学生服が「欠品」-難しい在庫のさじ加減
2022.04.15A0 生産管理欠品対策と在庫
学生服が新学期になっても手元に届かない、という事件がこの春続出しました。ある販売会社の社長は「受注数が予測を上回り、物流がコロナで滞り、部材(生地やボタン)の納入が遅れた」と、理由をいろいろ述べています。学生服の業界は、少子化で総需要が減少し、苦境にあります。そのうえ合格発表から入学式という短い納期の間に、学校ごとのデザインや各人のサイズに応じた多品種を供給することが求められます。これまでぎりぎりで間に合わせていたのが、とうとう破綻してしまったわけです。
「在庫管理」の観点から、この問題を見るとどうでしょう。学生服メーカーは慣習的に、余分に生産するという考え方が薄く、在庫が1着でも余ると担当者がバッテンをつけられるという話もあります。たしかに、売上にならない在庫は、費用だけを発生させ、利益を減らします。会計でいう在庫とは、売れるのを待っている完成品に加え、原材料や製作中の品物(仕掛品)を含みます。貸借対照表では「棚卸資産」として資産の部に計上され、同額の負債(短期借入金)が発生することになります。在庫を管理できるスペースにはたいてい限りがあるので、想定より安い価格で売ることになるかもしれません。
需要変動に対応する安全在庫
できれば在庫は減らしたい、しかし変動する需要に対応し、品切れを防ぐためには在庫を増やさなくてはなりません。そこで「安全在庫」という概念があります。一定の需要変動を想定し、たとえば100回注文があったら、99回までは対応できるようにするには、どれだけ在庫をもっておけばよいか、統計の手法で算出することができます。調達にかかる時間が増えるほど、また需要の変動が大きくなるほど、安全在庫も増えます。そして同じ条件で品切れ確率を10%から1%にしようとすると、安全在庫は約2倍になります。
在庫とスケジューリング
製造業では、ITで効率化を進め、余剰なものを削いで利益を高める―。そんな経営が隅々まで浸透してきました。ところが、最近は流れに変化がみえます。ある自動車部品メーカーは「納期遅れをするよりも、過剰な在庫を持つ方がいい」との判断を下したそうです。その背景には、世界情勢の変化があります。
私たちは、世界からモノを集めて、世界に売っています。新型コロナ、そしてロシアによるウクライナ侵略など、大事件が起きるたびに、モノ不足が騒がれるようになりました。無駄のないよう最適化されたシステムは、どこかでトラブルが生じると、とたんに立ちゆかなくなるという副作用が起こりがちです。国際化する調達網の中、最もいい在庫水準はどこなのか、多くの企業が再検討を始めています。
在庫管理にも生産スケジューラーが活用できます。在庫を制御する難しさに気づき、一歩先の対策をとることで、競争に勝つ道がみえてくるかもしれません。
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コラム編集部
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