最適化AIとスケジューラ 1

2024.11.19S01:組立ラインの投入順序を最適化したい

 生成AIの爆発的なブームで、AIは一気にビジネスの核心事項となりました。その生成AIには将来の大きな可能性の半面、現在の信頼度には不十分な点があります。一方、信頼度が実用レベルに達し、経営の意思決定にも役立つAIがあります。それが「最適化AI」です。物流ルートや金融ポートフォリオ、エネルギー使用などの最適化に活用されています。工場の生産計画の自動化にも、画期的な進歩をもたらし、ここ2~3年で、ルールベースからAIへと、大きな変化が起きています。最適化AIと生産計画について、数回にわたって説明します。

難問「平準化」を解く

 生産計画のうち、最初に実用化された「組立ラインの投入順序計画」について紹介します。これは主に自動車部品組立など、ディスクリート系の工場の最終組立ラインの生産順序を決定します。

 こうした工場では、部品、半製品がベルトコンベアに載せられて複数の作業区を流れることによって、徐々に製品ができ上がっていきます。その過程で大きな課題は、生産の平準化です。特定の品目の生産ばかりに偏ると、生産が不可能になったり、作業効率が落ちたりします。すべての作業区がベルトコンベア上でつながっているため、特定の作業区の負荷が高い状態が続くと停止の原因にもなりますし、部品調達が間に合わなくなることがあります。また、サイズの大きな製品が連続して流れると、接触するなどの干渉リスクがあります。

 したがって全体的に「バランスよく」生産を行う必要があります。「バランス」というのは大きさ、作業負荷、部品在庫、完成品在庫……と多岐にわたります。それらのすべてを満たす計画を作りたいところです。計画担当者は、Excelと3時間にらめっこして計画を立案しており、「しんどい」、「気が張る」とこぼしています。

手動でもコンピュータでも無理

 属性が、たとえば「大きさ」という1種類だけであれば、人手で行うことができるでしょう。属性が2種類以上になると、人手での計画立案は難しくなります。実際には、40種類以上の属性を持つ1000個以上のオーダを並び替える場合もあるのです。どこかをうまく成立させると、別の場所がおかしくなって、破綻してしまうことがよくあります。

 これは「NP困難問題」といって、コンピュータが解こうとすると猛烈に計算に時間がかかります。その中でも難しい部類に入ります。生産計画専用のソフトウェアであるスケジューラは、この課題を苦手にしています。

 ここで登場するのが「最適化AI」です。特定の目標に向かって、変数を調整し、制約条件の中で、最も効率的な解決策を見つけます。

 スケジューラのトップ企業であるアスプローバ社は、生産現場からの要望を受け、2020年から、生産工程の平準化、しかも複数の属性の同時平準化という問題に取り組み始めました。前述したように、従来の決定的アルゴリズムでは難しい課題です。そこでAIを採用することにより、何十万回もの反復改善によって、最適な結果が得られるよう試みました。それが開発者も驚くほど、短期間でうまくいったのです。

 具体的にどのように考え、どう実用に持ち込んだのかは、次回ご紹介します。


(了)


技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps