極秘プロジェクト「生産スケジューリングの最適化Solver」~伊東勇登の熱き挑戦
2022.09.14S0: Solverオプション(最適化) , X1:アスプローバ社員インタビューアスプローバ社 プログラマーインタビュー 伊東勇登
アスプローバのソフトウエアを開発しているプログラマーに、スケジューラーに革命を起こしつつある「Solver」のことを聞きました。第1号として登場するのは、伊東勇登(いとうはやと)さん。東京大学情報理工学系研究科の修士課程を修了後、2020年に新卒入社し、27歳になったばかり。プログラミングにとどまらず、営業先と直接やりとりして、開発に役立てています。音楽好きで、ヴァーチャルリアリティ(VR)やメタバースにも関心を持っているそうです。
極秘プロジェクトSolver
ー 入社して最初の仕事がSolverだったのですか
大学院時代に数理最適化やプログラミングにのめりこんで、研究分野は違うものの、生産スケジューリング問題に強い興味を持ち、この仕事を始めました。入社当初からSolver開発の仕事に従事することになり、実際に手を動かしてプログラムを書いていました。当社には私よりもはるかに優秀なプログラマーが何人も在籍しており、一緒に仕事をすることで経験を積んでいきました。
Solverは、私が入社する少し前から「極秘プロジェクト」として始まったのです。2020年の暮れから21年の年明けに、同期入社のプログラマー小島さんを中心に、S1(平準化生産)の原形ができました。S3(段取りと納期の両立)は、林(リン)さんという先輩と私が主に担当しました。2021年の7月か8月にほぼ原形ができました。
Solverで鍵になるのは「ぺナルティ」という言葉です。理想の状態から離れている程度をペナルティという数値で示します。その数値が小さくなるように改善していくのです。専門用語でいう「コスト関数」と同じことなのですが、多くの人にわかりやすい言葉として、ペナルティという表現にしました。導入にあたっては、初めはビジネスパートナー(代理店)に親密な取引先を選んでもらって、パイロットユーザーとして協力をいただき、具体的な開発を始めました。
小島さんはプログラミングコンテストの入賞常連で、コンテストでのアプローチを、スケジューラー開発に導入し、S1を作り上げました。少しでもいい計画をなるべく早く作るという考え方です。また林さんは、1日で1000行以上のプログラムを書いてしまうこともよくあり、速いだけでなく中身も高度かつ正確で、驚かされます。
納期にもいろいろあって…
ー 難しいところ、あるいは今後の課題はどんな点でしょう
私は生産現場の方から話を聞いて、他のプログラマーにつなぐ役目もするようになりました。現場は一つ一つ全く違います。たとえばバスタブの製造ラインでは、金型が一個しかなく、そこがボトルネックになっていました。自動車部品の会社では、工程の一部を外注に出していて、そことのバランスが大事だといわれました。すべて同じようにはいきません。
現場の人に何が困っているかよく聞き、ニーズを正しくとらえることが大事です。スケジューラーを動かすためには、工場のあらゆる要素とペナルティを数値化する必要があります。中にはデータがあっても、そのデータ通りだと納期にはどうやっても間に合わないことがあります。「納期が厳しいですけど、これで合ってますか」と聞いてみると、実はシステム上に登録された「守りたい納期」と、後工程や客先に出荷しないといけない「本当の納期」が異なっていました。守りたい納期に間に合わない時は、次善の策として本当の納期を遵守しているそうです。
こういうケースでは、単に本当の納期にデータを修正するだけでは不十分で、守りたい納期をできるだけ実現しながら、本当の納期を守るために、ペナルティをどうしたらいいか、しっかり検討する必要があります。
生産スケジューリング問題は、学術的にも実用的にも、まだまだ発展途上の分野です。さらに、生産スケジュールには画一的な評価がなく、「理想的なスケジュール」というのはお客様ごとに異なります。例えば、あるお客さまにとっては非常によいと評価いただけるスケジュールであっても、別のお客さまからすると全くダメだ、というケースも往々にしてあります。お客さまとディスカッションしながら、抱える問題の本質をとらえ、それを根本から解決していく必要があります。
問題の本質をとらえ根本解決
ー 仕事を離れたところで趣味はありますか
ピアノをやっていたので、クラシック系の音楽が好き。大学院でも音響関係の数理的な研究をしていました。VTuberやVR、メタバースにも関心があります。これからセミナーもVRやメタバースを活用して、うまくできるかもしれません。臨場感があり、対面しているように親密なやりとりができる。そういうことは今のウェブ会議のシステムが苦手としていますから。
お客さまと本音で話し合いながら、問題の本質をとらえ、根本から解決する方法をご提案し、優秀なプログラマーと一緒に実際に1歩1歩改良していく。そしてそのスケジュール結果に対してお客さまから喜びの声、ときには厳しい評価をいただく。今はそんな仕事が中心となっています。これが楽しく、やりがいを感じています。これからまだまだスケジューラーは進歩します。BtoBであっても横のつながりがあるから、いいものを作れば広まっていくのです。多くの人に役立つものを作っていきたいですね。
コラム編集部
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