困ったこと35~現状業務をどこまで変えたらよいかで迷った

2023.11.08A3:生産スケジューリングの悩み相談

 生産スケジューラAsprovaは本来、小日程計画のツールですが、やり方によっては、工場全体の最適化を担うところまで適用範囲を広げることができます。そうなると製造工程をはみ出したところにも影響を与えそうです。一方、生産スケジューラの導入は、業務を変えることが目的ではなく、成果を上げることが目的です。どこまでをAsprovaに担わせるか、導入目的にふさわしい適切な配分をすることが、成功のポイントです。現状業務との関連について、主な留意点を示します。

業務フローを見直す

 まず導入目的を明確にすることから始めましょう。

 次に、その目的実現のため、現状業務にどのような課題があり、それをどう解決していればよいのかを議論してみましょう。たとえば化学大手で、「Asprovaを導入すれば、製造工程のスケジューリングは自動化できるかもしれないが、業務自体のやり方がまずければ、結局効果は上がらないだろうという話になり、まずは業務フローを改善した」という経験談があります。

 このように業務フローの改善が先に行われることが理想です。

 検討の際には、他社の事例を参考にするのも良いでしょう。弊社ナレッジセンターで紹介している化粧品製造工場では、AsprovaとMRP(資材所用量計画)を同時に導入して、業務フローの「見える化」と、スケジューリングの高速化を実現しています。また別の塗料工場では、試行錯誤の末、AsprovaとMRPとの連携を工夫し、シンプルで高速処理できる運用を実現しました。

取引先への影響は

 自社のみならず、取引先に影響が出る場合も考えられます。

 Asprovaの効果として、「計画サイクルの短縮」があります。データが膨大で人手による生産計画は月に1回とか、計画変更に時間がかかるため見直しは週に1回だったのが、大きく変わってきます。そして計画サイクルが短くなると、仕入先への調達サイクルや現場への作業指示も変わってきます。「取引先はついてきてくれるだろうか」「製造現場がうまく回るだろうか」と新たな悩みが出てきます。

 そんな時は、プロトタイプ(試行)をやってみて、事前検証することができます。また第三者的な立ち位置のコンサルタントに入ってもらい、関係各社、各部署を巻き込んでプロジェクトを進めるのもよいでしょう。

小さく始める方法も

 なお、すべての生産スケジューラ導入が、ビッグバン的なプロジェクトの進め方になるわけではありません。目的に合わせて、小さくはじめて、どこに影響があるか、改善できそうか、波及効果を得られそうなところを探しながら、段階的に適用範囲を広げていくのが、最近の主流になっています。

 Asprovaのオプション機能であるSolverは、現状業務とのかかわりでも、注目に値します。Solverは、自ら反復改善しながら最適の計画を見つけます。計画精度を上げることで、段取りや在庫が減り、効率が改善します。その際、現状の業務を変えなくてもすむ場合も多いのです。


(了)


技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps