MRPの真価を引き出す!生産計画・在庫管理・スケジューラ連携

2025.04.22A0 生産管理
MRPの真価を引き出す!生産計画・在庫管理・スケジューラ連携

MRPとは

MRP(Material Requirements Planning)とは、「資材所要量計画」の略で、生産計画をもとに、必要な部品や原材料の「数量」と「手配のタイミング」を自動的に算出するシステムです。これにより、生産に必要な資材を過不足なく準備し、欠品や過剰在庫といったリスクを最小限に抑えることができます。

MRPの主な入力データは以下です。

  1. 基準日程計画(MPS:Master Production Schedule): 最終製品に対する「いつ、何を、どれだけ生産するか」という計画です。MRPはこの情報をもとに、どの部品や材料が、いつまでに、どの程度必要になるのかを展開します。

  2. BOM(部品表:Bill of Materials): 製品の構成を表すデータで、各製品を構成する部品や中間品、その数量や階層関係が記載されています。MRPではこのBOMをもとに、MPSで計画された製品に対し、必要となる部品を分解していきます。

  3. 在庫データ : 各部品や材料について、現在の在庫数量(引当済み分や利用可能在庫など)を含む情報です。このデータにより、MRPは実際に「追加手配が必要な量」のみを計算できます。

  4. 調達・製造リードタイム : 各部品や材料を調達・製造するのに必要な時間を示すデータです。MRPはこの情報を使って、納期から逆算し、発注・手配のタイミングを算出します。

  5. 発注ロットサイズ : 一度に調達する最小単位や標準的な発注量を定めた情報です。たとえば「100個単位でしか発注できない」といった制約を反映させるために使われます。

上記の入力データをもとに以下のような処理を行い、資材の手配計画を立てます。

  1. 所要量展開(Netting): MPSに基づいて、各製品に必要な部品の数量を、BOMを使って階層的に展開します。その上で、すでに存在する在庫や発注済み分を差し引き、「純所要量(Net Requirements)」を算出します。

  2. タイムフェーズ処理(時間軸への展開): 純所要量に対して、リードタイムを考慮して、いつまでにその部品が必要かを判断し、発注または製造の開始日を逆算します。このプロセスによって、必要な資材を必要なタイミングで確保するための手配が可能になります。

  3. ロットサイズ処理(Lot Sizing): 算出された純所要量に対し、発注ロットサイズの制約を適用します。たとえば、必要量が120個であっても、ロットサイズが100個であれば、実際の発注は200個になる場合もあります。

  4. 優先順位処理・納期順整列 : 手配順序や納期の整合性を取り、重複・漏れ・手配の前後関係などをチェックし、整った手配計画にまとめます。

MRPの出力データは以下です。生産現場や調達部門が実際に活用するための具体的な行動指針となります。

  1. 発注計画(Planned Order Releases): 各部品や原材料について、「いつ、何を、どれだけ発注・製造するべきか」が記載された指示データです。この情報をもとに、調達担当者が仕入先に発注を行い、生産部門が作業指示を出します。

  2. 発注変更・キャンセル指示 : 納期の変更や需要の変動に応じて、すでに発注済みの内容を変更したり、キャンセルしたりするための情報も出力されます。これにより、柔軟な需給対応が可能となります。

  3. 在庫予測・見込在庫の推移 : 将来的な在庫レベルの変動を可視化するデータで、欠品や過剰在庫の兆候を事前に把握できます。生産管理者や経営層にとって重要な判断材料となります。

この仕組みを正しく理解し、現場の状況に合わせて柔軟に運用することで、欠品・過剰在庫の抑制、発注業務の効率化など、多くのメリットを享受することができるでしょう。

MRPがもたらす業務改善効果

  1. 欠品リスクの低減 :  生産計画に基づいて必要な部品や材料をタイムリーに手配できるため、資材不足によるライン停止や納期遅延のリスクを大幅に減らすことができます。
  2. 在庫の最適化・圧縮 : 必要量を正確に計算し、無駄な先行手配を防ぐことで、過剰在庫を抑制します。これにより、保管スペースや在庫コストの削減にもつながります。
  3. 発注業務の標準化 : 資材手配をシステム化することで、熟練者の勘や経験に頼らず、誰でも一定の精度で業務を遂行できるようになります。属人化の排除にも貢献します。
  4. 業務効率の向上 :  手作業による計算や発注判断が不要になり、手配業務の効率が大幅にアップ。担当者は、分析・改善など付加価値の高い業務に時間を割けるようになります。

MRP導入時の注意点と改善のヒント

MRPは入力される情報の正確性に強く依存します。特に以下の情報が不正確だと、誤った手配を引き起こしかねません。

  1. BOMの誤り:部品構成が違うと必要量が狂います
  2. 在庫データのズレ:実在庫とシステム在庫の乖離します
  3. リードタイムの誤差:納期遅延の原因になります

理想は「計画 → 実行 → 実績 → 計画見直し」というサイクルが機能する状態です。

MRPの限界と生産スケジューラとの連携

MRPには、いくつかの限界があります。その代表的なものが、「無限能力」でスケジューリングを行う点です。これは、設備や人員の制約を考慮せずに計画を立てる方式であり、加えて固定されたリードタイムで資材の所要時期を計算するため、実際の現場の状況とはズレが生じやすくなります。つまり、資材が「いつ必要になるのか」を正確に把握するのが難しいという課題があります。

一方、生産スケジューラは「有限能力」でスケジュールするため、設備や人員の稼働状況、制約条件など現場の実態を反映した現実的なリードタイムで資材の必要なタイミングを時分単位で算出できる点が大きな特長です。これにより、MRP単体では対応が難しかった精度の高い資材手配の納期調整が可能となります。

まとめ

MRPは、生産計画の実現に欠かせないツールですが、単体では限界もあります。生産スケジューラと連携させることで、より正確かつ柔軟な資材手配が可能になり、現場の混乱を防ぎつつ、在庫の最適化にもつながります。重要なのは、「システムを導入すること」ではなく、「正しい情報と現場の実態に基づいた運用を継続すること」です。生産管理担当者として、MRPを使いこなし、計画と実行のギャップを埋めていく視点が求められます。

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タグ : BOM MRP リードタイム 在庫管理 欠品 生産スケジューラ 生産計画 調達計画 資材調達 過剰在庫