究極の汎用性を求めた結果辿りついた「アジャイル開発」とは~田中智宏社長に聞く
2022.11.07X1:アスプローバ社員インタビューアスプローバ社の社長、田中智宏(たなか・ともひろ)さんに、生産スケジューラと会社の現在の到達点、そして目指しているところを聞きました。後半はAsprovaの新たな開発方針である「アジャイル開発」についてです。田中さんは、2001年に新卒入社し、2019年、創業者高橋邦芳さんの後を受けて社長に就任。Asprovaのオプション機能であるSolverを世に出し、これまでのスケジューラにないアプローチで、大きな反響を呼んでいます。
究極の汎用性を求めていたが
ー スケジューラAsprovaが直面する課題とは、どんなものでしょう
弊社は常に、生産スケジューラとして求められていることは何か、そしてその中で弊社ができることは何かを考えて、開発していました。そして、究極的に汎用的な生産スケジューラを開発すれば、多くのお客さまが喜ぶと思っているところがありました。どんな生産工程にも対応できるようなスケジューリングロジックに基づく製品です。
一方で、それに反する要望には消極的になる傾向がありました。たとえば、事前に収集した情報だけでは汎用的な機能として実現できそうにない複雑な課題です。明確な将来性や論理的な裏付けがない課題もそうです。これらに対しては、強い要望を受けても、容易に手を出さない思考になってしまうのです。
生産スケジューラのベースを構築している時期はそれでよかったと思います。多くのお客さまが望む実現が容易な機能を優先して開発し、汎用的に提供できていましたから。しかし、究極的に汎用的な生産スケジューラは、逆に使いづらいソフトウェアにもなり得ます。
今以上にお客さまにフィットし、価値を感じていただけるソフトウェアにするために、先の見通しが立っていなくても、やってみて初めて分かる開発に積極的に手を出す思考に変えることにしました。それは会長の高橋が持ち込んだアジャイル開発でした。
「知らない」という原点
ー どんな方法なのでしょう
まず最小限の機能で開発してお客さまに試していただき、少しづつ改善していく手法です。それは、30年近く生産スケジューラを開発していても、私たちはまだほとんど生産計画について何も知らない、という原点に立ち返ることだったと思います。「知っている、わかっている」と思ってしまうと、最良の生産スケジューラはどういう機能を持つべきかを、自分たちで考えてしまいます。そしてそれを考え出せるのが本当に優れた人だ、とさえ思ってしまいます。
しかし、その考え方は可能性を狭めるようです。そして生産スケジューラのような業務ソフトウェアは、たかが一人や二人がすべてを理解して設計できるようなものではなさそうだということに、改めて気づきました。これまでがいささか傲慢な考えだったかもしれません。お客さまにとってもそうです。お客さまが、自分たちのやりたいことをすべて理解したり、説明できたりするものでもありません。
したがって、開発者とお客さまが一緒になって作るのが良さそうです。弊社の場合はそこに販売パートナーさんも加わります。そしてそのためには、「これをやったらその先はどうなるのだろう?」という不安はとりあえずおいておき「まずはできるところまでやってみよう」という精神で取り組み始めます。そこでわかったことを新たな土台にして、次のステップに進むことになります。
ー 大きな転換だと感じます。社内に戸惑いや疑問の声はありませんでしたか
おおむね、好意的でした。「アジャイル開発は失敗する」という意見を引用してきた人がいましたが、おそらく知っている情報を反射的に提供しただけだと思います。
ー これからの見通しはどうでしょう
私は、アジャイル開発はとても泥臭い開発手法だと思います。自分たちで正解がわからないので「これで良いか教えてください」と人に聞きながら開発するのですから。しかし、世の中を見渡すと結局この方法しかなさそうだ、というのが今のところの結論です。以前の考え方を振り返ってみると、自分たちは楽をしたがっていたのだな、とも思えます。
今後しばらくは、このアジャイル開発が得意なエンジニアを積極的に集めて開発を進めてみる方針です。
コラム編集部
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