システム導入を成功に導くアジャイル開発の有効性とは?~上村義孝
2022.10.26X1:アスプローバ社員インタビューアスプローバ社 コンサルタントインタビュー 上村義孝
アスプローバ社の経験豊富なコンサルタント、上村義孝(かみむら・よしたか)さんに、アジア諸国を念頭に、システム導入に関する注意点を聞きました。上村さんは1980年代、ベンチャーの旗手として知られたコスモエイティに新卒入社し、制御系のプログラミングに取り組みました。システムエンジニアや組み込み系ソフトウエアのプロジェクトマネジャーなどを経て、2006年アスプローバ入社。コンサルタント部長を務めます。海外事情に通じています。
目的と手段の履き違え
ー 落とし穴はどこにあるのでしょうか。
まず目的と手段を履き違えてしまうことです。目的が不明瞭だと、どこに向かっているかもわからず、ゴールには到達できません。手段からシステムを構築すると、目的が不明瞭になります。たとえば、高速スケジュール機能により、実績に合わせたリアルタイムなシステムを構築できたとします。それは半面、進捗が遅れるたびに自動的にスケジュールが再編され、納期遅れが大きくなるシステムにもなってしまいます。
納期遵守率を高めたいのであれば、スケジュールは変更せずに、遅れていることを示した方が効果的です。その上で納期遅れを解消できなければ、原因を追究して改善するべきです。無条件にリスケジュールすることが目的ではありません。
システムが何かをしてくれるのではなく、システムは使いこなすものであり、目的のためにどのように使いこなすかが重要なのです。
失敗や手戻りは「改善」だ
ー システム導入で失敗しない必勝法はありますか?
理想を追求し過ぎたり、要件定義に時間をかけ過ぎたりして、失敗する例は多いと思います。要件が膨らんだり、時間をかけたりするほどシステムに対する期待度は高まります。これは稟議上申のため、少しでも効果を上げたいという「対投資効果の呪縛」でしょう。ただし現実がそれにこたえられないと、印象は悪くなります。逆にシステム化できることが少なければ、事前の期待が下がります。「思ったよりいいじゃないか」ということで、プラスのギャップが大きくなれば、印象はよくなります。「ゲインロス効果」ですね。
また導入は少しでも早くできれば印象がよくなります。簡単に試せることが重要です。実際、試して見ないとわからないことも多く、失敗や手戻りをためらわない敷居の低いシステム導入を目指すといいと思います。失敗や手戻りは「改善」ととらえます。失敗は、そのまま終われば失敗ですが、改善を継続できれば成功となります。「失敗や手戻りの呪縛」を解くのです。Asprovaの導入でも、一度失敗して取り組み直し、成果を上げている事例があります。
アジャイル開発の利点
ー 導入するうえでの工夫は?
東南アジアではExcelの運用は定着しても、システムはなかなか定着しない傾向があります。システム導入はウォータフォール型で、最初にすべての要件を定義するため、それが日々の変化に対応できず、運用が回らなくなるからです。
こうした状況に対して、アジャイル開発が有効であると思います。小さな目標を立てて段階的に試しながら導入する方法です。改善も行えるので、システムが定着しやすくなります。また、改善とGoLive(本番稼働)を何回も繰り返すことで、ルーチンワークの運用も高められます。難易度の低いものから少しずつ進めていきます。小さな成功体験を積み重ねることは、スタッフのモチベーションを上げ、次につながります。ちょっとした成果でも「できた、かんぱーい!」というのがあったら、達成感で士気が上がります。
JETROの調査では、海外に進出した日系企業約500社のうち、DXの達成度が100%の企業は1%にも満たないですが、達成度25%であれば40%以上の企業で達成しています(下図)。この25%を目標とすればシステム導入の定着率を高められるでしょう。
このように、システム導入にはさまざまな呪縛や間違った習慣(常識)があり、客観的に判断できるように努めることが重要です。アジャイル開発の有利性は増しています。変化の激しい世の中で、高度経済成長期でもありません。状況の変化に応じて計画も変えなくては。そして私たちの意識も変えなくてはならないと思います。
ー 休日の過ごし方を教えてください。
スポーツが好きで、土日はテニス。自転車でコートに向かいます。往復で40㌔を走破。コートでは2時間、みっちり汗を流します。旅行も好きで、コロナ前は東南アジア出張が毎月ありました。タイとベトナムが気に入っています。プライベートの旅行では、フランスのニースを起点とした地中海クルージングが印象に残っています。荷物を運ぶ必要もないし、寝ている間に別のところに連れていってくれるから、なかなかいいものです。
コラム編集部
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