困ったこと35~マスタ構築が難しかった

2024.05.22A3:生産スケジューリングの悩み相談

 生産スケジューラAsprovaで計画を立てるには、製品、工程、設備、人員、原材料など多くのデータを準備して、入力しなくてはなりません。これら基礎になるデータのことを「マスタデータ」と呼びます。単にマスタと呼ぶこともあります。マスタデータの設定(マスタ構築)は、生産スケジューラ導入の鍵であり、ハードルともなります。業務とシステム理解の両方が求められるからです。しかしご心配なく。弊社はさまざまな手段で難題のクリアをお助けします。また経験豊富な販売パートナーも、支援を惜しみません。

小規模なデータから始める

 一番重要なことは、最初からすべてのデータを準備しようとしないことです。まず現状ある計画データを使って簡単なプロトタイプ(小規模な試行版)を作成します。そして、実現したい計画要件とのギャップを明確にして、そこを埋めるデータをそろえます。

 Asprovaのマスタデータ項目はデフォルトで8000以上あり、追加や拡張もできるので、すべてを理解することは至難の業です。主要な機能と主要なマスタデータは理解する必要がありますので、Asprovaの教育を受講してからプロトタイプを作成することをおすすめします。また短時間に導入したい場合、販売パートナーの支援を受けることもできます。

 Asprovaではマスタデータ構築のために3段階のプロトタイプを推奨しています。

 最初のプロトタイプは、主要な数品目の製品の製造プロセスと利用設備とその製造時間を製造BOM(部品表)に設定し、製品の製造オーダの数量と納期を登録します。それで計画は立案できます。その結果を評価して自分の想定とのギャップを洗い出します。そしてギャップを埋めるためのマスタデータを追加設定します。

よくある計画要件では、以下のようなマスタデータの追加設定が必要になります。

  • 計画期間を3か月にしたい
  • 構成部品の加工計画も立てたい
  • 工程間の時間制約がある
  • 利用設備、治具や作業者の制約がある
  • 製造する品目や仕様の変化による段取りがある
  • 休憩や休みをまたいで同一オーダの作業はしない

などです。業種や計画目的によりますが、一般に計画要件は100件以上になります。これらの計画要件が明確になれば、必要なマスタデータも明確になります。

 忘れていけないことは、計画サイクル全体の確認です。計画結果を製造現場にリリースし、製造実績をフィードバックし、新規オーダを追加して再計画するーーそんなプロセスを確認することです。実際に計画サイクルを回すことによって必要となるマスタデータもあるので、注意が必要です。

 ここまでが最初のプロトタイプになります。

2段階目のプロトタイプ

 最初のプロトタイプの結果に基づいて、計画対象の品目のマスタデータを準備してください。

 次のプロトタイプでは、そのデータを利用して、実際に近いオーダ数を登録して計画を立てます。結果を評価して自分の想定とのギャップを調整します。一般には計画パラメタの作成や調整になります。

 以下のような要件は計画パラメタで設定します。

  • フォワード、バックワード、複合計画したい
  • 特定オーダを優先して割付けたい
  • 特定の設備を優先して割付けたい
  • ネック工程を割付けてから他の工程を割付けたい

など、必要によりマスタデータの調整や追加が必要になることがあります。

またマスタやオーダや実績データを外部システムと連携をするには、データ入出力設定も必要になります。こちらは別記事にします。

最後のプロトタイプ

 最後のプロトタイプは、前のプロトタイプで設定したマスタデータと、実際のオーダを利用し、計画して確認することです。ここでもいくつかのマスタデータや計画パラメタの修正が必要になることがあります。

 プロトタイプは、実際に利用する計画担当者や関係者も参画して評価することが重要です。実際の運用や操作性を考慮すると、マスタデータの追加(部門コード、原価センタ、分類区分など)やユーザインターフェス(スタイル、レイアウト、ユーザメニューなど)などの設定も必要になります。

 最後によくある質問ですが、作業時間、段取り時間、歩留まりなどのデータ値の精度を上げないと計画できないか、ということです。結論としては、現状のデータや原価算出値から設定しても、あまり問題にならないと考えます。データの誤差は計画結果の誤差にはなりますが、計画結果と製造実績を比較することにより、その誤差が明確になるので都度マスタデータ値の修正していく方針も一案ではないでしょうか。

 生産スケジューラの導入は、計画結果を見ないと計画要件の気づきやそのよしあしはわからないので、プロトタイプを活用した導入を強く推奨します。

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(了)


技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps