計画と実績の両輪で回す!生産スケジューラを上手に運用するための実績収集の方法

2023.06.26A1:生産計画・スケジューリング

生産スケジューラを運用する上で考慮すべきことが「実績の収集」です。

現場の作業が必ず生産計画通りに行われるなら実績収集は必要ありません。しかし、現実には計画通りにいく作業もあれば計画通りにいかない作業もあります。生産スケジューラの場合にもそれは変わりません。

生産スケジューラで出力された計画と実績の差を調べ、次の計画にフィードバックするために実績の収集は欠かせない要素なのです。

では、生産スケジューラを導入した場合の実績はどのように収集すればよいでしょうか。代表的な2パターンを紹介します。

①既存の実績収集システムを利用する

いままでの実績収集のやり方を、そのまま受け継ぐパターンです。現場での運用において最も影響が少ないやり方と言えるでしょう。

このパターンの場合、既存の実績収集システムから得られる範囲の情報から、計画と実績の差異を調べることになります。たとえば在庫数を実績として収集していれば、現有在庫と計画における在庫との差異を調べることで、次の計画にフィードバックをします。

②新たに実績収集の仕組みを構築する

②は、生産スケジューラを導入するに当たって、新たに実績収集の仕組みを構築します。

たとえば手書きの作業日報で実績を収集していたとします。そこに追加してスケジューラ専用の実績入力を現場に行ってもらうのは負担がかかるため、作業日報の機能とスケジューラへの実績入力を一本化したシステムを新たに構築します。実績収集のシステムを一から構築することになるので、時間もお金もかかりがちです。

その一方で、スケジューラの指示内容と実績の整合性は取りやすくなります。整合性が取れるとは「指示に含まれた情報と実績として入力する情報とが一致している」ことを意味します。

スケジューラの指示内容には、製造の開始、終了、使用する機械などの情報が含まれています。それらの情報を実績としてスケジューラに返すことができるため、計画調整やマスター整備などに活用できます。

組み合わせたパターンもある

最後に、①と②を組み合わせたパターンも紹介します。

これはいままでのやり方を踏襲しつつ、新しい仕組みも構築します。ERPや生産管理システムといった上位システムで行っていた既存の実績収集に加えて、生産スケジューラの実績収集を新たに構築するイメージです。

従来から行っている実績収集に追加してスケジューラにも入力するため、二重入力に相当します。現場の担当者からしてみれば負担が重くなるやり方ですが、目的に沿った実績を反映しやすいという点は見逃せません。

実績を収集する目的の一つに、製造原価の計算がありますが、このパターンの場合、上位システム側は製造原価の計算に必要な情報だけを収集すればよく、スケジューラの実績入力は考えなくてすみます。

一方のスケジューラ専用の実績入力も、スケジューラに必要な情報だけでよいわけです。どの作業がいつ始まって、いつ終わったか、いくつ出来たかなどが必要であって、それ以外の情報は必要ありません。

以上が、生産スケジューラを使った実績収集のパターンとなります。生産スケジューラは、計画と実績の両輪で回すことを忘れないでください。


(了)


技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps