Excelで工程管理表を作成する方法
2024.03.01A0 生産管理工程管理表は、ものづくりの工程を適切に管理するために欠かせないツールです。工程管理表があることで、現場に即した人員配置や原材料の調達といった作業も円滑に行えるようになります。工程管理表を作成できるツールは色々ありますが、なかでも手軽に使えるのがExcelです。本記事では、Excelを使った工程管理表の作成方法をご紹介します。あわせて、現場で使いやすい工程管理表を作成するためのポイントも解説します。
【目次】
■そもそも工程管理表とは
■Excelで作成できる工程管理表の種類
■Excelを使った工程管理表の作成方法
■工程管理表を作成する際のポイントと注意点
■まとめ
そもそも工程管理表とは
工程管理表とは、ものづくりの現場における工程計画を表に落とし込み、一連の流れを見える化したものです。工程管理表があれば、各工程の進捗状況や作業の遅延状況、ボトルネックとなっている工程を一目で確認できます。 ものづくりの現場では、各製造工程を管理する「工程管理」の業務があります。計画をもとに製品の数量や品質、製造期間、人員配置などを適切に管理し、作業を効率化するのが工程管理の目的です。工程管理表はこの工程管理に欠かせないツールです。
従来の工程管理表は、紙やホワイトボードなどに手書きするのが一般的でした。しかし、現在はExcelやスプレッドシート、専用の管理ツールなどのデジタルツールがよく使われています。特に、ExcelであればWindowsのPCにあらかじめインストールされている場合が多くあるのでよく使われる傾向にあります。ただし、ファイルの共有や管理が難しいという面があるのも事実です。「複数人で同時に管理表を編集したい」「Excelでの作成に時間がかかる」という場合には、生産スケジューラをはじめとするデジタルツールのほうが向いていますが、まずは工程管理表を導入したい場合はExcelでの作成がおすすめです。
工程管理表の重要性
工程管理に関する情報が不透明だと、チーム間の連携がとれず生産性の低下や品質の低下につながります。その結果、納期遅れや顧客満足度の低下を引き起こすこともあります。工程管理表を使うことで、作業内容やスケジュールなどの全体像が明確になり、円滑な人員配置や正しい納期の設定につながります。
工程管理表については、「工程管理表で業務効率アップ!作成・活用ノウハウ解説」の記事でより詳しく解説しています。こちらもぜひご覧ください。
Excelで作成できる工程管理表の種類
Excelで作成できる工程管理表は、主にガントチャート工程表とバーチャート工程表の2種類です。それぞれの管理表の見本や特徴を、以下で解説します。
ガントチャート工程表
ガントチャート工程表は、複数の作業を同時進行する際に活用する形式です。横軸にはパーセンテージで作業の進捗を記入し、縦軸には各タスクの名称と担当者を記入します。シンプルな工程表であり、タスクの全体像や進捗度合いを一目で確認できるのがメリットです。複数人の進捗状況を、同時に把握したいときにも役立ちます。スケジュールの遅延にも気づきやすくなり、「どこにリソースを割り振るべきか」という判断も迅速に下せるようになります。ただし、突発的なスケジュールの変更が起こった際は項目の修正や作り直しの必要があります。
バーチャート工程表
バーチャート工程表は、横軸に日付、縦軸にタスク名と担当者を記入する形式です。ガントチャートと似ていますが、進捗状況を判断する基準が異なります。ガントチャートではタスクごとの進捗度合いがわかるのに対し、バーチャートでは作業の開始・完了・必要な日数を把握するのに役立ちます。また、日・週・月単位で作業の進捗状況を確認できるため、時間を軸に進捗管理を行いたい場合に適した表です。 一方で、複雑な工程管理や工程同士の連携を把握するのに不向きなため、「作業ごとの細かな進捗管理を行いたい」というケースには向いていません。
これらの他にも、工程管理表には「グラフ式工程表」「ネットワーク工程表」「出来高累計曲線」などの種類があります。これらは表自体が複雑で読み取るのに慣れが必要だったり、細かい作業を確認するのに不向きだったりします。まず導入したい場合は、Excelで手軽に作成でき、なおかつ誰がみてもわかりやすい表になるガントチャート工程表やバーチャート工程表がおすすめです。
Excelを使った工程管理表の作成方法
Excelで工程管理表を作成する際は、無料のテンプレートを活用すると良いでしょう。テンプレートであればある程度の形式が整っているため、作成にかかる時間を効率的に短縮し、見やすい管理表を作成できます。 ここでは、バーチャートタイプのExcelテンプレートを使うことを前提としたうえで、工程管理表の作成の流れをご紹介します。 全体の流れとしては、以下のとおりです。
- 作業内容を洗い出す
- 実施期間を決める
- 各工程の担当者を決定
- テンプレートを用意する
- チャートへ各情報を記入
1.作業内容を洗い出す
工程管理表の縦軸に記入する作業内容を洗い出しましょう。一例として、食品加工現場の製造工程を挙げてみます。
- 原材料の受け入れ
- 原材料の受け入れ検査
- 前処理
- 原材料のカット
- 調理
- 成形
- 加熱
- 袋詰め
- 殺菌
- 冷却処理
- パッキング
- 出荷
作業内容を洗い出したら、各工程をさらに細分化して細かなタスクをリストアップしましょう。上記の例でいうと、「原材料受け入れ」の工程を「親タスク」とするのであれば、そこに含まれる発注や入荷などの細分化された作業は「子タスク」となります。ここで注意したいのが、子タスクをどこまで細かく分類するかということです。
2.実施期間を決める
作業内容の洗い出しがひと通り完了したら、作業の規模に合わせて、日・週・月・年などの単位を選び、作業の開始日と終了予定日を設定しましょう。期間の単位やスケジュールの全体像が明確になったら、工程管理表の横軸に実施期間を記入します。
3.各工程の担当者を決定
各工程の担当者を決定します。経験やスキル、納期設定などを踏まえたうえで、特定の人に作業量が偏らないように割り当てましょう。作業量の偏りは、属人化につながります。作業が属人化すると、担当者不在時に業務全体が滞ってしまいます。
4.テンプレートを用意する
Microsoft社の公式サイトより、任意のテンプレートをダウンロードします。ダウンロードしたテンプレートはカスタマイズが可能です。洗い出した工程や担当者、管理したい流れにあわせて調整しましょう。
5.チャートへ各情報を記入
これまでに洗い出した作業内容や実施期間、担当者などを工程管理表へ記入します。作業内容を記載する際は、作業内容の関係性を踏まえることが大切です。同時進行できる作業や、前工程が完了していないと進められないものなど、作業の関係性はさまざまです。関係性がわかるよう色分けしたり、記入方法を統一したりといった工夫をして記入しましょう。
工程管理表を作成する際のポイントと注意点
工程管理表の目的は、スケジュールの全体像や進捗状況、メンバーの作業状況を見える化することです。この前提を踏まえて、工程管理表を作成する際の注意点を以下で紹介します。
誰が見ても内容を把握しやすい表にすること
誰が見てもわかりやすい表に仕上げるように心がけましょう。工程管理表は、複数人で管理したり更新したりするものです。作業内容やタスク状況がわかりにくいと、管理作業も滞ってしまいます。例えば、作業ステータスや重要度に合わせて項目の色分けをする、情報を詰め込みすぎない、といった工夫をすると良いでしょう。また、色数があまりに多いと、表が見づらくなるため注意しましょう。工程管理表は複数人が確認するため、専門用語を使いすぎないことも大切です。誰が見ても理解できるような言葉となっているかを意識しましょう。
各工程を正確に区分すること
各工程を正確に区分することで、工程を正確に見える化できます。Excelで工程管理を行う場合、必要項目や実績の入力を手作業で行うため、複数のスケジュールが入り乱れて予定との矛盾が生じたり、異なる作業の実施期間が重なったりすることもあります。この場合は、複数の作業が同時進行で行われている、重なり合う期間にリソースが集中してしまっていることを意味します。
そのような状況になった場合は、作業内容の区分を見直したうえでスケジュールを調整しましょう。重複が見つかった作業の内容を改めて細分化することで、スケジュール調整ができる場合があります。また、現場の担当者から報告された作業の所要時間を踏まえたうえで、区分の細分化を進めましょう。
関係者全員で共有すること
作成した工程管理表は、関係者全員に共有しましょう。例えば、ファイルは各々のPCのローカル環境へ置くのではなく、全員がアクセスできるオンラインのストレージへ格納します。このようにして、「全員が必要なタイミングですぐにファイルを閲覧できる」という状況を作ることを心がけましょう。「ローカル保存に関する制限をかける」「保管場所をあらかじめ決める」などのルールを設定しておくことも大切です。
ファイルの保存や更新に関するルールを決めておくこと
Excelファイルは、複数人で管理したりリアルタイムで更新したりするのが難しい側面があります。従業員がそれぞれファイル管理をした結果、情報の正確さが失われる可能性もあります。そこで、ファイルの定期的な更新やアップデートの担当者を任命し、ファイルの保存や、新規作成、複製などに関するルールを設定するのがおすすめです。事前にルールを決めておくことで、ファイルの乱立や正しくない情報の上書き、ヒューマンエラーによる情報の削除などのトラブルを防止できます。
まとめ
導入コストを抑えながら工程管理表を作成できるツールとして、Excelは広く活用されています。しかし、複雑な工程管理になると処理速度の低下や属人化などの課題も発生します。
そこで、Excelの弱点を補うツールとして、工程管理システムや生産スケジューラの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
生産スケジューラは、製品の生産スケジュールを秒単位・分単位で自動立案できるツールです。設備や人員リソースを考慮したうえで、最適な生産スケジュールをスピーディーに立案できます。現場に即した生産計画を迅速に作成できるため、生産性の向上や業務効率化にもつながります。
生産スケジューラで作成できる生産計画は、製造業における「生産管理」に欠かせない計画表です。製造工程を細かく管理する工程管理はこの「生産管理」に含まれています。生産管理によって生産ライン全体の動きが最適化されることで、工程管理の作業も効率化されるのです。
アスプローバでは、「Asprova MS」をはじめとした全3種類の生産スケジューラを提供しています。工程管理業務を効率化する手段として、生産スケジューラの導入もご検討ください。
コラム編集部
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