工程管理を生産スケジューラで平準化

2022.04.13A0 生産管理

製造業を営むとすれば、生産管理で最も資金が少なくて済むのが「受注生産」です。お客様の注文を受けてから材料購入をして生産に掛かるのです。生産管理で工程管理を行い、納期も出来るだけ詰めて、リードタイムなく現金化できると「投下資金」が必要なくなります。テスラのように「予約金」、つまり生産開始前に前払い金を貰っておければ、むしろ設備資金などに回せます。つまり、製造業では「お客様の需要に引き当てられた材料・工数・設備・土地、そして人」以外は自社に存在しないようにする生産管理が究極なのです。

1:「ロット生産(フォード方式)」から「トヨタかんばん方式」へ

焼け野原となった太平洋戦争後、日本の製造業は復興を始め、世界が「フォード生産方式」、即ち「ロット生産方式」で復興を果たしていく中、生産管理においてロット生産方式の大きなムダに気付いたのがトヨタ自動車でした。作業者が工作機械の監視者になっていることを改めることから生産技術の作業「カイゼン」が始まりました。

旋盤の2台持ちです。自動送りをかけると、決められた寸法を削り終えるところでストップをかけるまで操作は不要で、作業者はバイトの破損など事故に対応するための監視者となっているのです。その間に、もう1台の旋盤の操作が出来るのです。やがて、旋盤をストップさせるのも自動にして、次工程のボール盤も操作できるようになっていきます。

生産技術において「にんべん」の付いた「自働化」の始まりです。やがて多くの工作機械を一人の作業者が受け持つようになり、工作機械は休止していることがあっても、作業者の動きが止まることはなくなっていきます。こうして各作業工程が結合していくことにより生産管理が変わって、工程間の部品の在庫は1台分だけとなっていきました。やがて専用機からNC工作機械となり、プログラムを入れ替えるだけで多種類の加工ができるようになり、段取りが不要で複数の加工工程が結合されて生産技術は格段に進歩していきました。

生産技術の飛躍的進歩により、生産管理では、後工程で必要となった数だけ、前の工程から引き取る「トヨタかんばん方式」が確立されていったのです。「中間在庫が1台分だけ」となったことで、生産リードタイムは劇的に縮まりました。ラインでは「多種少量生産」、つまり「混流生産」が可能となり、市場のニーズに即応する生産管理体制が徐々に作られていったのです。

現在ドイツ企業では、100のオプションをネットで自由に組み合わせて「自分だけの1台」を造り上げ、顧客が注文すると2週間ほどで納車できる生産管理システムを目指し、AIを用いた生産計画立案がテストされているようです。インダストリー4.0(第4次産業革命)と言われるネット社会ならではの革命が進んでいる状況です。

2:総資金量の激減で、「資金効率が上がる」

例えば、1千台ロット生産であると、第1工程から1千台分の材料が必要です。しかも第2工程との工数の差から、1千台分の第1工程終了まで第2工程着手を待つことさえあるのです。それが大きな資金を必要としてしまいます。ロット生産は現金化するまでのリードタイムが長いので、その間の累積資金が必要となります。

2-1:混流生産で仕掛在庫の激減

ロット生産では、混流生産と比較すると工程間在庫は膨大です。サプライチェーンを含めると全部品点数が数万点で、その数千、あるいは数万工程ある製造過程の仕掛在庫量は想像もつかないほどです。一方、混流生産では、少ない資金を高回転させているようになるのです。生産技術・加工技術などを駆使した生産管理体制は、資金効率が極めて高くなります。

2-2:混流生産でリードタイムの激減

さらに見逃してはならないことは、材料仕入れから、販売して資金を回収するまでのリードタイムは、現在の「混流生産」と比較すると、ロット生産では気の遠くなるほど長いのです。つまり自己資金を用意して材料を仕入れ、資金回収できるまでの間が、「混流生産」と比較すると極端に長いのです。

このため理論的に考えると、最初に用意しなければならない資金はロット生産では大きなものになります。しかし、混流生産では生産開始から資金回収し始めるまでのリードタイムが、ロット生産に比較して極端に短く、理論的には少なくとも数百分の一で済むのです。つまり、運転資金は少なくとも数百分の一で良いことになります。

2-3:混流生産では設備投資資金が激減

これだけでなく、混流生産では理論値では「中間在庫が1千台分ではなく1台分だけ」で済むので、膨大な工程数をかけ合わせると作業面積が激減します。それに伴い「土地代金、工場建設費用、クレーン、フォークリフトなど運搬設備、運搬や管理をする人員」などが激減し、想像もできないメリットが生まれてきました。これは日本の高度成長の資金源となり、多くの産業が復興する資金が出来たのです。現在で言うところの、日銀が「ジャブジャブ」に資金を市中に出回らせたのと同じ効果です。

しかし、「リーン生産方式」としてアメリカで紹介されると、世界に「トヨタのかんばん方式」は普及し、日本の製造業の絶対的強みが相対的に失われてしまいました。世界の量産製造業では「トヨタ生産方式」を生産管理に取り入れないでは成り立たない状況となっています。そして、混流生産が普及していくにつれ、工程管理で新たに問題が発見されてきています。ベルトコンベアでの流れ作業では、混流生産であるがため、工程間の工数のばらつきが起きるようになり、その調整が問題となってきました。ロット生産では「段取り替え」をしてしまえば、個々の工程での作業のため、工程間の工数の違いは仕掛在庫で吸収してしまいます。そのため膨大な在庫金額となってしまうのですが、工程間の多少の工数差は問題とならないのです。

2-4:工程管理における「生産スケジューラ」の必要性

ベルトコンベアでの混流生産では、工程間の工数の差があると、負荷が掛かっている工程のペースで全ラインが規制されてしまいます。前後の工程が自動的に調整されてしまうことが起き、見えにくくなります。つまり、ラインの全工程が最低のペースとなってしまうのです。

これが「生産スケジューラ」が必要とされる理由です。工程管理において、事前に生産スケジューラで工程を組んでみて、問題の工程を見つけ出し(TOC「Theory of Constraints」理論)、流す車種の順番を調整することで、その時の工程の持つ最高のパフォーマンスを発揮することが出来るのです。

3:「流れ生産方式」から「セル生産方式」へ

現在は、「流れ生産方式」から「セル生産方式」、通称「屋台」になり、現場では「作業カイゼン」が絶え間なく進歩しつつあります。極端な場合、製品組み立ての最初から最後まで一人で行うなど、「工程結合」が行われて、工程間の工数の差を考慮する必要もないのです。

これにより、また「在庫資金量」が大幅に削減され、ロット生産から考えると業種によっては「数千倍」とも思われる資金効率となってきたのです。さらには作業面積も、ベルトコンベアを用いた流れ作業に比べ、製品によっては1/10となるなどの事例も見られ、「土地、工場建屋、運搬手段、作業員」など間接資金のさらなる削減が見られています。

3-1:「セル生産方式(通称「屋台」)」で多能工が必要とされ「デジタル屋台」へ

しかし、「セル生産方式(通称「屋台」)」では、生産管理の前提として多くの組み立て作業が出来る「多能工」が必要です。ある建設機械製造業では、「40車種」以上の組み立てができる「多能工」が当然となってきました。そのため生産管理を行うには、熟練工の養成に数年が必要と言われるようになってきたのです。
デジタル技術は、マニュアル運用まで及び始め、作業者は作業現場で画面や音声での指示を受けながら、また間違いがあればストップがかかる仕掛けと連動して、熟練工でなければ出来ない作業を1週間程度で出来るようになりました。「デジタル屋台」です。

3-2:「生産スケジューラ」で最高のパフォーマンスを発揮

こうして「生産管理」は、「生産技術」と「製造技術」の進歩と共に急速に効率化されており、「生産スケジューラ」は、この進歩と共に発展しながら、その時の最高レベルの生産スケジュールを探し出すことが出来ます。また、その時点での生産工程の問題点を「見える化」して、生産技術に目標を与えることが出来るのです。

現状の生産工程の最高のパフォーマンスを発揮させるには、平準化スケジュールを高速で計算できる「生産スケジューラ」を装備して、楽に現在の工程の最高のパフォーマンスを発揮させることです。

きつい仕事の工程管理に生産スケジューラは救世主か?:まとめ

「きつい仕事」と生産管理、工程管理は言われます。多くの製造業では、前もって設備投資を行い、販売予測を立てて材料を購入し、人件費をかけて生産管理、工程管理をしながら生産に取り掛かり、完成品在庫を抱えながら販売していきます。そして中には完売できずに長期在庫になり、不良在庫化してしまいます。生産管理における工程管理で、市場の要望に最適なスケジュールを組み上げることが「生産スケジューラ」にとっての大きな役割です。

工場の生産管理全体に影響する工程管理で、お客様の要望に応えてスケジュールを書き換える作業は、大変きつい仕事ですが、「生産スケジューラ」ソフトは「救世主」にもなることでしょう。

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タグ : 効率化 平準化