運用のしやすさを求めて~AJS 市川政伸さんに聞く
2024.05.22X2:販売パートナーインタビュー旭化成のシステム部門を発祥とするAJS株式会社のベテラン技術者市川政伸さんに、Asprova導入のお話を聞きました。40年以上、生産系システムの開発・保守を担当し、勘所を熟知しています。今後の生産計画が進む方向についても示唆を得ることができました。
10製品、一挙にAsprova導入
ー これまでの経歴について教えてください
1982年に当時の旭ダウ(現旭化成)に入社してから、42年間情報システム部門に所属しています。部門が独立してAJSとなり、現在はTISインテックグループの傘下です。旭化成様との関連は今も密接で、私も同社の鈴鹿製造所(三重県)に出勤しています。
生産スケジューラAsprovaとの出会いは、2007~8年ころ、導入検討メンバーとなった時です。この時は、工程や計画の複雑さから、Asprovaでの対応が難しいと判断され、導入に至りませんでした。
実際にAsprovaを導入したのは、2010年。旭化成鈴鹿製造所が最初になりました。そのころ旭化成様では、基幹システムであるSAPを全社統合するプロジェクトが立ち上がりました。その一環として、鈴鹿では、製品別に持っていた生産管理システムを1つに統合することでSAP統合へ対応し、そのシステムの生産計画部分を、Asprovaに委ねることになりました。決め手は実績の豊富さです。AJS本社でもいろいろ調べた中で、Asprovaが選ばれたのです。
この件は、AJSとして、Asprova導入の先陣となりました。鈴鹿で生産されているのは、サランラップなど食品系のフィルム、緩衝材などおよそ10製品ありました。製品別の生産制約の違いをAsprovaで吸収することが目的となりました。10製品に対して同時にAsprovaを導入することになりました。初導入でこの規模になるのは、異例だったようです。2年という期限が区切られていたので、大変でしたが、うまくいき、アスプローバ社のユーザー会などで発表する機会を得ることができました。
私もこれを機会に、APTシニア認定を取得することができました。
ー 貴社の得意なところは
旭化成グループと長年、関わっていることもあり、プロセス系の製造業に強いことをPRしています。大手日用品メーカーの仕事を得ることもできました。
プロセス系は組み立てとは違った難しさがあります。原料、中間製品、最終製品は、流体であったり、粉であったり、工程の途中で性質が変化したりします。タンクが空になってはいけないとか、時間の調節を厳密にしなくてはならないとか、物の管理がややこしいですね。そうした特性をよくわかっているので、今後もプロセス系については、当社の名前が最初に出るように持っていきたいと考えています。
精度を追求しすぎると…
ー 生産スケジューラを巡る最近の傾向について教えてください
これまで、生産スケジュールの精度向上を目指していましたが、そこは、無理して追及することなく、手動調整機能や出力機能の充実を図る方向に切り替えています。背景には、旭化成様の方針があり、計画精度を上げることよりも、運用で回ることの方を重視するようになりました。過去の事例から計画精度を追求し過ぎて、さまざまな弊害が発生しています。それは次のようなものです。
- 手動調整が難しくなっている
- ユーザー側でマスタ管理ができない
- システムが利用できるレベルになかなか到達しない
- 運用が難しく、システムが利用されない
また、Asprovaに、オプション機能であるSolverが登場したことも影響しています。Solverでは、何件がPoCを実施しています。条件を設定するのではなく、目標値を決めることから始めるので、お客さまにもわかりやすいと思います。従来の機能では難しかった計画が探索でき、標準機能での計画精度向上をやみくもに図るより、Solverを活用した方が達成しやすいと考えています。今後の普及に期待しています。
標準機能でも、近年導入された「カスタムビュー」や「オブジェクト作成機能」を利用して、お客さまが求める出力結果が作成しやすくなりました。従来は、Excelで最終確認して頂いたところを、Asprova内で完結する方向でご提案することが増えています。
また、お客さま側からも手動調整できることを重視するケースが増えており、アスプローバ社から従来使ってこなかった機能を教わって、手動調整機能の充実を図っています。精度より運用しやすさを求める傾向は、旭化成だけでなく、多くのお客さまと接していて感じ取れます。進行中の「WebViewer」や「日程計画編集機能」にも期待しており、利用できるようになったら積極的に取り込んでいきたいと考えています。
ー お仕事を離れて休日の過ごし方などは
私は鈴鹿から13キロほど離れた三重県亀山市の出身で、現在も亀山に住んでいます。休みの日は野菜作りに精を出しており、そろそろ草取りが大変になってきました。自然の恵みである収穫物を得るための作業は、気分転換にもなり、なかなかいいものだと思います。
(了)
コラム編集部
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