困ったこと35~費用対効果をどう示すか、後編

2023.10.18A3:生産スケジューリングの悩み相談

 アスプローバ社では、スケジューラ導入に関する悩みごとを解決するため、「困った事35」をまとめています。稟議書などで、具体的な効果を定量的に表現する簡単な方法を紹介します。

 生産スケジューラ導入の定量効果は以下の3つの項目で計算できます。

  1.在庫削減による「キャッシュフローの改善」の効果です。
  2.売上機会損失の低減による「収益改善(売上向上)」の効果です。
  3.業務効率化による「収益改善(コスト削減)」の効果です。

 この項では、2.収益改善(売上向上)と3.収益改善(コスト削減)の算出法について説明します。1については前編をご覧ください。

売上向上効果の算出

 生産スケジューラAsprovaは、納期問題による失注をなくすことに貢献します。これは収益改善(売上向上)に直結します。

 まず、納期回答時間の短縮です。切削・メッキなどの加工会社や、汎用品の製造をしている会社では、これが競合他社に対する重要な差別化ポイントになります。Asprovaにより、製造現場の負荷状況や、設備や作業員などの制約を考慮して、正確な生産計画を短時間で立案できます。また特急オーダの場合でも他のオーダを後にしても納期遅れしないかのチェックができます。納期回答に最適なツールです。

 次に、納期遅れを減らすことです。納期遅れはすべての製造業において致命的な問題です。顧客の信頼をなくすのはもちろん、顧客の生産活動を阻害したり、販売機会を失わせたり、大きな影響があります。

 Asprovaによる詳細スケジュールを利用すると、出荷タイミングをシミュレーションできるので、事前に遅れを感知でき、最終的な納期遅れを大きく減らすことができます。製造現場の負荷状況や設備や作業員などの制約を考慮しているのはもちろんです。

 効果を算出する式は次の通りです。

収益改善(売上)効果=粗利*失注率*効果率

 粗利は損益計算書の売上総利益とします。失注率は業態や会社によって変わりますが、一般的には数%あります。効果率は生産スケジューラによって失注を改善できる比率です。一般的には数%程度です。失注率と効果率は営業部門に確認して調整することが必要です。

 加えて、納期遅れペナルティなどがある場合、生産計画による納期遵守は、さらに収益の増加に寄与します。

コスト削減効果の算出

 収益改善(コスト削減)効果について説明します。スケジューラAsprovaは、納期遵守、在庫削減、業務の効率化に貢献します。これは収益改善(コスト削減)に直結します。具体的には、販管費、売上原価、間接人件費の削減に寄与します。

 まず販管費です。削減項目には「在庫管理費の削減」と「緊急輸送の低減による緊急輸送費の削減」などがあります。次の式で算出できます。

販管費の削減効果=(販売費及び一般管理費)*構成比率*効果率

 販売費及び一般管理費は、損益計算書の「販売費及び一般管理費」を利用します。削減項目の構成比率は、一般的には数%です、また効果率は一般的には10%程度ですが、販売形態や企業により変わるので、営業部門や物流部門に確認する必要があります。

 次に売上原価です。削減項目には、「段取り替え時間の削減」や「設備メンテナンスの削減」があり、製造人件費の削減を計算します。

売上原価の削減効果=売上原価*製造人件費率*時間率*効果率

 売上原価は、損益計算書の売上原価を利用します。製造人件費率は、売上原価に占める製造作業者の人件費率になります。製造部門の作業者の人件費は、製造部門の人数*平均年間給与*(総人件費/給与比率)になります。総人件費/給与比率をかけ合わせるのは、給与以外にも福利厚生費や年金などの負担が企業に生じているからです。一般的には120%くらいです。

 時間率は総稼働時間に対する削減項目の総非稼働時間の比率で、一般的には数%です。

 効果率は一般的には10%程度です。これらの数値は製造形態により変わるので、製造部門と調整する必要があります。

 最後に間接人件費です。削減項目は、生産管理部門では「特急品/例外対応」、「生産計画業務」、「製造指示業務」や「進捗管理/報告」などがあります。購買部門では「購買計画業務」などがあります。

間接人件費の削減=関連部門総人件費* (総人件費/給与比率)*業務比率*効果率

 関連部門総人件費は、削減項目に関係する部門の総人件費で、部門の人数*平均年間給与*(総人件費/給与比率)です。平均年間給与は有価証券報告書の「従業員の状況」で確認できます。(総人件費/給与比率)は、給与以外に福利厚生費や年金保険などがかかるので一般的には120%程度になります。業務比率は各項目の業務に何%従事しているかになります。効果率はスケジューラを導入して削減項目の業務が何%削減できたかになります。

 たとえば生産管理部門の「生産計画業務」で計算すると、平均年間給与800万円で、生産管理部門は20人いて、計画担当者が4人で各人毎日4時間計画を行っていて、生産スケジューラ導入により50%の計画時間が削減できたとすると
 間接人件費の削減=20(部門の人数)*800万円(平均年間給与)*1.2(総人件費/給与比率)*4(計画担当者人数)*(4/8)(計画業務時間)/20(生産管理部門人数)*0.5(成果率)=960万円/年となります。

なおこの計算式は遠回しに計算していますが、端的には人員削減効果を計算しています。この例ですと、計画担当者4人の2時間/日=8時間/日の削減ができるので1人分の人員削減が可能なので、800万円(平均年間給与)*1.2(総人件費/給与比率)*(1人分削減)=960万円/年と同値なります。

 以上、定量効果の計算方法を示しました。

 実際には生産スケジューラ導入の目的から、これらの定量効果のどの項目にどれだけ効果が出せるか、または出したいかを関連部門と調整することが「それでいったいいくらもうかるのだ?」に回答するための第一歩だと考えます。


(了)


技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps