熱処理-日本刀を生み出した「魔力」
2022.04.11S02:炉や槽の詰込みを最適化したい熱処理で強くする
ゲーム「刀剣乱舞」が女性に受け、刀剣ブームが起きました。各地で刀剣女子を集めようと日本刀をメインに据えた展覧会が開かれ、怜悧な輝きを間近で見た人も多いでしょう。切れ味と姿の美しさで世界的に人気のある日本刀。その秘密は「熱処理」にあります。
日本刀の作られ方はこうです。素材となる玉鋼(たまはがね)の塊を打ち延ばし(鍛錬)、硬い皮鉄と、比較的軟らかい心鉄を組み合わせて、刀身を作ります。そこから焼入れの工程に入ります。炉で800度に熱し、その後水に入れて急冷すると、玉鋼が伸縮を起こし、表面に刃文や反りという独特の美が生まれます。内部ではマルテンサイトという硬い組織ができ、切れ味や強度が向上します。
マルテンサイトが発見されたのは1891年ですが、日本の刀匠たちは、ずっと前から経験的に、温度変化によって結晶構造が変わる現象を知り、巧みに利用していたのです。
熱処理工程の種類
昔も今も、熱処理の主な対象は、もっとも平凡な金属である鉄です。硬くする「焼入れ」のほか、加工しやすくする「焼なまし」、組織を均一にする「焼きならし」などがあります。鉄自体はもともと軟らかく、さびやすい金属ですが、炭素を結合させた炭素鋼(普通鋼といわれます)に熱処理を施すことで、曲げ強さ、引っ張り強さ、耐久性などが付加され、工具や自動車部品、各種機械に用いられます。
焼入れにも各種の方法があります。たとえばギアやシャフトなど、表面を強くして、耐摩耗性をつけたい時に用いる「浸炭」。これは表面に炭素を多く含ませるために、焼き入れを2回、異なった温度で行います。また「高周波焼入れ」は、コイルを間近に置いて、高周波電流を流すことで加熱し、短時間で表面を硬くします。真空炉を使い、鋼材を真空状態で加熱した後、窒素ガスなどで急冷する「真空焼入れ」は、省エネ効果が高いことから、普及が進んでいます。
熱処理は、隠れている材料の力を引き出す奥深い技術です。そして700年前の正宗の名刀が再現できないように、解明されていない事象もあります。また熱処理の作業自体は単純であっても、工程の設計は易しくありません。炉に入れる部品の形状や大きさに合わせた工夫が必要で、温度管理、ひずみ対策なども大事です。工場で効率的な生産に結び付けるにはどうすればいいのか、次回以降で紹介したいと思います。
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コラム編集部
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