株式会社三井E&Sマシナリー(元三井造船株式会社) 様
株式会社三井E&Sマシナリー(元三井造船株式会社) 様
Asprovaの導入で「見える化」と短期・中期・長期の一貫計画立案の実現
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三井造船株式会社は三井グループの造船会社にあたり、その名の通り船舶部門が主なセグメントとなっているが、鉄構建設部門、機械部門、プラント部門といった他の重工業メーカに比べ、事業範囲が広いことも特徴である。 玉野事業所 機械・システム事業本部 機械工場 では、高炉設備に利用される風力機械を製造している。BRICsをはじめとした新興国のめまぐるしい発展の影響による受注量の増加、サブプライムローンに端を発した世界同時恐慌による受注量の減少、など、世界の景況によって受注量は左右され、その山谷は非常に激しいものがある。そういった状況の中、大型の設備をノンストップで稼働させるための綿密な短期計画、機会損失を防ぐための中長期計画の連動の実現は急務となり、生産スケジューラAsprovaの導入に踏み切った。 Asprova導入の背景、今後の展望などについて、玉野事業所機械・システム事業本部 機械工場 生産計画部の四本氏、中島氏、下垣氏にお話を伺った。 |
三井造船株式会社(現株式会社三井E&Sマシナリー) ■所在地: 岡山県玉野市玉3丁目1番1号 ■設立: 1937年7月31日 ■資本金: 443億8,495万円 ■授業員数: [単独]4,335人(平成21年3月31日現在) ■事業内容: 船舶・海洋、動力エネルギー、プラントエンジニアリング、物流システム、社会インフ ラ建設、環境リサイクルなど幅広い分野で培った技術力を基盤に、地球環境にやさしく、社会や人に 役立つ製品・サービスを提供 |
■生産スケジューラAsprovaを導入し短期計画立案の継承と中長期計画立案の実現 |
同社では高炉設備に利用される風力機械を製造しており、製造に使う大型の設備を1時間でも止めてしまうことは許されない。設備をノンストップで稼働させるための生産順序の決定は、ベテランのみが持つ匠の技となっており、1~2カ月の直近の生産計画を立てることがやっとである。 3カ月目以降については、計画というよりも仕事量の把握程度となっており、直近になって初めて間に合わないことがわかり、外注に依頼して納期に間に合わせたり、営業からの問い合わせにはベテランの感で対応している点が多くあった。こういった課題の解決と、匠の技を標準化し継承するといった世代交代も目的の一つとしてIT化を進めることとなった。 |
■隣の部署(ディーゼルエンジン製造)で活用しているAsprovaを横展開 |
同工場ではディーゼルエンジンも製造しており、この製造ラインには一足先にAsprovaが導入されていた。活用状況を確認したところスピード、正確性、操作性のいずれも申し分なく、風力機械の製造ラインでも適用できると確信し、Asprovaを採用することとなった。 | |
Asprovaで立案している計画期間は約2年、取り込んでいるオーダは約5000件、計画対象としている工程は6~7工程、作業数は30000件以上にも及ぶ。計画立案のサイクルは週1回で、リスケジュールのスピードは5分程度とフラストレーションを感じることなく活用している。また、工程情報をマスタ化したことにより工程の漏れの防止と、工程間の違反のアラーム表示を実現でき、信頼できる計画へとシフトした。 |
■ITツールを活用し匠の技から標準化へ |
通常、生産スケジューラを含めたITツールは標準化、自動化などの効用を目的として導入するケースが多い。大型の設備が並ぶ同工場では設備を遊ばせことは許されない、しかしながら何千、何万という作業を前後工程の整合性を保ちながら隙間なく計画立てることは、人間の柔軟な脳をもってしてでも極めて困難であるため、ITツールによる自動化の実現は現実味がなく、最初からマニュアル調整ありきでの立案を考えていた。スケジューラに求めた機能は「工程の漏れの防止」と「工程間の違反のアラーム表示」であり、これらの機能を活用することで、数カ月あるいは数年にわたる計画の実現とその精度の向上に重きを置いた。そして後継者がマニュアル調整を行っていくことで、匠の技を継承し、同時にITツールによる標準化を狙った。 隣の部署(ディーゼルエンジン製造)で、Asprovaを導入済みであることから、社内にAsprovaの特徴と機能を理解し、且つ導入の経験を持つ技術者がいた。導入時の課題のほとんどを自社内で解決でき、難問についてはAsprova販売代理店のNTTデータCCS殿に依頼し解決するという体制で導入を行った、その結果、立ち上げにかかった期間は、3~4カ月。 |
■短期・中期・長期の3段階の計画連携による全体最適 |
Asprovaで立案している計画期間は約2年。直近3カ月が作業指示を出す範囲となるため、この期間は設備が遊ばないような綿密な計画を立てている。4カ月~1年の範囲は納期調整の用途で精度が求められるため、山崩しを行っている。それ以降については概ねの仕事量を把握するために、山積みの計画を立てている。それぞれの範囲毎にExcelを利用した計画を立てるといった非同期の計画立案を止め、Asprova一つで短期・中期・長期の3段階の計画を連携することにより生産の全体最適をはかっている。 |
■課題と今後の展開 |
仕様がお客様毎によって異っており、注文ごとに設計から行っているため、まさに一品一様の受注生産である。スケジューラで計画を立てるようにするためには当然ながら工程情報が必須となるが、一品一様であるため、工程情報も注文毎に入力をして活用している状況である。仕様によって工程の有り/無しや、使用する部品が決定している部分があるため、今後はAsprovaならではの機能である仕様に応じて動的に工程情報を切り換えられるマスタ(パラメトリックBOM)を活用し、工程情報の標準化を行っていき、手間を極力省き効率化を推進していきたい意向である。 計画生産ではないため、在庫削減という効果はそもそも期待をしていないが、部材のJIT手配によるキャッシュフローの改善、計画精度向上によるリードタイム短縮などの効果が出ることに期待を寄せている。 |
※ 取材日 2010年4月22日
■導入頂いたお客様 |
三井造船株式会社 機械・システム事業本部 機械工場 生産計画部 四本氏(右) 中島氏(中) 下垣氏(左) |