際には以下に注意しましょう。
- 流行や一時的な需要の影響を考慮する
- 重要度の低い商品を軽視しすぎない
これらの点に配慮することで、より正確で効果的な分析結果を得られるでしょう。ただし、ABC分析はあくまでも意思決定を支援するツールの1つであり、分析結果を鵜呑みにするのではなく、他の情報も総合的に考慮して判断を下すことが大切です。
流行や一時的な需要の影響を考慮する
商品は、長期的な重要度を反映していない可能性があります。そのためABC分析を行う際は、売れ筋商品の中に一時的な流行や特需の影響で需要が増加したものがないかの確認が重要です。より正確な重要度を把握するためには、一時的な需要の影響が少ない時期に分析を実施する、または過去のデータを参照して長期的な傾向を考慮することが望ましいでしょう。
重要度の低い商品を軽視しすぎない
ABC分析の結果、重要度が低いと評価された商品であっても、軽視しすぎないことが大切です。これらの商品の中には、少なくても安定した需要があるものや、他のグループの商品に貢献しているものが含まれている可能性があるためです。特にロングテール戦略を採用している企業の場合、重要度の低い商品も全体の売上に一定の貢献をしていることがあるため、慎重に扱う必要があります。
ABC分析の方法
ABC分析の方法の基本的な手順は、以下のとおりです。
- 1.商品別の売上データを収集する
- 2.商品ごとの売上構成比を算出する
- 3.商品を売上構成比別にグループ分けする
ABC分析は、エクセルを使うと簡単に行えるため、複雑な関数を使わなくても多くの方がスムーズに実施できるでしょう。
手順1. 商品別の売上データを収集する
ABC分析を行うためには、まず商品ごとの売上データを収集することが重要です。分析に必要な情報を漏れなく集めるために、管理システムやエクセルなどのツールを活用し、データをまとめましょう。この際、分析の目的に応じて、適切な期間のデータを選択することが大切です。
手順2. 商品ごとの売上構成比を算出する
収集したデータをもとに、各商品の売上構成比(売上割合)を算出します。売上構成比は、以下の計算式で求めることができます。
(売上割合)=(ある期間における当該商品の売上)÷(ある期間における合計の売上)
計算した売上構成比を大きい順に並べ替えることで、商品の重要度が明らかになります。
手順3. 商品を売上構成比別にグループ分けする
売上構成比を算出したあとは、商品を重要度別にグループ分けします。まず、売上構成比が大きい順に商品を並べ替え、累積構成比を計算しましょう。そのあと累積構成比が高い順に、商品をAグループ、Bグループ、Cグループに分類します。
累積構成比のグループは一般的に、以下のように分けられます。
- 上位70までの商品:Aグループ
- 上位70~90%まで商品:Bグループ
- 上位90%以上の商品:Cグループ
ただし、この割合は業種や企業の特性によって異なるため、自社に適した基準を設定することが重要です。
以上の手順を経て、商品の重要度にもとづいたグループ分けが完了します。ABC分析の結果を活用することで、経営資源の適切な配分や、効果的なマーケティング戦略の立案が可能になるでしょう。
ABC分析をエクセルを用いて行う際の実例
A社が在庫削減活動に取り組む際のABC分析の活用方法を見てみましょう。この際、まずは必要な情報の記載されたエクセルデータを用意します 。この場合は、「品目名」「単価」「在庫数」です。たとえば、下記のとおりです。
A社の在庫 | ||
部品 | 単価 | 在庫数 |
部品A | ¥100 | 200 |
部品B | ¥200 | 290 |
部品C | ¥50 | 340 |
部品D | ¥3,000 | 480 |
部品E | ¥400 | 200 |
部品F | ¥20 | 80 |
部品G | ¥10 | 20 |
部品H | ¥500 | 70 |
部品I | ¥800 | 120 |
部品J | ¥1,100 | 30 |
部品K | ¥30 | 350 |
次に、合計在庫金額が高い順に、並び替えをします。並び替えに関係するセル全体を選択し、右上の「並べ替えとフィルター」を選択しましょう。すると、下の画像のように小ウインドウが開きます。最優先されるキーで、「在庫金額」を、順序で「降順」を選択しましょう。
そうすると、並び替えされ、下の表の表示になります。在庫金額の大きいものから順番に並べ替えがされました。
A社の在庫 | |||
部品 | 単価 | 在庫数 | 在庫金額 |
部品D | ¥3,000 | 480 | ¥1,440,000 |
部品I | ¥800 | 120 | ¥96,000 |
部品E | ¥400 | 200 | ¥80,000 |
部品B | ¥200 | 290 | ¥58,000 |
部品H | ¥500 | 70 | ¥35,000 |
部品J | ¥1,100 | 30 | ¥33,000 |
部品A | ¥100 | 200 | ¥20,000 |
部品C | ¥50 | 340 | ¥17,000 |
部品K | ¥30 | 350 | ¥10,500 |
部品F | ¥20 | 80 | ¥1,600 |
部品G | ¥10 | 20 | ¥200 |
この次に、累積在庫金額を算出していきましょう。1つ前の部品までの全合計に自身の合計を足すことで、導き出せます。
A社の在庫 | ||||
部品 | 単価 | 在庫数 | 在庫金額 | 累積在庫金額 |
部品D | ¥3,000 | 480 | ¥1,440,000 | ¥1,440,000 |
部品I | ¥800 | 120 | ¥96,000 | ¥1,536,000 |
部品E | ¥400 | 200 | ¥80,000 | ¥1,616,000 |
部品B | ¥200 | 290 | ¥58,000 | ¥1,674,000 |
部品H | ¥500 | 70 | ¥35,000 | ¥1,709,000 |
部品J | ¥1,100 | 30 | ¥33,000 | ¥1,742,000 |
部品A | ¥100 | 200 | ¥20,000 | ¥1,762,000 |
部品C | ¥50 | 340 | ¥17,000 | ¥1,779,000 |
部品K | ¥30 | 350 | ¥10,500 | ¥1,789,500 |
部品F | ¥20 | 80 | ¥1,600 | ¥1,791,100 |
部品G | ¥10 | 20 | ¥200 | ¥1,791,300 |
次に累積比率を計算しましょう。累積比率は、各部品の合計金額を合計金額の総計で割ることで、導き出せます。
A社の在庫 | |||||
部品 | 単価 | 在庫数 | 在庫金額 | 累積在庫金額 | 累積比率 |
部品D | ¥3,000 | 480 | ¥1,440,000 | ¥1,440,000 | 0.80388545 |
部品I | ¥800 | 120 | ¥96,000 | ¥1,536,000 | 0.85747781 |
部品E | ¥400 | 200 | ¥80,000 | ¥1,616,000 | 0.90213811 |
部品B | ¥200 | 290 | ¥58,000 | ¥1,674,000 | 0.93451683 |
部品H | ¥500 | 70 | ¥35,000 | ¥1,709,000 | 0.95405571 |
部品J | ¥1,100 | 30 | ¥33,000 | ¥1,742,000 | 0.97247809 |
部品A | ¥100 | 200 | ¥20,000 | ¥1,762,000 | 0.98364316 |
部品C | ¥50 | 340 | ¥17,000 | ¥1,779,000 | 0.99313348 |
部品K | ¥30 | 350 | ¥10,500 | ¥1,789,500 | 0.99899514 |
部品F | ¥20 | 80 | ¥1,600 | ¥1,791,100 | 0.99988835 |
部品G | ¥10 | 20 | ¥200 | ¥1,791,300 | 1.00000000 |
これにより、すべてのデータを用意できました。次にグラフの作成を行います。今回は、パレート図を作成します。
まずは、グラフを作成するのに使用するデータを含むセルを選択しましょう。次に、メニュー「挿入」を選び、真ん中近くにある「おすすめグラフ」を選択しましょう。そこから、パレート図を選び、選択することで簡単に作成できます。
このパレート図を見れば、部品Dが在庫金額全体の80%を占めていることが明らかです。効果的な改善を行うには、部品Dをターゲットにすればいいといえます。
おわりに
ABC分析は、在庫商品の金額や売上などの指標から重視する評価軸を決めて分類・管理・分析する方法です。この分析手法を活用することで、ビジネスをよりシンプルに分析・管理でき、様々な場面で効率的な運用ができます。
ABC分析を行う際には、エクセルを使うと複雑な関数を使用せずにできるので、簡単に実施可能です。まず、商品ごとの売上データを収集し、売上構成比を算出します。次に、累積構成比が高い順に商品をAグループ、Bグループ、Cグループに分類します。この分析により、製品やサービスの重要度を把握し、注力すべき領域を明確に特定できます。ただし、分析の際には流行や一時的な需要の影響を考慮し、重要度が低い商品も軽視しすぎないことが大切です。ABC分析の結果を活かせば、限られた経営資源を最適な方法で配分し、より的確なマーケティング戦略を策定できるため、ぜひ、ABC分析を活用してみてください。
コラム編集部
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