BOMとは?企業の効率化に欠かせない部品表管理の基礎知識
2024.08.01A0 生産管理製造業の担当者や管理責任者の方の中には、「業務改善のために、BOMについてもっと知りたい」と考えている方が多いのではないでしょうか。BOMは、製品を構成する部品の情報を一覧化した重要な管理ツールであり、適切に運用することで、業務効率化や生産管理の最適化などの効果が期待できます。この記事では、BOMの基本的な役割や種類、製造現場における活用方法について詳しく解説します。BOMシステム導入によって解決できる事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
【目次】
■BOMとはいったい何か、その役割は?
■BOMの種類~2つの分類方法~
■BOMシステムを構築するメリット
■BOMシステム導入によって解決できる例
■おわりに
BOMとはいったい何か、その役割は?
BOMとは「Bill of Materials」の略称で、日本語では「部品表」や「部品構成表」と呼ばれています。製造業の現場で重要な役割を果たしており、製品を構成するために必要な部品やユニットの情報を一覧にまとめたものです。BOMには、製品を作るために必要な部品の種類や数量、それらの調達方法や組立手順など、製造に関する重要な情報が記載されています。この情報を元に、製造工程の計画や管理、部品の手配や在庫管理などが行われるのです。次項では以下の内容を詳しく解説します。
- BOMの目的
- BOMで管理する情報の例
これらの情報を一覧で管理することで、製品の製造に必要な情報を関係者全員で共有できます。また、設計変更があった場合にも、BOMを更新することで、変更内容を製造現場に正確に伝えることが可能です。
BOMの目的
BOMの目的は、製品の製造に必要な部品や資材を正確に把握し、抜けや漏れなく調達や製造進捗を管理することです。BOMを作成し、活用すれば、必要な部品や資材を漏れなく把握でき、適切な調達と製造進捗の管理が可能になります。また、BOMは設計や調達、製造、販売など製造業の各部門の認識を統一するのにも役立ちます。BOMがないと、各部門が独断で管理を行ってしまい、認識の齟齬や指示系統の混乱などのトラブルが起こりやすくなるでしょう。このように、BOMは製造業における効率的な生産管理や部門間の認識統一に欠かせない重要な役割を果たすのです。
BOMで管理する情報の例
BOMで管理する情報は部門によって異なりますが、基本的には以下の情報が管理されます。
- 品名
- 規格番号
- 型式
- メーカー名
このような情報は、部品や資材を特定し、識別するために不可欠です。メーカー名や調達先などの情報は、適切な調達先の選定や、調達の円滑化に役立ちます。また部署間・部門間で登録コードを統一することで、効率的に部品を管理できるようになります。これらの情報をBOMで一元管理することで、製品の製造に必要な情報を関係者全員で共有し、効率的な生産管理が可能になるのです。
BOMの種類~2つの分類方法~
BOMは、以下の2つの分類方法に大きく分けられます。
- 管理方法
- 使用部門
管理方法は、サマリー型とストラクチャー型の2種類に分けられ、使用部門は、設計部門、製造部門、販売部門などによって異なります。これらの分類方法を理解することで、自社の製品や業務に適したBOMの運用が可能になるでしょう。
BOMの種類~管理方法~
BOMの管理方法には、以下の2つがあり、それぞれの違いは以下のとおりです。
管理方法 | 特徴 |
---|---|
サマリー型 | 部品の数や種類を並列にまとめたBOM |
ストラクチャー型 | 製造の工程を踏まえて部品ごとの関係性と必要数量を階層構造でまとめたBOM |
この2つの管理方法の特徴や違いをさらに詳しく理解することで、自社の製品や業務に適したBOMの運用が可能になります。
サマリー型
サマリー型は、1つひとつの製品ごとに並列に必要な部品を記入していく方法です。部品の追加や仕様変更があった場合の対応も容易である点が特徴です。サマリー型は、必要な部品や原材料を単純に一覧化する方法であるため、親子関係を明確に定義せずとも、製品の部品構成を表せます。また、Excelでの管理も簡単に行えます。特にカスタムメイドの個別受注生産の製品に向いているのがサマリー型です。個別受注生産では、製品ごとに部品構成が異なることが多いため、サマリー型を用いることで、製品ごとの部品構成を柔軟に管理できます。設計部門では、後述するE-BOMを使用しますが、設計段階では製品の部品構成を柔軟に変更できる必要があるため、E-BOMは主にサマリー型で作成されています。このように、サマリー型は製品ごとの部品構成を簡単に管理でき、柔軟性も高いため、個別受注生産に適したBOMの管理方法といえるでしょう。
ストラクチャー型
ストラクチャー型は、部品を階層ごとに記入していく方法で、製品内の部品同士の関連性や親子関係を明確に定義して管理するBOMです。この方法を用いることで、製品が完成するまでの流れをわかりやすく表現できるだけでなく、部品同士の関係性を正確に把握できるため、設計から製造までの工程を追跡しやすくなります。また、ストラクチャー型は、部品の階層関係を明確にすることで、リードタイムや予定工数の計算に適しており、各工程にかかる時間や必要な工数を正確に見積もることが可能です。M-BOMでは、設計部門で作成されたサマリー型のBOMを、製造部門で使いやすいように階層構造に変換するために、まずサマリー型でBOMを作成し、その後ストラクチャー型に加工して使用しています。ストラクチャー型のBOMを活用することで、部品の関係性が明確になり、必要な部品の手配や在庫管理がスムーズに行えるようになるため、製造工程の効率化や品質管理の向上が期待できます。このように、ストラクチャー型は製品の階層構造を明確にし、製造工程の効率化や品質管理に役立つBOMの管理方法といえるでしょう。
BOMの種類~使用部門~
管理方法の説明で、「E-BOM」や「M-BOM」の名前が出てきました。これらは、使用部門によって異なるBOMの種類のことです。「E-BOM」、「M-BOM」などのBOMの種類について、ご説明します。
E-BOM
E-BOM(Engineering Bill of Materials)は、設計部門で使用されるBOMです。製品の設計が進むにつれて、必要な部品が決まっていきます。そのため、E-BOMの記入は設計図情報と併せて行われます。E-BOMには、部品の種類や数量、部品同士の親子関係が反映されます。これは、設計部門の図面作成が進むにつれて明確になっていく情報です。また、E-BOMには製造に必要となる技術情報や部品ごとの使用量も記入されます。
M-BOM
M-BOM(Manufacturing Bill of Materials)は、製造部門で使用されるBOMです。M-BOMは、工程表や部品リストとともに管理され、工程の進捗管理やスケジューリングなどに活用されます。設計部門で作成されるE-BOMは、主に機能面を中心として部品リストが作成されています。そのままの形では生産部門での使用に適さないため、設計部門から受け取ったE-BOMをM-BOMに加工した後に使用します。M-BOMには、E-BOMの情報に加えて、工程の順序や内容が記載されます。
S-BOM
S-BOM(Sales Bill of Materials)は、販売部門で使用されるBOMです。S-BOMは、販売に関する情報を一元的に管理できるBOMであり、主に販売支援で活用されます。ただし、企業によってはS-BOMを別途作成せず、M-BOMをそのまま使用しているケースも少なくありません。
サービスBOM
サービスBOMは、メンテナンスや保守に関連する情報を管理するために用いられるため、メンテBOM・保守BOMと呼ばれることも多いです。アフターサービスの際に使用するBOMで、購入した顧客ごとに個別に管理をしてメンテナンスの履歴を記入したり次のメンテナンスのアナウンスに利用したりします。その他、メンテナンスの際に必要な部品の管理や発注管理も、サービスBOMで行います。 ※サービスBOMのことを、S-BOMと呼ぶ場合もあるため、注意しましょう。
購買BOM
部品を調達する際には、購買BOMを使用します。購買BOMでは、価格や発注の単位、仕入れ先情報、代替品に関する情報などを管理します。ただし、購買BOM専用で作成しないケースも多く、その場合はM-BOMに購買に必要な情報を付け加えて使用するのが一般的です。
BOMシステムを構築するメリット
BOMシステムを構築することで以下のメリットが得られます。
- 部門間での情報共有が円滑になる
- 各部門の業務効率化につながる
- ヒューマンエラーの防止も期待できる
- 過去のBOM情報は設計資産になる
BOMは紙やエクセルなどでも管理できますが、BOMシステムを導入すれば、さらなる効率化や業務負担の軽減が期待できます。
部門間での情報共有が円滑になる
BOMシステムを導入すれば、部門ごとの部品の仕様変更や在庫状況などの情報をスムーズに確認できるようになります。各部門がリアルタイムで情報を共有できるため、情報共有のタイムラグが減り、生産プロセスの改善も期待できます。また、BOMシステムでは、部門間での情報のやり取りがシステム上で行われるため、コミュニケーションの履歴も残ります。これにより、情報の伝達漏れや認識の齟齬を防げます。
各部門の業務効率化につながる
BOMシステムを導入すれば、各部門の部品管理業務を効率化・システム化できるため、業務負担の軽減につながります。たとえば、部品の在庫状況や発注状況をシステム上で一元管理できるため、担当者は在庫切れや過剰在庫を防ぎやすくなります。
また、BOMシステムでは、部品の手配や発注もシステム上で行えるため、手配漏れや発注ミスを防げます。これにより、各部門の業務効率が向上し、生産性の向上にもつながります。
ヒューマンエラーの防止も期待できる
紙やExcelでBOMを管理していると、記入ミスや情報の重複、手配漏れなどのヒューマンエラーが発生する可能性があります。しかし、BOMシステムを導入すれば、部品に関する情報を全部門が共通の画面で確認できるため、転記ミスや重複を検知しやすくなります。
過去のBOM情報は設計資産になる
BOMシステムを導入すれば、過去に製造した製品の部品構成などをBOM上ですぐに確認できます。これにより、過去の製造データをナレッジとしてまとめておけるため、設計の流用や標準化に役立ちます。たとえば、類似製品の設計を行う際に、過去のBOM情報を参照することで、部品の選定や設計の効率化が図れます。また、過去の製品トラブルの事例や対策なども、BOM情報と紐付けて管理できるため、品質改善にも活用できます。
BOMシステム導入によって解決できる例
製造業におけるBOMシステムの導入事例を見ると、業種や製品の種類によって抱える課題は異なりますが、いくつかの共通点が見られます。ここでは、製造種別ごとにBOMシステム導入前後の変化を紹介します。
業種 | 導入前の課題 | 導入後の効果 |
---|---|---|
食品包装資材メーカー | ・自社開発のシステムを長年使用していたが、改修が複雑化し、技術者の高齢化が問題になった。 ・情報のリアルタイム性に欠け、生産の進捗状況の把握が難しかった。 |
・情報のリアルタイム性が格段に向上し、生産の進捗状況がリアルタイムで把握可能に。 ・紙の使用量が大幅に減少。社内の意識改革にもつながった。 |
機械製造業 | ・設計→生産までのプロセスが多く、効率化が必要だった。 ・設計BOMと生産準備BOMの管理が別々で、情報共有がスムーズでなかった。 |
・BOM構築による重複作業の削減で、設計工数が大幅に削減。 ・設計BOMと生産準備BOMの一元管理により、情報共有がスムーズになり、作業効率が向上。 |
精密機器製造業 | ・受注量の不確実さが納期遵守を難しくさせていた。 ・在庫管理が適切でなく、在庫の適正化が課題だった。 |
・受注情報の自動管理化により、納期遵守が向上。 ・在庫の適正化により、在庫削減を実現。 ・正確な原価管理が可能になり、利益と顧客の両方が実現。 |
これらの事例から、BOMシステムの導入により、情報の一元管理やリアルタイム性の向上、業務効率の改善、在庫の適正化など、様々な効果が得られることがわかります。製造業の競争力強化には、BOMシステムの活用が欠かせないといえるでしょう。
おわりに
BOMは、製品を構成する部品の情報を一覧化した重要な管理ツールです。部品の基本情報に加え、調達先や納期、コストなどの情報も含まれます。BOMを適切に管理することで、部品の一元管理、コスト管理、設計の効率化、生産管理の最適化、品質管理の向上などのメリットが得られます。また、生産スケジューラにおいてもBOMは必要不可欠な情報であり、重要なマスタとなります。BOMを作成し、設計や製造、調達、販売などを一元管理することで、製造現場の業務効率化を図れます。気になる方は是非御覧ください。
コラム編集部
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