在庫管理:ムダを削減し、欠品を防ぐ最新手法
2025.04.09A0 生産管理
在庫管理とは、製造業において「必要な時に、必要な量の資材や製品を確保する」ための管理手法です。対象となるのは、原材料、仕掛品、完成品の3種類。それぞれの在庫を適正なレベルで維持することで、欠品や過剰在庫といったトラブルを回避し、安定した生産・供給体制を支えることができます。過剰な在庫は倉庫スペースの圧迫や保管コストの増加を招き、逆に在庫不足は生産停止や納期遅延、顧客離れにつながるリスクがあります。つまり、在庫管理の精度が企業の生産効率や利益に直結すると言っても過言ではありません。
原材料・仕掛品・完成品、それぞれの在庫管理のポイント
在庫と一口に言っても、その性質によって管理方法は異なります。ここでは、3つの在庫それぞれについて簡単に解説します。

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原材料在庫 : 生産の起点となる原材料は、仕入れ先の納期や価格の変動に左右されやすいのが特徴です。リードタイムや価格の変動幅を考慮した安全在庫の設定が重要です。
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仕掛品在庫 : 仕掛品は製造途中の部品やユニットで、工程間のバランスが悪いと滞留しやすくなります。ボトルネック工程を把握し、適正なWIP(Work In Progress)を維持する工夫が求められます。
- 完成品在庫 : 顧客への納品に直結する完成品は、需要予測と密に連動して調整する必要があります。余分な在庫は廃棄損や在庫保管コストの増大、キャッシュフローの悪化の要因になります。
欠品と過剰在庫のリスク
在庫管理の最大の課題は、欠品と過剰在庫のバランスをいかに取るかという点です。

欠品のリスク
- 在庫切れによる販売機会損失
- 納期遅延による顧客からの信頼低下
- 緊急発注によるコスト増
過剰在庫のリスク
- 在庫に資金が拘束され、運転資金が不足しキャッシュフローが悪化
- 倉庫スペースが逼迫し、保管費用や管理工数の増加
- 製品の陳腐化、劣化、賞味期限切れによる廃棄損
これらのリスクを最小限に抑えるために、在庫量の見える化と継続的な最適化が必要です。
需要予測と連動した在庫管理の実践
効果的な在庫管理は、需要予測と切っても切れない関係にあります。需要を正確に予測できれば、それに応じた発注・生産計画が立てられ、在庫の最適化につながります。
需要予測の主な手法
- 過去データに基づくトレンド分析
- 季節性やイベント要因の考慮
- 営業・マーケティングとの情報共有
- AIや統計ツールによる自動予測
需要の精度が上がるほど、再発注点や安全在庫の設定が適切になり、欠品や過剰のリスクを抑えることが可能です。
デジタルツール・AIによる在庫管理の進化
近年では、AI技術やデジタルツールの進化により、在庫管理は大きく進化しています。

デジタルツールの活用例
- 在庫管理システム:リアルタイム在庫状況の把握
- 生産管理システム:工程ごとの在庫量や進捗を可視化
- ERPシステム:販売・購買・生産の情報を統合管理
- 自動発注システム:需要予測に基づき適切なタイミングで発注
これにより、従来の手作業に比べて、リアルタイム性と正確性が格段に向上します。また、属人化を防ぎ、業務の標準化・効率化にも寄与します。
生産スケジューリングとの連携がカギ
在庫管理は単体では機能しません。特に密接に関係するのが生産スケジューリングです。製造ラインの稼働状況や納期に応じて在庫の増減が発生するため、生産計画と在庫情報はリアルタイムに連携する必要があります。
よくある課題
- 在庫の変動が計画に反映されない
- 需要予測の予測誤差やボトルネック工程の予測ミス
- 予期せぬ設備トラブルによる生産遅延
これらの課題を防ぐためには、生産計画と在庫データを連携し、現場と管理部門の情報共有を強化することが求められます。
まとめ
現代の在庫管理は、単なる棚卸し作業にとどまらず、企業全体の利益構造に深く関与しています。原材料から完成品まで、すべての在庫を適正に保ちつつ、欠品や過剰在庫を防ぐことが、企業競争力の源泉になります。そのためには、需要予測や生産スケジューリングとの連携、さらにAIやデジタルツールを活用したリアルタイムな管理体制の構築が欠かせません。生産管理担当者として、これらの知識を身につけ、現場に活かすことで、より安定した生産と高い収益性の実現に貢献できるでしょう。

コラム編集部

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