1本のメールから生まれたAsprova新機能 現場感覚にフィットする「製造時間調整式」

2024.02.07A1:生産計画・スケジューリング

 アスプローバ社は、生産スケジューラAsprovaの新バージョン17.4に、いくつかの新機能を搭載しました。一番の特徴は「柔軟化」です。現場が置かれた状況に応じて、作業時間を延長したり、短縮したり。そういうことに対応できるようになりました。

「日付またぎ」という問題

 きっかけは、ある飲料メーカーから、アスプローバ社のサポート窓口に寄せられた1本のメールでした。「日付をまたぐ作業のとき、賞味期限の日付を変更する設定作業が発生する。作業時間を30分増やしたいが、標準機能ではできない。どうすればいい?」という内容でした。

 「これは面白いね。何とかならないか」と、メールを見た田中智宏社長が社員に呼びかけました。社内のミーティングでエンジニアたちの意見を聞き、さらにビジネスパートナーさんの話も聞きました。そして飲料メーカーから詳しい内容を聞き、すぐに共同開発することにしました。とりあえず作ってみて実現可能性を試す方式で、PoC(Proof of Concept)といいます。

 こうして「製造時間調整式」のプロジェクトが始まりました。技術面を任されたのはエンジニアの李彤(り・とう)さんです。「一番苦労したのは、プログラムの設計の段階でした。当初の方法ではどうもうまくいかず、数日考えた末、田中さんに相談して方向転換しました。それがよかったのだと思います。コードを書き、実装する段階では、あまり問題は生じませんでした」と振り返ります。

 コードを書くのに1~2か月。とりあえずできあがったβ版を、飲料メーカーと担当のパートナーに持ち込みました。他のパートナーさんにも公開して、実際に試用してもらいました。こうしたPoCに数か月をかけ、2、3回の修正を経て、満足のいくものができたということです。

習熟度に応じた調整も

 この機能「製造時間調整式」は、さまざまな応用が利きます。たとえば、手作業の仕上げ工程など、初めて取り組む際は時間がかかります。しかし慣れると作業のスピードが上がり、製造時間は短縮できます。そんな工程に対し、週の初めは8時間かかる設定としますが、週末には6時間にするといった対処が可能になります。他にもいろいろな使い方ができそうです。

 また従来は、作業実態に合わせるため、トリッキーな操作をしなくてはならない場合も見受けられましたが、製造時間調整式を導入したことで、実態に合った設定が容易にできるようになりました。

段取り時間の調整

 段取り時間についても、柔軟に対処できるようになりました。こちらもお客さまからの要望がきっかけです。「週初めの段取り時間をゼロにしたい。実際に段取りがないわけではないが、稼働時間に合わせて製造開始できるよう、それより前に段取りを済ませてしまっているから」というのです。

 こうした声にこたえ、「段取り時間調整式」機能が今回付け加えられました。具体的には、品目前段取りテーブルの「前段取り時間」をゼロにしておいて、実際の前段取り時間を「前段取り時間調整式」で設定します。式の中で、作業が週の1番目作業かどうかを判断し、1番目だったら前段取りゼロ、そうでなければ1時間などにすることができます。

 李さんは言います。「これは無理だなあ、やりにくいなあと思ったことでも、お客さまに付き合って一緒にやるうち、意外に簡単じゃないか、となったりします。難しそうな課題も、ユーザーがいれば解決できるように思えます。『これをやりたい』と思ったら、私たちに気軽に声をかけてほしい。今回のように、うまく実現させることもできます」

 机上論ではなかなか思いつかない機能が、現場の声を丹念に拾うことによって、Asprovaに盛り込まれていきます。ただ、機能が次々に増えていくと、便利にはなりますが、ソフトウェア全体としては複雑になり、初心者がとっつきにくいものになりがちです。アスプローバ社はこのことを自覚しており、UX(ユーザ・エクスペリエンス=使い心地)をよくするよう、そちらの方面の改善も続けています。


(了)


技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps