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エナジーウィズ株式会社 様

エナジーウィズ株式会社 様

見込み生産に対応した生産効率の最適化 (Asprovaでは無理だと思っていました)

自動車用バッテリー、産業用鉛蓄電池、電源システムの製造・販売を手がけるエナジーウィズ株式会社(以下、エナジーウィズ)では、Asprovaを使って自動車用バッテリーの生産計画を立案していますが、要求事項が複雑なため、一部の詳細計画は手動で立案していました。今回、詳細計画の立案を自動化し、自動車用バッテリー生産計画の脱属人化と生産効率の向上を目指し、AsprovaのオプションであるSolver開発に参加されました。バッテリー製造の課題とSolver開発の経緯と効果についてエナジーウィズ株式会社 埼玉事業所 生産管理部 部長代理 神谷靖史氏と生産管理部 主任 中林葉介氏に詳しく伺いました。



■エナジーウィズ株式会社 埼玉事業所
■住所:埼玉県深谷市岡2200
■設立:2021年7月
■資本金:10億円
■従業員数:5,100人(連結)(2021年12月現在)
■事業内容:蓄電デバイスの製造及び販売並びにこれらに関するシステム・サービス事業

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エナジーウィズ株式会社埼玉事業所では、乗用車、バス、トラック向けの多品種にわたる自動車用バッテリーを製造し、日本国内の約20%のシェアを持っています。

もくじ
  1. 1.自動車用バッテリー製造の永遠の課題
  2. 2.自動車用バッテリーの製造工程
  3. 3.Solverによる生産計画のDX化
  4. 4.Solver開発の進め方
  5. 5.DX化のメリット
  6. 6.今後に向けて

 

 

1.自動車用バッテリー製造の永遠の課題

 

-- 自動車用バッテリーの製造の課題について教えてください。

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自動車用バッテリー製造には数多くの要求があります。まず、品種と配送先の数が多数あります。品種は約600種類あり、約9,000か所のお客様へ直接配送しています。しかし、納期は短く、当日受注-当日出荷-翌日着荷が原則です。これはお客様で欠品を起こさないためです。また、需要の変動が大きく、予測が難しい状況です。例えば、季節変動では冬の需要が大きくなりますが、短期的には天候などにより同じ週内で2倍前後変動することもあります。さらにバッテリーは鮮度が重要です。充電したバッテリーは放電を始めるので、完成品を長く在庫しておくことができません。バッテリー製造のリードタイムは通常20日ほどかかりますが、変動に対応するために充電前のバッテリーを半完成品在庫として持っています。

 

このように自動車バッテリー製造には、多品種・短納期、需要変動、鮮度管理などを踏まえたうえで、欠品ゼロを実現する製造工程と在庫の削減という永遠の課題が存在しています。

 

 

2.自動車用バッテリーの製造工程

 

-- 自動車用バッテリーをどのように製造しているか教えてください。

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自動車用バッテリーは、大きく分けて4つの工程で製造されます。鉛蓄電池では、始めに鉛から極板を製造します。極板を重ね合わせ、ケースの中に入れて組み立てます。組み立てたバッテリーを充電槽の中で充電し、梱包したら完成です。

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自動車用バッテリーの製造工程

 

充電したバッテリーは長期間放置すると放電を始めるので、大量の完成品在庫を持てません。組み立ての終わったバッテリーを半完成品在庫として持っておき、いまだ確定していないオーダーを予測し、実績との差異を調整しながら、いかに効率よく充電して梱包するかが在庫を削減するポイントです。

 

品種、配送先が多く、短納期なのに変動が大きいなど、課題が多いので、生産計画は担当者が手動で作成し、毎日更新していましたが、欠品を出してしまうこともあり、悩みの種でした。

 

3.Solverによる生産計画のDX化

 

-- Solver開発に参加したきっかけを教えてください。

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「充電工程をコントロールすることが在庫削減のキーポイントです。」(神谷氏)

 

バッテリー製造には課題が多いので、生産計画は担当者が手動で立案し、毎日更新していました。しかし、過去2年連続で欠品を出してしまい、大きな機会損失が出てしまったため、生産計画の立て方を見直すことになりました。生産計画のDX化を推進する取り組みを行い、その一環として数年前にAsprovaを導入しましたが、期待していたような効果は得られませんでした。

 

その理由は、見込み生産をしながら、生産効率を上げるために充電槽をフル稼働させたいという難しい要求があったからです。弊社の場合、いくつかある充電槽の大きさが異なるため、どの品種をどの充電槽で充電するのかを決めないと充電槽をフル稼働させるだけの生産数量が決められません。我々が求めていたのは、受注生産のようにあらかじめ決まった数量を充電槽に割り当てて最適化することだけではなく、最も設備利用効率が良くなるように生産数も最大化する生産計画を立てることでした。

 

Solverを導入する前は、Asprovaで立案した計画を実際の計画に落とし込むには人の介在が不可欠でした。在庫数と見込み要求数を見ながら、充電槽がフル稼働するようにAsprovaの計画を手動で修正するため、毎日、計画立案に約2時間、手動修正に約1時間かかっていました。しかも手動修正は専門的な知識が必要になるので、作業が属人化していました。結果として、手動修正で生産計画の精度は上がっても、人的コストが上がってしまうというジレンマに陥っていたのです。この解決法が思いつかず、悶々としている中にSolverのご提案を頂き、ジレンマを解決できるポテンシャルがあるとピンと来たことから、開発に参加しました。

 

「Asprovaは受注生産向きかつ、人の介在が不可欠なツールだと感じていました」と中林氏。仮に見込み要求数が100個だとしても、充電槽をフル稼働させるために受注を先読みして120個作っても構わないのです。しかし、生産スケジューラでそんなことができるとは思ってもいなかったので、今回Solverで先読みして生産計画が立てられるようになったのは、とても面白いと思います。

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4.Solver開発の進め方

 

-- どのようにSolver開発を進めたかを教えてください。

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「Solver開発により、今、何がどうなっているのかが見えるようになりました。」(中林氏)

 

Solverはアジャイル型の開発なので、当初は特殊な開発スタイルだと感じていました。しかし、アルファ版、ベータ版を評価して改良すべき点を何度もフィードバックできたので、評価工数はかかりますが、要求が的確に実現されているかを確認でき、とても良かったと思います。また、アスプローバ社とのミーティングを通して、気付かされることが数多くありました。

 

開発当初の要求にはなかったのですが、ミーティングを重ねるうちに追加した機能に「端数埋め」があります。これは、充電槽に空きができた場合、空いた充電槽を埋めるために(通常は計画に乗せないほど少ない)端数のバッテリーを追加で製造するように自動的にオーダー数量を変更し、常に充電槽をフル稼働させるための機能です。生産計画の前倒しをする必要があるので、ずっと手動でやっていました。Solverでできるとは思っていなかったので要求に上げていませんでしたが、ミーティングで話してみたところ、「できる」という回答を得られたので、開発に着手しました。

 

開発で苦労した点は、現場の要求を言語化することです。生産計画の担当者からヒアリングして要件を整理しましたが、アスプローバ社のエンジニアに理解できるようにするのに苦労しました。また、ヒアリングしても担当者で困っていることはなかなか上がってこないので、要求を言語化するために、図を書き、場合分けをしながらまとめてみたところ、担当者とスムーズにコミュニケーションできるようになりました。いったん言語化できてしまえば、アスプローバ社とのコミュニケーションもスムーズでした。

 

今回の開発は2021年の1月にスタートして、6月にはかなり改善された感触を得られました。

 

5.DX化のメリット

 

-- Solverを開発して、どのような変化がありましたか。

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「計画立案の脱属人化と情報の見える化の2つを実現できる見通しが立ちました。」(中林氏)

 

「今、何がどうなっているのか」が見えるように、計画立案の脱属人化と情報の見える化を実現できる見通しが立ちました。

 

まず、計画立案の脱属人化ですが、担当者の頭の中だけでやっていた計画立案を、Solverで行うことで専門知識がなくても迅速に計画変更の判断ができるようになりました。具体的な成果としても手動で計画立案していた頃に比べて、工数を約50%削減できる見込みです。

 

弊社の取り組みである情報の見える化では、「今、何がどうなっているのか」を見える化するためにPSI(製造・販売・在庫)情報を工場内のモニターを複数用いて常時表示することで誰でも見られる情報のオープン化を図っています。以前は、担当者だけが詳細を把握していた生産計画を、今回Solverを導入することで管理者・監督者が要約データとして自動的に共有でき、多角的な視点から現状が見えるようになったので、危険を素早く察知し、柔軟に生産計画を変更できるようになったのが最大のメリットです。

 

的確な判断を素早く行うためにデータ主導型の意思決定はますます重要になっていますが、個別にはできていても、サプライヤーから顧客までE2E(End-to-End)のデータを把握して、データ主導型の意思決定をすることは非常に難しいことでした。今回のSolver開発で、販売と生産をつなぐ重要ステップである生産計画でデータが途切れてしまう課題を解決できたことは「欠けていた最後の1ピースが埋まった」と感じています。

 

6.今後に向けて

 

-- アスプローバ社への要望や期待があれば、教えてください。

どういった課題をどうやって解決したかという他社の事例を共有していただけると、ありがたく思います。弊社で困っている課題が実は他社ではすでに解決済ということがあるかも知れません。今回の弊社の事例も皆様の課題解決のヒントになりましたら幸いです。

-- Solverオプションの導入を検討されている方にアドバイスがありましたら、お聞かせください。

生産スケジューラは見込み生産には向いていないと思っていましたが、Solver開発により無理をせずに見込み生産でも生産計画が立案できるようになりました。

 

これまでの開発では「これは無理なんじゃないか」と勝手に思って要求を下げたりすることがありましたが、今回の開発ではゴールがぶれずにアジャイル開発によってシステムがゴールに近づいたと感じています。

 

Solverの開発がゴールなのではなく、得られる成果物を今後の業務でいかに活用するかが重要になると思っています。今後とも弊社の業務に変わらぬサポートをお願いします。

本事例のさらに詳しい内容を詳細版として公開しています。

 

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* 取材日:2021年11月26日
* 記載の担当部署は、取材時の組織名です。