注文の変動に即応~欠品せず在庫を最小化する生産計画とは~笠原康典

2022.08.31S04:欠品せずに在庫を最小化したい , X1:アスプローバ社員インタビュー

アスプローバ社 コンサルタントに聞く④ 笠原康典

アスプローバのシニアコンサルタント笠原康典(かさはら・やすのり)さんに、Asprovaのオプション機能「Solver」で、欠品せずに在庫を最小化する方法を聞きました。変動する注文に、いかに機敏に対応し利益をあげていくかは、どの生産現場にも共通する課題。その解決の助けになるのが「欠品せずに在庫を最小化するスケジューリング~S4」です。

ー S4の対象は、どんな業種ですか

 サプライチェーンを構成する部品メーカーです。受注形態は、繰り返し受注生産、あるいは見込み生産になります。取引先から一定期間は同じ品目を作るような注文があり、それを指定された納入予定日に、作っては納品、作っては納品を繰り返しています。

 取引先と部品メーカーは、あらかじめ繰り返し作る品目の仕様(図面)を合意(契約)します。売買単価も決めます。基本的に一品もの(特注品)とか、オーダごとに寸法を変えてほしいとかの要求はありません。

 よって、契約が成立すれば、部品メーカーは、取引先からの注文を予測して事前にバンバン生産することも、在庫をドカンと作り置きすることも可能です。

欠品をなくそうとすると在庫が増える

ー 見込み生産の問題とは

 作ったからといって、取引先は全部引き取ってくれません。引き取る数量と引き取る納期は、取引先が決めます。部品メーカーは、取引先からの注文が確定した分だけ製造したいのです。取引先からの注文は、引き取る納期の1~2週間前に確定します。何を(納入する品目)、いくつ(納入する数量)、何時までに(納入する納期)の3点が肝心です。

 確定注文は納期厳守であり、欠品は許されません。契約違反となり、将来の注文が得られなくなるかもしれません。注文が確定してから作っていたのでは、製造リードタイムが2週間以上かかるため、間に合いません。部品メーカーは、絶対に欠品しないように、見込みで生産して、在庫を持つことになります。見込みが外れると、欠品または過剰在庫になります。

ー どんな対策があるのでしょうか。

 確定注文に先立って、取引先から来るオフィシャルな「見込み」が「内示」になります。部品メーカーの生産計画の立て方は、次のようです。

  1. 手持ちの在庫(Inventory)に、取引先からの確定注文と内示(Sales)を引当してみて、足りなくなる日を求める。
  2. 足りなくなる日までに欠品しないように生産(production)する。

 このやり方を「PSI計画」といっています。PSIとは、production、Sales、Inventoryの頭文字です。日本語では、「生販在計画」(生産、販売、在庫) です。PSI計画の基本は、「必要なときに必要なモノを必要な数だけ生産する」こと。多くの場合、これを表計算ソフト(エクセル)でやっています。

 しかしこれが大変です! 今は自社だけを中心にして語っていますが、実際には、サプライチェーンでつながっているため、自社が担当する工程の前は、前工程を担当する別のメーカーがあり、自社製品の先には、後工程を担当する別のメーカーがあります。サプライチェーンとは、PSI-PSI-PSI・・・が連鎖している状態なのです。

バランスのよい工程を立案

ー いったいどうすれば

 欠品、遅れは、自社だけに留まらずそのままサプライチェーン全体に影響してしまいます。サプライチェーンからの納期は絶対厳守で、欠品ゼロは絶対条件です。そんなサプライチェーンの中から、はじき出されることなく生き残っていくためには、需要に合わせて「欠品せず在庫を最小化したい」=「必要なときに必要なものを欠品せず且つ過剰に余らない数の在庫だけ持ちたい」になります。

 要するに、需要と供給のバランスをとって、サプライチェーンのネック工程にならないようにすればよいわけです。

 一瞬でモノを作ることはできませんし、効率よく製造するためには、工程負荷や段取り効率、品目替えなど製造の都合も考慮しなければいけません。

ー そこでSolverのS4が登場するのですね

 今回のS4は、それら製造都合を加味して、現在から将来にわたって、欠品せず過剰在庫にならない、またサプライチェーンの中で悪目立ちしない理想的なPSI計画を瞬時に立案するソリューションになります。

 Solverは、数10万回から100万回の試行を、わずか数秒から数10秒の間にやってしまいます。反復改善によって、最善の生産計画が得られます。セミナーで示した実例によると、受注順で生産した場合5ヶ月の間に、43804個の欠品が生じていたのが、Solverでは、20万回の試行を経て、欠品ゼロで段取り回数も5分の1くらいですむ投入順序を導き出すことができました。

ー Solverもいくつか種類があり、S3とS4は似ているように感じますが、その違いは

 S3は、段取りを少なくしながら納期遅れを防ぐという狙いです。在庫を考慮しない受注生産型に対応しています。車で言えば特殊仕様車とか高級車とかの生産ラインです。一方S4は、在庫を持ちながら見込み生産するラインであり、多品種変量生産型です。そうしたラインは海外に持っていく傾向にあるのですが、まだまだ日本国内にもたくさんあります。

 私は、追い込まれている生産現場を助けたい、という気持ちでやっています。多くの現場が、必死でエクセルを使って複雑な方法で生産計画を立てています。ぜひSolverの力を活用してほしい。年間30億円から50億円の売上がある企業であれば、試してみる価値があると思います。

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技術革新や予測不能な外的要因に迅速に対応できるよう製造業務においては、より一層生産プロセス全体の改善と生産効率向上が求められています。 データやデジタル技術を活用し、生産リードタイム短縮や在庫・コスト削減などを実現する製造現場におけるDX推進の一つとして、生産スケジューラの導入がカギとなります。 次のページでは、生産スケジューラ導入によって具体的にどのような業務改善が実現したのか導入企業の事例もご紹介しています。ぜひご参考にしてください。 img_banner_aps
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