お客さんをがっかりさせない「安全在庫」

2022.04.22A0 生産管理

欠品を避ける安全在庫

コンビニの唐揚げチキンは、決して切らしてはいけない商品の一つだそうです。なぜなら、「品切れです」と言われたときのお客さんの「がっかり度」が半端ないから。しかも利益率が高いので、販売機会を逃したくありません。一方、作り過ぎて売れなかったら廃棄処分です。

在庫は少ない方がいい、しかし欠品は避けたい。そのため製造業では「安全在庫」という考え方があります。安全在庫は、わずか3つの要素を組み合わせたシンプルな数式によって、数量と、それを確保するための発注点を算出することができます。

グラフで見ると、概念がよくわかります。在庫は生産が進むにつれて減少していきます。補充がないと安全在庫量を下回り、ゼロに向かいます。発注点は当然その前に来ます。ただ在庫の減り方は確定しているわけではなりません。需要や生産が増えたら、グラフの下の青線のように急減しますし、逆に上の青線のように、想定より減り方が鈍い場合もあります。

安全在庫の計算方法

従って、3つの要素の1つ目として、需要のバラツキを計算に入れなくてはなりません。バラツキが大きくなると、必要とされる安全在庫は増えます。先月は100個しか売れなかったものが今月1000個も売れるようになったら、なまじな在庫では対応できません。こうしたバラツキは「標準偏差」で示されます。バラツキの平均値であり、表計算ソフトで簡単に算出できます。

2つ目は、部材の調達にかかる期間(リードタイム)です。長くなるほど、安全在庫は増えます。調達に手間取りそうな場合、その間の需要変動が大きくなることが予想されるからです。グラフで見ると、時とともに上下の青線が開いていくことがわかります。

最後に、安全係数というものが統計的に設定されています。これは欠品許容率によって変わります。どんな需要変動に対しても完璧に応じるためには無限の在庫が必要です。「10回中9回応じることができればいい」なら1.29という数値が安全係数です。もっとレベルを上げ「100回中99回応じたい」とするなら、2.33が安全係数となります。よく用いられるのはこの中間にあたる100回中95回=欠品許容率5%という数値で、安全係数は1.65です。

安全在庫とスケジューラ

具体的に計算してみましょう。日ごとの平均需要量1000個、標準偏差が100個、リードタイム5日、欠品許容率5%の場合を仮定します。標準偏差とリードタイムの平方根と安全係数をかけあわせたものが安全在庫です。つまり、100*ルート5*1.65=369個と算出されます。また発注点は、リードタイム間の予測需要量に安全在庫を加えたものです。1000*5+369=5369個 となります。この水準を下回ったとき、発注をかけるのです。
ただしこれは教科書的な式にすぎません。現場にはそれぞれ特性があります。生産能力や品目の特性を考慮しながら、数百、数千にわたる部材の在庫計画を立てるには、入念な状況把握と、生産スケジューラーのような特別の道具が必要となるでしょう。

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技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps
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