ブリヂストンエラステック株式会社(現株式会社プロスパイラマニュファクチャリング) 様
ブリヂストンエラステック株式会社(現株式会社プロスパイラマニュファクチャリング) 様
Asprova導入により生産計画の効率化と精度向上を実現、
今後は出荷計画と連動した 計画立案を目指す
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ブリヂストンエラステック株式会社様は、1970年の設立以来、防振製品の専門メーカーとして活動を続けており、ブリヂストングループの中で、タイヤに次ぐ売上高を確保する主力企業だ。主に自動車向けの防振製品を製造/販売しており、最近ではニーズの多様化などに伴い、建設機器/OA機器/鉄道車両などの分野に高度な防振技術を提供している。 同社では、生産計画の効率化を目指して、Asprova導入の取り組みを開始した。Asprova導入の背景、導入効果などについて、導入プロジェクトを牽引した生産技術部 生産改革課の赤堀久生氏、現在Asprovaに携わっている生産管理部 生産管理課の早川絹宣氏、同 赤堀光幸氏、同 鷺坂光男氏にお話を伺った。 |
ブリヂストンエラステック株式会社 ■本社所在地: 静岡県掛川市千浜4560 ■設立: 1970年2月2日 ■資本金: 4億5000万円 ■年間売上高: 252億円(2007年度) ■従業員数: 644名(2007年末時点) ■事業内容: 自動車用ならびに一般産業用の防振製品・金具の設計および製造販売 |
■現場改革を目指して、Asprovaの導入プロジェクトを立ち上げる |
同社の防振製品は、始めにゴムを練って加工しやすい形にする「成型」工程と、ゴムを貼り付ける金具を製造し接着剤を塗布する「金具処理」工程が行なわれ、次に加熱/加圧した型の中で、精錬したゴムと金具とを接着する「加硫」工程へと続き、製品外径を絞る“絞り”、防錆処理を行なう“塗装”、部品を組み付ける“組立”といった「仕上加工」工程を経て、「検査」、「梱包」、「出荷」される。ただし使用する機械の種類が多く、部品によっては加工時間も異なるため、実際には様々なバリエーションの工程が存在する。 Asprovaの導入以前、同社の製造計画は月3回、ほぼ10日間に1回の割合で立てられていた。現場ではその間に入ってくる受注分も見越した見込み生産の形を取っており、当然のことながら、仕掛かり在庫も抱えることになっていた。 こうした状況に問題意識を持っていた生産技術部生産改革課の赤堀久生氏は、2005年5月、ある生産改革セミナーに参加したことをきっかけに、“きめ細かな生産計画を作成し、現場に仕掛り在庫を置かないで一気にモノを作り上げる”という現場改革の必要性を痛感したという。 「実際の改革を推進するためには、やはり色々な道具立てが必要です。そこで調べていくうちに、生産計画の作成を効率化してくれる生産スケジューラーというものに突き当たりました。さらにネットで調べていくうちにAsprovaと出会ったのです」(赤堀久生氏)。 こうしてAsprovaの導入プロジェクトは、2006年2月から始まった。 |
■中国での導入経験を活かし、一部の工程を対象にAsprovaを再導入 |
導入プロジェクトでは当初、3ヵ月間で一通りの導入を終わらせる予定だったが、その後同社が全社挙げての「勝ち残りプロジェクト」を立ち上げた関係で、一旦頓挫してしまう。この勝ち残りプロジェクトは、社外から経営コンサルタントを招き、文字通り、厳しい経営環境の中での生き残りを賭けて、購買、物流など、主だった基幹業務を改革していこうという取り組みで、赤堀久生氏も物流関係の改善プロジェクトに加わることになった。 「全社プロジェクトの中では、出荷計画をベースに、生産スケジューラーを使って生産計画を立案し、全製造工程に展開しようという観点で進めようとしました。元々計画立案の効率化を目指して導入を進めていたAsprovaの必要性は、全社プロジェクトの中でもあったのです」(赤堀久生氏)。 しかし全社プロジェクトでは、Asprovaの導入対象を全工程としたため、部品や工程の数が膨大になってしまい、思うように進まなかった。加えて、マスター登録など中心となってAsprovaに関わっていた担当者が体調を崩して入院してしまう。 「この間、組織変更なども重なって、Asprovaの導入は一旦中断してしまいました」(赤堀久生氏)。 そんな中、赤堀久生氏は中国にある(株)ブリヂストンの海外工場に生産管理の指導で出向くことになる。「そこは新しい工場でうちと同じ防振製品を作っていたのですが、まだ生産品目も少なく、マスターの登録も比較的楽だったので、ある程度スムースに立ち上がりました」(赤堀久生氏)。 そこでの経験を踏まえ、全社プロジェクトも一段落した2008年頭から、改めてAsprovaの導入プロジェクトが始まった。ここでは導入対象を、加硫工程に絞ったという。 |
■マスターの再設定と調整を経て、Asprovaの本格稼働を開始 |
再開されたAsprovaの導入は、生産管理部 生産管理課の赤堀光幸氏が、Asprovaの主担当となり、製品理解から始めることになった。「一度初心者向けの講習をアスプローバ社に受けにいき、少しずつ勉強していきました」(赤堀光幸氏)。 また全社プロジェクトでは、全工程を対象とした生産計画の立案を目指した結果、Asprovaの導入が頓挫してしまったが、今回は加硫工程に絞り、計画立案の効率化を目指すことにした。「実は加硫工程だけでも対象となる機械は350台近くにもなります。まずは加硫工程に焦点を当ててスケジューリングを自動化し、その効率と精度を高めてから他の工程にも展開していくやり方が、やはり現実的だと考えました」(赤堀久生氏)。 実際の導入プロジェクトでは、前任者の入院によってAsprovaの内部がブラックボックス化していたため、赤堀光幸氏が3〜4ヵ月をかけてマスターの登録を全てやり直した。そして2008年5月に一応カットオーバーを迎えたが、設定したパラメータの評価、再調整を繰り返しながら精度を高め、2008年10月の組み付けから、Asprovaを本番活用している。 |
■新しい販売データーを即取り込むために月3回の計画立案をデイリーへ |
Asprovaの導入効果については、スケジューリングの効率化が実現し、さらに精度が大幅に向上したことが挙げられる。生産管理部 生産管理課の早川絹宣氏は、「これまでは月に3回、1回当たり48時間をかけて行なっていたものが、今では1回12時間で、それを毎日回すことができています」と語る。これによって、同社では生産計画を月20回以上立てることが可能となった。「今までの月3回の計画では、当然のことながら、最新の販売計画が取り込めていませんでした。受注情報が入っても次の計画時まで溜めておき、いわば古い情報を元に生産計画を立てるやり方になっていたのです。今は日々の最新情報がベースになっているので、計画精度は確実に上がっています」(赤堀久生氏)。 ただし、在庫の仕掛かり量削減の効果は、まだ見えないという。その理由としては、本格稼働から約1ヵ月半しか経過していないこと、発注元である自動車メーカーの生産計画など外的要因も大きく関係することなどが挙げられる。生産管理部 生産管理課の鷺坂光男氏は、「昔のやり方では在庫も非常に溜まっていただろうと思いますが、いずれにしてもこの部分の効果は今後に期待するところです」と語る。
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■今後はAsprovaの利用範囲を他工程に広げ、在庫の削減を目指す |
今回Asprovaの導入対象となった加硫工程だけでも、マスターの数は13000〜14000にものぼる。現在でも引き続き、Asprovaで立てた生産計画をチェックして、マスターに反映できそうな部分は随時取り込んでいっているという。「今あるものをずっと使い続けるということではなく、より使いやすいように日々修正しながら運用しているというのが現状です」(早川氏)。 また今後について、赤堀久生氏は、「加硫工程以降の仕上加工工程にも、Asprovaの利用を広げていきたい」と話す。そのため、現在は加硫以降の全工程について、標準工数を調べ直しており、それが完了した段階でマスターをしっかりと整備して、「2009年下期には、仕上加工工程でもAsprovaの立てた計画に沿って生産できるようにしたい」(赤堀久生氏)という。 さらに、受注情報をベースにした出荷計画からの生産計画立案が実現できれば、今後在庫削減効果が期待できるが、今は材料メーカーへの部品の発注および納品が即日で実現できているわけではないため、いまだ見込み生産せざるを得ないというのが実情だ。しかし赤堀久生氏は、「そもそもAsprovaの導入は、全社プロジェクトの中で在庫の削減に十分な効果があると見極めた取り組みです」と語り、今後受注情報とリアルタイムでリンクした生産計画の実現によって、在庫削減に大きな効果が出ることに期待を寄せている。 |
■お客様の声 |
左から、 生産管理部生産管理課 鷺坂光男様 赤堀光幸様 早川絹宣様 技術部生産改革課 赤堀久生様 当初は全工程にいきなりAsprovaを適用しようとしたことで導入が頓挫してしまいましたが、再度範囲を絞ってAsprovaを入れたことで、まずはスケジューリングの効率アップと精度の向上が実現できたと思います。今後はAsprovaの利用範囲を広げていくことで、在庫の削減にまでつなげていきたいと考えています。 |
■ご担当いただいたシステム開発会社様 NECネクサソリューションズ株式会社 エンタープライズソリューション第二事業部 第一営業部 主任 神戸 淑雄 氏 ブリヂストンエラステック様の防振製品では、部品の種類が多く、また利用する機械や工程も多岐にわたるため、膨大な数のマスターが必要になります。そのため、高精度で効率的なスケジューリングを実現するためにはAsprovaの利用が必要不可欠でした。今回の導入でその課題はクリアできたので、今後は在庫削減に向けた利用支援に注力させていただきたいと思います。 |