高速化技術で生産スケジューリングを20%高速化~シャーマン・リン

2022.11.06X1:アスプローバ社員インタビュー

 アスプローバ社のプログラマー、シャーマン・リン(Lim Hao Jie Sherman)さんに、開発の話を聞きました。シャーマンさんは、シンガポールの出身で、2017年入社し、5年目になります。主に生産スケジューラAsprovaの改善を担当しています。プログラム高速化の技術に優れており、英語、中国語、日本語など語学にも堪能です。

語学スキルも生きる

ー 今のお仕事を聞かせてください

 Asprova製品の開発と、開発チームの管理、たとえば入社したばかりプログラマーの案内などをしています。語学スキルを生かして、翻訳や国内海外のユーザーサポートもやっています。チーム内の英語スタッフが日本語を理解できない場面では、お手伝いをしています。

 力を入れているのは製品の高速化です。Asprovaは15年前以上に作られたソフトウエアです。処理が遅い部分を解析し、アルゴリズムとメモリーの最適化をして、同じ処理でも20%以上速度を向上させることができました。

ー 高速化の内容について教えてください

 アルゴリズムの最適化の一つは、計算の無駄を省くことです。Asprovaでは式をたくさん使います。条件Aと条件Bがあり、条件Aが真であれば計算Aを実行し、条件Bが偽であれば計算Bを実行しない、どちらの条件も真であれば…など、いろいろ設定してあります。計算の必要性を検討し、必要ない場合はやらないようにする、といったことです。

 またメモリー処理の最適化は、データを置く場所を調整することです。データはコンピュータの中で複数の場所に書き込まれているので、それらを位置的に近い場所に置いておくだけで計算が速くなるのです。

ー プログラムを書き換えた場合、うまく動かなくなるなどの問題は起きませんか

 それはあり得ます。とくにメモリーの最適化の場合です。もともとメモリーの管理はOSに任せているので、そこを操作するとバグが出てくる場合があります。入念にテストをして、正しく動くかどうか確認します。

ー プログラミングはどこで習得しましたか

 DigiPen(デジペン)工科大学という米国本部の教育機関のシンガポールキャンパスで、プログラミングを学びました。そこは米国任天堂と密接な関係があって、「ガチ」で根本的なところから教えます。数学的な基礎から、CPUやメモリーの構造、3D描画の方法まで。そこのオブジェクトシミュレーションコースを修了し、シンガポールのゲーム企業で1年ほど経験を積んだ後、日本で仕事をしたかったので、アスプローバ社に就職しました。日本語も学生時代から学んでいました。

 高速化技術はゲームソフトを開発していたときから得意でした。ゲームはたくさんの物体を同時に動かさなくてはならず、どうやったら早くうまくいくかがとても重要です。

まもなくバージョンアップ

ー Asprovaは近く、大規模なバージョンアップをするそうですね

 新しいバージョンでは、UIを変更します。見た目だけでなく、20年前のソースコードを一部書き換えています。すでにβ版のテストを始めており、年内に公開したいと考えています。結構大きな変化があります。10年先を見据えた開発をしています。これからもAsprovaは、生きている製品として進化し続けます。

ー 日本の印象はいかがですか

 東京に住んで5年になり、様子がわかってくると、シンガポールもいいところだったなあ、と思うようになりました。人が多くて、100を超えるモールがあります。人が集まるところが都市の中に本当にたくさんあるのです。東京は別として、日本の地方都市は、人が集まる場所が1か所、2か所くらいしかないようです。

 休みの時には、ゲームを作ったり、ヴァーチャル・リアリティ(VR)を試したりしています。メタバースも面白いですが、話題先行でバブル気味かもしれません。だから仕事としてやるよりも、趣味ですね。

技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps