受注生産・見込み生産の基礎知識&生産計画の立て方まとめ

2021.01.14A0 生産管理
生産計画の立て方

生産現場における受注から生産までのプロセスには、「受注生産」と「見込み生産」の2つがあります。受注生産のことを「Make to Order」、見込み生産のことを「Make to Stock」と英語では言いますが、英語のほうが直接的な表現であるため直感的に意味を理解しやすいでしょう。

製品を作るタイミングが受注より前か、それとも後かで名前が違うだけでなく、それぞれにメリットやデメリットが存在し生産計画も異なります。生産計画に携わる方は、両者の違いをしっかりと把握しておきましょう。

今回は、受注生産と見込み生産について、基礎知識や両者の違い、メリットやそれぞれの生産計画の立て方をまとめました。2つの生産形態への理解を深めて、ぜひ最適な生産計画の立案や業務改善にお役立てください。

【目次】
■受注生産とは
・受注生産のメリット
・受注生産のデメリット
■見込み生産とは
・見込み生産のメリット
・見込み生産のデメリット
■受注生産と見込み生産の違い
■生産計画の立て方
・生産計画の立て方:受注生産
・生産計画の立て方:見込み生産
■生産計画を最適化する方法
■生産スケジューラの特徴
・生産スケジューラ「Asprova APS」
■おわりに

受注生産とは

受注生産とは、受注してから製品の生産に取り掛かる生産形態です。受注するまでは生産しないため、製品の在庫を抱えずに済みます。受注生産を採用するのは、少量しか作らない製品や顧客1人ひとりに合った製品を作るケースが一般的です。特に価格帯が高めの商品を扱う家具や寝具、造船などの業界で採用される傾向にあります。また、受注生産は、その中でもさらに2つの種類に分かれます。「繰り返し受注生産」と、「個別受注生産」の2つです。

「繰り返し受注生産」は、既存仕様に基づいて製品を作る方式の受注生産です。繰り返し受注生産では既に仕様が決まっているので、開発リードタイムが発生しません。 「個別受注生産」は顧客からの受注に基づいて開発・設計を始める、製品を生産します。製品の仕様は受注の度に異なります。

受注生産のメリット

受注生産は、顧客やクライアントからのニーズに直に応えられる方法です。それによって、以下のようなメリットが生まれます。

適切な在庫を維持できる

受注生産は、顧客から注文があった分だけ製品を生産すれば良い方法です。生産のプロセス上、在庫に余りが出たとしても限定的で、過剰在庫になることはほとんどありません。キャンセルの発生やロットの関係で、ある程度の在庫が出る場面はありますが、最小限にとどめることができます。そのため、在庫の保管・管理のコストを維持・安定させながら売上につなげる経営が可能です。

製品一つひとつに丁寧な対応ができる

受注生産では、顧客からの注文があった後に生産を始めるため、製品を丁寧に生産することができるでしょう。そのため、品質にバラつきが起きにくく、質の良い製品を安定して供給できます。高品質な製品で、競合他社との差別化を図りたい際に採用されるケースが多いのもこの理由からです。また、顧客の希望を直接ヒアリングする、製品一つひとつのカスタマイズに対応するといったこともできるため、顧客満足度が向上しやすい点も挙げられます。

受注生産のデメリット

受注生産は、少量の製品をオーダーメイドで作る際には向いていますが、その反面で生じるデメリットも存在します。

リードタイムが長くなる

特定の顧客に応じて生産を行う受注生産では、どうしても製造から納品までのリードタイムが長くなります。このときのリードタイムとは、製造側ではなく「顧客から見たリードタイム」です。

受注生産では、製品の生産に必要なリソースが確保されてはじめて生産が始まるため、生産から納品までのリードタイムは一定だったとしても、顧客側から見たリードタイムはそれ以上となります。

完成品を確認できない

注文時点で、あらかじめ製品の「完成品」を確認できないプロセス上の特性が、コスト高を招く場合があります。

受注生産では、どのような製品が仕上がるのか、顧客が現物を見たり手にしたりすることはできません。そのため、完成後に「イメージしていたものと違う」といったクレームを受ける恐れがあるのです。

場合によっては再設計や再生産が必要なケースもあり、結果として生産コストが増大する例もあります。再設計や部材の再発注を招かないためにも、顧客との綿密なコミュニケーションや丁寧なヒアリング、設計段階でのチェックといった対策が必要です。

見込み生産とは

受注生産

見込み生産とは、製品が売れる量を予測し、その予測に基づいた販売計画を立てて、一定量の製品を作っておく生産形態です。

受注生産と比べて短い期間で生産できるため、より大量の製品を作ることができます。 同じ製品を大量生産する日用品や加工食品、既製服などの生産に向いており、市場に大量に出回っている製品の多くが、この見込み生産で作られています。

リードタイムを短縮できる

顧客からの受注よりも前に完成した製品をストックしている見込み生産では、顧客から受注したら出荷するだけで納品が完了します。

そのため、受注から製品を発送するまでのリードタイムが非常に短くなるのが利点です。

たとえ、製品を作り終えていない状態だったとしても、原材料や部材の調達、工場設備の準備などが済んでいる場合がほとんどなので、短期間での納品が叶います。

利幅が大きい

大量に作っても売れる見込みがある製品であれば、見込み生産でたくさん製造して在庫をストックしておけます。また、大量受注によって単価が抑えられるので、受注生産よりも利益幅が大きくなりやすいのがメリットです。売れ筋の製品なら売れ残りも少なくなるので、在庫管理のコストも小さくなるでしょう。 ただし、あくまでも「市場ニーズの予測が正しく行えた」というのが前提です。精度の高い生産計画を立てることができれば、競合他社よりも優位に立てる可能性があります。

見込み生産のデメリット

市場ニーズを読み誤ることで、見込み生産には次のようなデメリットが生じるケースもあります。

在庫を抱える危険性

見込み生産は、市場を予測して「これくらいの需要があるだろう」と、受注前にある一定量の製品を作っておく方法です。そのため、予測を大きく外れて受注に至らないと、大量の在庫を抱えてしまうことになります。また、新製品を販売する際、残った在庫分が旧式となり、市場に出ないまま残ってしまう危険性もあります。

納期設定に無理が生じる

汎用性が高い製品作りに向いている見込み生産は、競合他社でも近い条件で生産が可能です。そのため、競合よりも先に受注を取ろうと、無理な納期設定をした場合、短納期を迫られる現場では作業に負荷がかかり、製品の品質が低下してしまう可能性があります。納期設定が短くても、一定の品質を維持することが求められます。

受注生産と見込み生産の違い

下記は、受注生産と見込み生産の違いを表にまとめたものです。

生産量製品の特長納期在庫LT
受注生産少ない顧客の注文に合わせた製品余裕がある残りにくい長い
見込み生産多い需要が高く汎用性のある製品短納期大量に抱えるリスク短い

受注生産は、顧客の注文に合わせた対応をでき、納期に余裕がある反面、リードタイムが長くなる傾向にあります。一方、見込み生産は、汎用性のある製品を大量生産できるためリードタイムが比較的に短くできる反面、需要を見誤ると在庫や売れ残りが発生し、管理や処分にコストがかかる恐れがあります。メリットとデメリットを比較したうえで自社の製品がどちらの生産形態に適しているかを決め、生産計画をいかに最適化できるかが重要です。

生産スケジューラを使うと、受注生産、見込み生産それぞれの現場管理を円滑化できるようになります。リードタイムの削減やリスクへの柔軟な対応、競争力の強化を目指している担当者の方は、生産スケジューラの導入を視野に入れてみてはいかがでしょうか。

以下のページでは、生産スケジューラについて詳しく解説しています。生産スケジューラ導入による効果やメリットについて、詳しく知りたいという方はご覧ください。

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生産計画の立て方

見込み生産

受注生産と見込み生産、どちらの生産形態においてもデメリットがありますし、企業や現場それぞれに課題が存在します。考えられるリスクや危険性を事前に把握し、なるべく回避するためにも、過去の実績やデータを参考にしながら生産計画を最適化していくことが大切です。また、計画に変更やトラブルが生じた際、柔軟に対応する環境を用意できているかがスムーズな改善のポイントとなります。

ここからは、それぞれの生産計画の立て方について解説します。

生産計画の立て方:受注生産

受注生産の生産計画では、まず受注予測を行います。受注予測は過去の実績や販売データから参考にします。製品を製造するための原材料や部材の中には、手配や調達に時間がかかるものもあります。生産計画は、それらの調達期間も考慮したうえで立案していきましょう。

材料に「製造品」が含まれる製品では、特に調達のリードタイムに注意が必要です。リードタイムの予測を誤ってしまうと納期遅れのリスクが生じるだけでなく、生産計画全体がズレてしまいかねません。予測するリードタイムにある程度の余裕(バッファ)を持たせる、仕入先のリードタイムをこまめに確認する、場合によっては改善を求めるなど、計画を見直しながら進めていくことが大切です。

生産計画の立て方:見込み生産

見込み生産の生産計画では、精度の高い販売予測ができるかがポイントです。販売予測の精度が高ければ過剰在庫を減らせますし、在庫が足りないという状況も防ぐことができます。

販売予測の精度を高めるには、市場の動向や顧客ニーズの把握が重要です。市場調査やヒアリング、リサーチなどは入念に行いましょう。販売予測を月別の販売計画に反映させて生産計画を立てていきます。ただし、見込み生産はあくまでも予測や見込みであり、想定どおりに受注できるとは限りません。 受注を逃さないためにも、仕様変更や納期の変更依頼、飛び込み依頼など、顧客からの要望に柔軟に対応できる姿勢を示せるかが重要です。さまざまな依頼に迅速に対応できると、顧客満足度が向上し、市場での競争優位性の獲得につながります。

生産計画を最適化する方法

進捗管理や部材の調達状況、在庫把握、人材管理など、生産計画をスムーズに進めるためには多くの業務や工程における情報管理がポイントとなります。このような情報を一元的に管理し、効率化できるのが生産管理システムです。

生産管理システムを導入しているのに「あまり収益が高まらない」、「これ以上業務効率が改善しない」といった場合は、生産計画に把握できていない問題点があることが考えられます。

使用しているツールを見直す、「4M:Man(人)・Machine(機械)・Material(材料)・Method(方法)」の管理で部分的な見直しを実行するなど、計画をこまめに修正し最適化していくことが大切です。

生産管理システムには業種や生産形態によって相性があり、必要な機能も異なります。システムを導入しているのに上手な生産計画が立案できないという場合は、今使っているツールが本当に自社に適しているかを、改めて見直してみる必要があります。

生産スケジューラの特徴

スムーズでスピーディーに生産計画を立案したいなら、専門ソフトの導入が効果的です。

Excelなどの表計算ソフトでスケジューリングするのも可能ではありますが、変更が生じた際に柔軟に対応しにくい、リアルタイムでの把握に難点がある、属人化リスクがついてまわるなど、これまでの課題をぬぐえません。

生産計画立案ソフト(生産スケジューラ)なら変更にもすぐに対応できるうえ、現場のリアルタイムな状況の正確な把握が可能です。ただし、生産スケジューリングができるソフトの中には、受注形態に合わせたソフトもあれば業種ごとに特化したソフト、自社業務に合うようにカスタマイズをしてもらえるソフトなど、さまざまなものが販売されています。 自社の生産計画に求められる機能が搭載された、最適なソフトを選びましょう。現場管理を円滑化したい、生産計画を最適化したい、生産スケジューラについてさらに詳しく知りたいという方は以下のページをご覧ください。

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生産スケジューラ「Asprova APS」

アスプローバ株式会社が提供する生産スケジューラ「Asprova APS」は、生産計画の自動立案はもちろん、固定リードタイムでのスケジューリングや設備の生産能力を加味したスケジューリングなど、多面的な計画立案ができるソフトです。材料や製品の在庫を適切に保ちつつ、需要の変化にも迅速に対応できるように設計されています。

多品種・多工程に対応可能で、調達から生産、配送まですべての現場に求められる機能を網羅。業種ごとの最適な使い方や導入ノウハウなど、わからないことがあればいつでも聞けるサポート体制も整えています。

おわりに

受注生産、見込み生産のどちらにもメリットやデメリットがあり、リスクや課題が存在します。リスクを事前に予測して回避する、想定外の事態には柔軟で迅速な対応ができるよう、精度の高い生産計画を立てられるかがポイントです。

作業工程や納期に無理やムダがなく、円滑な現場環境を作るためには、現場の状況をリアルタイムに、且つ正確に把握しながら、こまめに調整を図る必要があります。スケジュールの精度を高め、柔軟性のある計画を立案したいなら、過去の実績はもちろん、予測データを含めた計画立案がスピーディーにできる生産スケジューラの導入が効果的です。

生産スケジューラは、業種や生産形態、管理方法によって適したシステムが異なります。システムの導入を検討する際には、課題を解決できるかはもちろん、現場環境に合わせた機能が搭載されているかを含めて選ぶようにしましょう。

技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps