お客さまの困りごとから生まれたAsprova新機能  現場は清潔に、「前後依存後段取り」が貢献

2024.05.21A1:生産計画・スケジューリング

 アスプローバ社は、生産スケジューラAsprovaのバージョン17.3に、新機能として「前後依存後段取り」を搭載しました。段取りには前段取り(準備)と後段取り(片付け)があります。旧来の標準機能は、前段取りを重視し、さまざまな応用ができるようにしてきました。一方で後段取りについては簡素でした。今回はお客さまの要望をきっかけに、後段取りに付け加えた機能について紹介します。

後段取りも可変、動的に

 段取り時間は、前の工程、後の工程との関連によって変わります。たとえば色を変えるとき、洗浄のため、似た色なら短く、かけ離れた色なら長くかかります。これが「前後依存」の意味です。Asprovaでは、時間の変動に対し、柔軟に対応できる「動的段取り」を導入してきました。しかしこれは前段取りに対するものでした。

 今回は、お客さまからビジネスパートナーを通じて要望がありました。「品目が切り替わった時の段取りを、直の終わりに後段取りとして割付けたい」ということでした。このお客さまは衛生用品を製造しています。ある品目の生産が終わったら、すばやく清掃して、勤務者を交代前したいというわけです。

 従来のAsprovaでは、後段取りは簡単には付けられません。それで、パートナーが複雑な計画パラメタを作成して、自動で前段取りを後段取りにセットするような対処をしていました。だとしても、ガントチャートで作業移動する時にうまく処理できず、お客さまが不満を感じていました。

 そうした不満を解消するため、動的な後段取りに挑むことになりました。技術面を任されたエンジニアの李彤(り・とう)さんは「会合でお客さまから詳しい話を聞かせてもらい、すぐにPoCで共同開発する方針が決まりました」と言います。PoCとは、小規模な試行を繰り返し、問題を解決しながら完成にもっていく手法です。オプション機能の「Solver」では一般的な手法ですが、標準機能でのPoCは、これが初の試みになりました。

他のユーザーでも順調稼働

 「標準機能のロジックに変更を加えるので、気を遣いました。他の機能に影響を与えていないか、慎重に動作確認テストをしていきました」と李さんは言います。開発期間は2か月ほど。その間2,3回の変更やバグ取りを行い、昨年リリースにこぎつけました。その後、他のユーザーでも前後依存後段取りが利用されるようになり、いずれも順調に稼働しているということです。

 アスプローバ社によると、この機能は、以前から必要性を感じていたのですが、代替の方法があることから、開発が優先されませんでした。お客さまから要望が寄せられたのをきっかけに、実現の運びとなりました。

 この機能の実装後は、品目後段取りや仕様後段取りテーブルが追加されました。使い方は前段取りとほぼ同じです。前品目、後品目を指定し、後段取り時間も指定したら、品目切り替えによって後段取りを簡単に出せます。

 お客さまの要望にこたえる姿勢を、これからも大事にしていきたい、ということです。


(了)


技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps