生産管理の基本「TOC理論」とは?ボトルネックはどう改善する?
2021.02.05A0 生産管理![TOC理論](http://www.asprova.jp/column/wp-content/uploads/10031_00021_1.jpg)
生産管理の基本的な考え方に「TOC(Theory of Constraints)理論」というものがあります。TOC理論が生産管理にとって有用なのは、この手法が利益を上げ続けることを目指すと同時に、不要な在庫や経費を抑えるためです。また、会社組織やサプライチェーンなどにも適用可能で、単に生産管理のための考え方に留まりません。
このTOC理論はトヨタ生産方式と混同されることがよくありますが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか?企業運営にTOCを取り入れることで、どのような効果を得ることができるのか、またトヨタ生産方式との違いについて解説します。
【目次】
■ひと目でわかる!TOC理論とは?
■手順でわかる!TOCによる改善手法とは?
・TOC理論に終わりはない
・DBR法とは
■TOC理論とトヨタ生産方式の違い
・「トヨタ生産方式」について
・TOC理論とトヨタ生産方式の違いとは
■ TOC理論は製造業以外でも通用するってホント?
■ボトルネックを素早く発見!Asprovaのススメ!
■TOC理論のキーポイントは「繰り返し行うこと
ひと目でわかる!TOC理論(制約理論)とは?
TOCとは、「制約条件の理論」と訳される生産管理や経営改善全般で使用できる方法論です。
TOCにおいては、「工場全体の生産能力は制約条件工程の能力以上にはならない」と考えます。この場合の「制約条件工程」とは、工場で行われている工程の中で「生産効率の低下をもたらすボトルネックとなるもっとも処理能力が低い工程」のことを指しており、生産効率の低下をもたらす工程を中心に改善を行っていくのがTOCの基本的な考え方です。わかりやすく伝えると、TOCとは製造工程におけるボトルネックを発見すること。そして、発見されたボトルネックに対して改善を加えることを指します。この改善に至るまでの方法論を指して、TOC理論と呼ぶのです。
![img_toc_1](http://www.asprova.jp/column/wp-content/uploads/toc_1-1024x180.png)
上図は、製品製造における製造工程と、工程別の処理量をカンタンに図解化したものです。
一連の工程の中でも、最も処理能力の低い作業Bがボトルネック(制約条件)であることがわかります。Bの工程が完了しなければ、CやDは処理ができません。つまり、B(ボトルネック)の存在により、他工程は能力を十分に発揮できず、生産効率が落ちてしまうという結果になります。このボトルネックが改善されることによって、システム全体のパフォーマンスの向上を目指すことが可能となるのです。さらに、不要在庫・経費削減なども実現しやすくなります。
ちなみに、TOCは物理学者のエリヤフ・ゴールドラット博士によって考案されたもので、1984年にゴールドラット博士の著書である『ザ・ゴール』の中で、その理論を公開しています。製造業における課題解決に導く、多くのメリットを享受できるという特徴から、生産管理でTOCを取り入れるケースも少なくありません。以下の項からは、製造業の管理者に向けてTOCの手順を解説します。
手順でわかる!TOCによる改善手法とは?
![改善手法](http://www.asprova.jp/column/wp-content/uploads/10031_00021_2.jpg)
TOCによる改善手法を、4つのステップでご紹介します。
- ボトルネックを見つけ出す(生産工程の分割化、担当者への作業内容の確認など)
- ボトルネックを徹底的に活用する(ボトルネック部分にフォーカスして作業手順を洗い出す、無駄な工程を減らすなど)
- 他工程をボトルネックに合わせる(他工程の処理速度を落とす、工程の順序を入れ替えるなど)
- ボトルネックの工程を強化する(設備投資や人員の増員など)
TOC理論に終わりはない
ボトルネックが改善されると、また新たなボトルネックが生まれるため、改善手法で紹介した1~4を繰り返すことで製造効率を改善し続けられるという仕組みです。とはいえ、製造工程によっては「どこがボトルネックとなっているのかわからない」というケースも少なくありません。
「製造効率の改善には完璧な正解がない、終わりがない」という点を考慮すれば、管理者は「TOCを続けていく姿勢が大切」といえるでしょう。なお、生産工程のボトルネックを見つける際には「生産スケジューラ」が役立ちます。以下のページでは「生産スケジューラ」の特徴や成功事例などを紹介しております。少しでもご興味のある方は、まずはこちらをご覧ください。
DBR法とは
TOCの考え方に基づいて改善を行う際に、用いる代表的な手法として「DBR法」が挙げられます。ここでいうDBRとは「Drum-Buffer-Rope(ドラム・バッファー・ロープ)」のことで、生産工程でトラブルが発生した場合などに、時間的制約を設けて生産ペースを合わせて進めることです。ボトルネックになっている工程の能力を最大限に引き出すために、生産ペースをボトルネックに合わせます。
- ドラム:工場における制約条件工程(最も処理能力の低い工程)に合わせた工程全体の生産ペース。
- バッファー:生産工程でトラブルが発生した場合などに、制約条件工程を止めずに稼働させ続けるための時間的ゆとり。
- ロープ:先頭工程が制約条件工程から離れ過ぎないようにするための時間的制約。
制約条件工程以外の工程が、制約条件工程の処理能力以上に生産ペースを上げてしまうと、仕掛在庫の過不足が発生します。これを防ぐため、制約条件工程の生産ペースを全体に適応するのがドラムの考え方です。制約条件工程は処理能力がもっとも低いため、できる限り滞りなく稼働させ続けなければいけません。
制約条件工程より前の工程にトラブルが発生した場合、制約条件工程まで停止させてしまわないために、若干の仕掛在庫(作業途中の在庫)を作り、時間的ゆとり(バッファー)を持たせます。また、制約条件工程より前の工程は、制約条件工程よりも処理能力が高いため、原材料を早めに投入してしまいやすく、不必要な仕掛在庫まで発生させてしまいかねません。
原材料を投入するタイミングが必要以上に早くならないように、制約条件工程のペースに同期させるのがロープの考え方です。
TOC理論とトヨタ生産方式の違い
![DBR法とは](http://www.asprova.jp/column/wp-content/uploads/10031_00021_3.jpg)
TOC理論は、TOC理論の前身として知られる「トヨタ生産方式」と混同されがちです。トヨタ方式とはどのようなものなのでしょうか?また、TOC理論とトヨタ生産方式との違いについてもご紹介します。
「トヨタ生産方式」について
端的にいえば、トヨタ生産方式とは工場における生産活動の運用方式の1つで、生産ラインの無駄を徹底的に排除するために確立された生産方式です。トヨタ自動車の創立者である豊田喜一郎氏によって考案され大野耐一氏が開発しました。最大の敵は作りすぎのムダという考えがあり、作りすぎのムダを最も敵視しています。
トヨタ生産方式では、ムダの廃除のための2本柱「ジャストインタイム」「自働化」を掲げています。ジャストインタイムとは、必要なモノを必要な時に必要な量だけ生産することで、生産効率を高めるというものです。自働化(にんべんのついた自動化)とは、通常用いられる自動化と区別して用いられている言葉です。品質や作業に異常が発生した場合、自動で生産を止めて「人」に異常を知らせるというものです。どちらも、ムダを無くすという考えに基づいています。
TOC理論とトヨタ生産方式の違いとは
TOC理論:製造工程の中で「工程」に着目して改善を進める手法
トヨタ生産方式:製造工程の中で「働く人や労働力」に着目して改善を進める手法
TOCは作業工程に注目している点に対して、トヨタ方式では働く人や労働力に注目しているという違いがあります。TOCは、制約となっている工程を改善・強化することで収益の最大化を目指していることに対し、トヨタ生産方式ではムダを排除することで生産効率を高めるという点でも相違がみられます。
TOCは制約に集中して改善を行うことから、コストや労力を抑えながら大きな効果を得やすいのがメリットです。TOC理論とトヨタ生産方式は、どちらも製造工程のボトルネックを改善するという共通点がある一方、着目する部分に相違点があります。
TOC理論は製造業以外でも通用するってホント?
TOCとは、生産管理や経営改善全般で使用できる方法論です。そのため、生産管理の現場だけでなく、会社組織やサプライチェーンなどにも適用することが可能です。営利活動においては、継続してボトルネックとなる部分を改善していくことが大切になります。あまり考えたことがない場合には、今回ご紹介したTOC理論を取り入れてみてはいかがでしょうか?
ボトルネックを素早く発見!Asprovaのススメ!
![img_navi01_img01](http://www.asprova.jp/column/wp-content/uploads/navi01_img01-1024x252.jpg)
ボトルネックを見つける優れた方法として、生産スケジューラ「Asprova」をおすすめします。
生産スケジューラは、設備や人員のリソースごとに分・秒単位で細かく工程を管理することができるシステムです。生産スケジューラを活用することで、スケジュールの先が見えるようになり、適切な時間配分や作業員の割り振りを行うことができます。生産スケジューラ「Asprova」を活用すると、調達計画、配送計画、生産計画、PSI表、在庫グラフ、負荷グラフ、オーダガントチャート、資源ガントチャートなどを可視化できます。これらを可視化することにより、将来の設備負荷状況などからボトルネックを発見できます。ボトルネックを発見し改善を加えることで、業務効率化を実現できます。
時代の変化や競争の激化にともない、コスト削減や生産性向上に取り組む企業が増えています。現場の状況を明確にし、細やかな計画を立案することができるAsprova(生産スケジューラ)は時代に則した有効なシステムです。Asprovaの機能や詳しい導入方法・導入実績は別ページで詳しく解説をしています。
TOC理論のキーポイントは「繰り返し行うこと」
TOC理論について、基本情報や具体的な導入方法、トヨタ生産方式との違いについて説明しました。
ご説明した内容を簡単にまとめると、TOC(Theory of Constraints)とは、「制約条件の理論」と訳される生産管理や経営改善全般で使用できる方法論です。TOC理論は、ボトルネックを発見し改善することで、コストや労力を抑えつつ生産効率の向上に貢献します。繰り返しになりますが、TOC理論のポイントは、「1回だけで終わらせない」ということです。製造業におけるボトルネックは無限に発生し続けるので、管理者は「効率改善を続けていく姿勢が大切」です。
なお、当コラムで紹介した生産スケジューラ「Asprova」は、「お試しで使ってみたい」という方に向けて無料体験版をご提供しています。この他、Asprovaの資料請求なども承っているので、詳しくは以下のお問い合わせページからお申し込みください。
![](http://www.asprova.jp/column/wp-content/uploads/photo-working-80x80.jpg)
コラム編集部
![](http://www.asprova.jp/column/wp-content/uploads/photo-working-80x80.jpg)
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