工程管理と進捗管理の違いとは?基本と管理の流れを解説

2024.03.01A0 生産管理
工程管理と進捗管理の違い

生産現場の作業効率を高めたいときに、振り返りや見直しが必要な工程管理と進捗管理。どちらも管理に関わる業務のため、同じことだと思われがちですが、実は内容や役割に大きな違いがあります。それぞれの違いを理解できていないと、現場の課題も見つからない上に適切な改善策も見出せず、いつまで経っても生産性は向上しません。違いをしっかりと理解した上で、上手に現場をコントロールして効率化を実現しましょう。

本記事では、工程管理と進捗管理の2つの違いについて解説しながら、管理の流れや成功させるポイントについてお伝えしていきます。

【目次】
■工程管理の基本
■進捗管理の基本
■工程管理と進捗管理の違いを比較
■工程管理の流れ
■進捗管理を成功させるコツ
■スケジューリングの精度が業務効率化のカギ

工程管理の基本

工程管理とは、製品ができるまでの作業工程を管理する業務です。納期に間に合うように各製造プロセスをスケジューリングして、問題が発生した際には軌道修正を図ります。

製品の品質を維持しつつ計画通りに納期に間に合わせるには、人員配置や工程の段取りの最適化が求められます。さらに、生産計画に関する情報や製造スケジュールを、常に部署間やチーム間で共有し、全員が把握しながら業務を進めることが重要です。
適切な工程管理ができていると、製品の品質を保持しつつ作業期間を短縮でき、適切な在庫管理や管理にかかるコスト削減にもつながります。

工程管理の目的

工程管理の主な目的は2つあります。納期を守ることと、製品の品質や数量、製造期間を適切に保ち、効率的な製造を促すことです。 工程管理をしっかりと行わないために進捗状況やスケジュールに関する情報が常に把握・共有できていないと、納期の遅れによる信頼性の低下を招いてしまいます。

悪影響は納期の遅れだけではありません。人手不足などの現場課題を認識できず解決しないままにしていると、やがて品質低下や数量の過不足、労働環境の悪化などを招き、社内外に悪影響を及ぼすおそれもあります。ステークホルダーから企業活動が厳しく監視される昨今において、品質維持や適切な作業配分、負荷調整は企業の責務です。進捗状況を部署間やチーム間で共有し合いながら、生産計画に基づいて円滑に生産活動を進めることが求められます。

工程管理の業務内容

工程管理の主な業務内容は、プロジェクト全体の目標計画を立て、一連の工程を管理することです。具体的には下記が挙げられます。

  • プロジェクトの目標・計画
  • 各工程のリソース配置
  • 生産活動の最適化
  • トラブルの原因究明
  • 改善策の立案・実施

品質を維持しつつ納期に間に合わせるために、リソースの配置や各工程の段取りを最適化して、効率よく目標を達成できるようにサポートします。

進捗管理の基本

進捗管理とは、作業計画と実績のズレを把握し、管理する業務のことです。「製品ができるまでの作業工程」を管理する工程管理に対し、進捗管理では「作業中の進捗状況」を管理します。そのため、作業が進行している間も、いかにズレを把握・すばやく課題を発見し、迅速に対処できるかが重要です。各工程の作業時間と必要期間を推定し、納期に遅れが生じないようタスクの割り当てやスケジュールを決めて、必要に応じて調整を行います。各工程の抜け漏れや納期遅れを防ぎつつ、全体の業務を円滑に進めるためにも、適切な進捗管理は欠かせません。

進捗管理の目的

進捗管理の目的は、業務の抜け漏れや納期の遅れを防ぐことです。進捗管理を行わずに作業を進めると、現場がスケジュール通りに業務を進められているかが分からず、納期に間に合うのか、それとも遅れの可能性があるのかを把握できません。業務に抜け漏れがあったとしても気づけず、トラブルへの対処が後手に回ってしまいます。

そうなると納期遅れや品質の低下を招き、企業の信頼は失われてしまうでしょう。適切な進捗管理ができていれば、業務に抜け漏れや問題が発生してもすぐに気づけるため、トラブルへの対処が迅速になります。また、あるプロセスで遅延が起きた際にもいち早くそれを把握し、最終期日に間に合うようにチーム全体の業務バランスを見直せるようになり、納期遅れを防ぐことができます。

進捗管理の業務内容

進捗管理の主な業務内容は、進行状況を把握し、必要に応じてスケジュール調整やタスク配分の見直しを行うことです。具体的には、下記が挙げられます。

  • 進行状況の把握
  • 進行状況のモニタリング
  • スケジュール調整
  • タスク配分

各工程の進行スケジュールを細かく管理することで、滞りなく生産活動を維持し、最終納期に間に合わせるようにします。

工程管理と進捗管理の違いを比較

工程管理と進捗管理が同じだと解釈されてしまう理由のひとつに、どちらも「納期に間に合わせる」ことを目的にしている点が挙げられます。確かに共通の目的はありますが、業務内容や役割、管理の方法は同じではありません。ここからは、工程管理と進捗管理の具体的な違いについて解説します。

管理範囲

工程管理では、現場におけるすべての「工程部分」を管理します。製造業で言うと、材料の加工から運搬、製造、検査などすべての工程が管理範囲となります。それに対し進捗管理では、工程が滞りなく進んでいるかを管理する「スケジュール管理」をメインに行います。進捗管理は工程管理の一部です。工程管理の一環としてスケジュール管理、つまり進捗管理が含まれていると考えるとイメージしやすいでしょう。

業務内容

工程管理では、生産活動に必要な人員、設備、資材などのリソースを効率的に配置して、目標を達成するために幅広い活動を調整します。また、製造工程においてトラブルや課題が見つかれば、原因究明や改善案の立案、実施までを行います。

対して進捗管理では、工程の見直しやトラブルの原因究明にまでは踏み込みません。スケジュール管理とタスク配分の見直しに重きを置いています。あくまでも個々のプロジェクトやタスクの進行状況を監視する役割を果たすのが進捗管理です。

進行方法

工程管理では、業務を細分化して分割し、分割した工程に対して具体的な目標や計画を設定します。作業を段階的に進めていき、全体の進行を計画的に管理するのが主な進行方法です。それに対し進捗管理は、実際の作業の進行状況をモニタリングして確認します。進捗の遅れによっては、その場でスケジュールの立て直しを図り、遅れが出ないように調整しながら管理を進行します。

作業計画を立案し、スケジュールに沿って実行するのが工程管理、遅延やトラブルを迅速に発見し、目標を達成するためにサポートするのが進捗管理と分かります。表でまとめると以下の通りです。

目的 管理範囲 業務内容 管理の進行
工程管理 ・納期遵守
・業務効率の向上
・コスト削減
・プロジェクト全体(運搬・製造・検査など) ・生産計画
・リソース(人員・設備・資材)の配置
・工程の最適化
・トラブルの把握、解決
・課題の発見
・改善策の策定、実行
・業務を細分化し、工程ごとに設定した計画を実行
進捗管理 ・納期遵守
・問題の早期発見と解決
・各工程におけるスケジュール ・スケジュール調整
・タスク配分
・進行状況をモニタリング

工程管理の流れ

工程管理の手順は、様々なビジネスの場面で使われるフレームワーク「PDCA」の、P(Plan:計画)D(Do:実施)C(Check:評価)A(Action:改善)の流れに沿っています。PDCAは繰り返し行うことが重要で、実施するごとに最適化されます。
より精度の高い工程管理を実行させるためにも、PDCAサイクルを意識しながら取り組んでみてください。

1.計画立案(Plan)

どのくらいの期間内にどの程度の量の製品を製造するのか、原材料や人員はどのくらい必要かなどを洗い出し、生産計画を立案します。プロジェクトの全体像をイメージしやすくすることがポイントです。次に、工程ごとのタスクを実行するための計画を立てていきます。今後の業務効率化につなげるためにも、スケジュールには常にタスクの開始日や終了日、担当者なども細かく記しておきましょう。

2.計画の実施(Do)

次に、立案した計画をもとに、設定されたスケジュールやタスクに沿って、生産を実施します。問題や遅延が起こったら、迅速かつ適切に対処しましょう。計画通りに進行できないような状況になった場合、スケジュールやリソースの調整が必要と分かります。実際に現場では、各プロセスで様々な問題や課題が見つかるでしょう。原因を究明し解決策を見出すためにも、また、次の工程管理で同じ問題に直面しないためにも、どのような問題や課題があったか、その都度、記録しておきましょう。

3.評価(Check)

計画の実行が完了したら、次の計画で教訓にすべき点や次のプロジェクトに活かせる点を見つけるためにも、実施した計画を評価します。 生産の進捗状況を把握しながら、計画と実際の工程にズレがあったか、プロジェクトの進捗や品質にどのような変化があったかを比較検討しましょう。計画通りに実施できているかそうでないかだけを評価するのではなく、課題に対しどのような改善策が必要かを具体的に考えることがポイントです。それに基づき、より最適化を図るための改善策を立案します。

4.改善(Action)

評価を終えたら実際に改善していきましょう。実施した計画で成功した方法は維持しつつ、評価によって見つかった課題や問題点には改善策を講じます。改善策を実行しても解決しない、または別の問題が起こる場合は、もう一度、計画立案の段階に立ち返って見直しが必要です。PlanやDoで発見した課題や問題点を取りこぼしていないかを再確認し、改善策に加えていきましょう。

ひと通り改善の手応えをつかめたら、次のプロジェクトでは改善点を加えた工程管理ができるようになります。このように、PDCAサイクルを回すと工程管理の精度を継続的に向上させることができます。それが品質アップやコスト削減を実現し、組織全体の利益向上や目標達成につながります。

進捗管理を成功させるコツ

進捗管理では、計画していた予定や目標と実際の進捗にどのくらい乖離があるかを把握することが重要です。納期までの進捗状況をしっかりと確認しながらプロジェクトを滞りなく遂行するためにも、以下のポイントを押さえた上でスケジュールを整理していきましょう。

1.タスクを細分化する

まずは、計画に関わるタスクをすべて洗い出して細分化します。プロジェクトの大まかなスケジュールだけでなく、週ごとや日程ごとにやるべきタスクに細かく分けて、忘れやすい業務も抜け漏れないか確認しながら整理しましょう。細分化に加え、タスクに優先順位をつけることも忘れずに行ってください。1つのタスクを完了しなければ次に進めないタスクや同時進行できるタスクを把握し、どのタスクを優先的に進めるほうが効率よくプロジェクトを遂行できるかを確認していきましょう。

2.進捗状況を定期的に報告する

定期的な進捗状況の報告も、進行管理を円滑に進めるために重要なプロセスです。細分化したタスクごとに、どのタイミングで進捗状況を把握するかを決めて、チームの報告時間を設けます。タスクの進捗状況は、管理者だけでなくチーム全体が把握できるように共有できるオープンな環境にするのがポイントです。定例会議で報告する、チャットツールや全員がアクセスできる進行管理表などを作成するなどの方法で管理すると、把握もれやトラブルが起きにくくなります。

3.チーム内の責任者を明確にする

チームのスケジュールとチームで取り組むべきタスクの進捗状況をいち早く把握するためにも、チーム内には責任者を設けるようにしましょう。チーム内に責任者がいないと、メンバーの個々の進捗状況を把握する役割を持つ人がいなくなり、チーム全体のタスク遅延を招く可能性があります。チームのタスクに遅れが出ることで、全体の納期遅れにつながるおそれもあるため、必ずチームの進捗を管理する役割を配置するようにしてください。

チームの責任者を選ぶ際には、他のメンバーから信頼を得ている人や管理責任の業務を行った経験を持つ人など、全体を上手くまとめられる人材を選ぶようにしましょう。

4.チャートや図で可視化する

タスクにおける作業時間や人材ごとの工数、リソースの配分を適切に行うことが、進捗管理を円滑に進めるためのポイントです。チームごとにスケジュールを設定し、複数のタスクを抱えた状態だと、頭の中だけで把握するには限界があります。認識にズレが生じ、正確な状況を把握できていないと、計画通りに進むはずの進捗にもズレが起こります。

感覚値で進行度合いを気にしていた結果、納期ギリギリになって遅れが発覚し、慌てて作業をしてしまうと、ミスやトラブルにつながります。そのような事態を招かないためにも、進捗状況は必ず可視化しましょう。進捗管理にチャートや図を用いると、情報を整理しやすくなり、ひと目で進捗状況を把握することができます。進捗に遅れが生じそうな状況もいち早く発見でき、迅速にタスク配分や人員の再配置を行えるようになります。

進捗状況の把握に適しているのが、専用ツールの活用や、エクセルなどの表計算ツールで作成する表やガントチャートです。高い精度で、簡単に生産スケジュールを作成できる機能が備わったツールもあります。

スケジューリングの精度が業務効率化のカギ

工程管理と進捗管理はどちらも生産活動における納期やスケジュールに関わる管理業務ですが、管理範囲や業務内容、進行方法に違いがあると分かりました。今回ご紹介したPDCAサイクルや管理の成功ポイントを押さえ、管理業務をブラッシュアップしてみてください。

工程管理や進捗管理をスムーズに進めるためには、その一歩手前となるスケジューリングの精度も重要です。時間や手間をかけずに精度の高いスケジューリングを実現できれば、進捗状況の把握や確認、再配置にかかる業務負担やリソースも軽減でき、業務全体の効率化につながります。

アスプローバ株式会社の生産スケジューラは、製造業の納期遵守や計画サイクルの短縮に効果的な高いスケジューリングを実現するシステムです。「Asprova MS」をはじめとした全3種類の生産スケジューラを提供しています。スケジューリングの精度を向上する手段として、生産スケジューラの導入もご検討ください。

img_banner_aps