株式会社リコー 様
株式会社リコー 様
多品種少量生産に対応するためにAsprovaを導入、
生産リードタイム、生産計画立案時間がほぼ1/2に短縮、
仕掛在庫の半減などを実現
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株式会社リコー様は、1936年に「理研陽画感光紙」の製造・販売を目的として設立された理研感光紙株式会社がその前身だ。戦後にはカメラの大量生産方式を確立、1970年代には世界初のオフィス用ファクスを発売し、デジタル複写機の開発も進めてきた。2000年に入ってからは、ネットワーク機器とアプリケーションのアーキテクチャを統一してオフィス内での効率的なデータ活用を実現する「ドキュメントハイウェイ構想」を提唱、その後も現在に至るまで、オフィスにおける様々なソリューションを提供してきている。 同社でプリント基板を受注生産している秦野事業所 電装ユニットカンパニーでは、生産計画立案における人的負荷の軽減と精度向上を目指してAsprovaを導入した。導入の背景、製品選定の理由、導入効果などについて、電装ユニットカンパニー 生産管理室 室長の岡本明久氏、同 生産管理室 生産管理課 課長の深谷昌喜氏、同生産管理室 生産管理課 スペシャリストの藤田勇夫氏にお話を伺った。 |
株式会社リコー ■本社所在地: 東京都中央区銀座8-13-1 ■設立: 1936年2月6日 ■資本金: 1,354億万円(2008年3月末日) ■従業員数: 11,295名(2008年3月末日現在) ■事業内容: デジタル複写機/MFPなどの製造・販売、半導体/電装ユニットなどの製造・販売、 PCBの開発・設計・生産、デジタル複写機操作部の生産 |
■外販の拡大によって、多品種少量生産の割合が増加 |
一般的にリコーといえば、オフィス内のデジタル複写機やMFP(マルチファンクションプリンター)で有名だが、同社はこうしたオフィスソリューション分野以外に産業分野でも活発に事業展開をしている。その一つが秦野事業所の電装ユニットカンパニーで、ここでは外販向けを中心にプリント基板(=Printed Circuit Board;以下PCB)の受注生産を行なっている。 2000年当時、秦野事業所には自社のMFP向けにプリント基板を生産する工場があったが、その後外販の比率が増加し、現在、同事業所の工場で生産されるプリント基板はほとんどが社外取引先に供給するためのものだ。こうした売上比率の変化に伴い、工場で生産するPCBの種類は増え、1ロット当たりの生産数は減るという現象が顕著になってきた。当時の状況を、電装ユニットカンパニー 生産管理室 室長の岡本明久氏は次のように説明する。 | |
「外販ではいわゆる多品種少量生産が求められます。そうなると、細かいロットのものをたくさん積み上げなければ、従来と同じ仕事量にはなりません。マシンの切り替えも頻繁に行なう必要があります。しかし別の見方をすれば、誰も手をつけていないビジネスがまだ国内に残っているということです。うまく対応する仕組みを作ることができれば、我々にとっても大きなチャンスだと考えました」。 |
■管理対象となるマシン数の増加で、生産スケジューラの必要性を認識 |
PCBの製造工程は、部品メーカーから調達した部品を基板の上に配置していくという流れになるが、当時の工場では、複数の生産用マシンが連結されて一つのユニットを形成し、さらに複数ユニットを経由して製品が作られていた。各ユニットの頭のマシンへの部品投入時間を決めれば、最後のマシンからアウトプットされるまでの作業時間も決まってくるので、それを元に生産計画が立てられていたのだ。しかし多品種少量生産に対応するためには、ある製品生産のための連結状態が必ずしも他製品の場合に最適だとは限らない。そこで秦野事業所では「個々のマシンの稼働率を考えた場合には連結をばらし、マシン1台単位にしたほうが有効に使えるだろうと判断」(岡本氏)した。 しかしここで新たな問題が出てくる。連結を解除することで製造工程はより柔軟に組み替えることが可能になるが、1台1台のマシン単位で部材の投入時間を決めなければならない。「つまりマシンの数だけ、生産計画を作らなければならないということです。これはもう人手では対応しきれません。この作業を自動化し、いかに効率的に行なうかというころで生産スケジューラーの必要性が出てきたのです」(岡本氏)。 |
■他事業部での実績と使い勝手のよさで、Asprovaを選択 |
生産スケジューラの導入が実際の検討課題として挙がってきたのは2003年だ。見直し後の製造工程では、26台あるマシンを必要に応じて組み合わせて製品を製造することになるが、その過程では約25人がマシンでは対応できない部品の装着やはんだを使った部品の取り付けなどに携わっている。マシンと人手を合わせた工数は34にのぼり、これが生産スケジューラでの管理対象となる。 実際の製品選定に当たっては、2000年にAsprovaを導入していた厚木事業所での検討資料など参考にしたという。生産管理室 生産管理課 課長の深谷昌喜氏は、Asprova選択の決め手となったポイントを次のように説明する。 「何といっても実績があったことですね。また厚木事業所が導入時に他社製品を調査した資料も見せてもらいましたが、Asprovaの使い勝手がとてもよさそうだと感じました」(深谷氏)。 そこでダウンロード版を使って、新しいマスターを登録する際にも既存のモデルをコピーして利用できるかといったことをチェックし、実際の使い勝手を調べてみたという。その結果、「Asprovaは自由度が高く、標準機能で我々のやりたいことが実現できるという結論に達しました」と深谷氏は語る。こうして2004年12月、Asprova が導入された。 |
■生産リードタイムがほぼ半分に短縮、工程内の仕掛在庫が低減し、生産計画の立案時間も約1/2と大幅に短縮 |
2008年12月現在で導入後4年が経つが、現場での導入メリットして、生産管理室 生産管理課の藤田氏は「製造前のシミュレーションができるようになったことと、生産計画立案の時間が大きく短縮したこと」を挙げる。前者については、マシンなどの負荷を考慮した上で、事前に生産計画を検討できるようになったということだ。また後者については、クリック1つでAsprovaが自動的に生産計画を立ててくれることで、従来に比べて2分の1程度の時間で済むようになったという。「Asprovaでは各現場での実行計画を作っています。かつてはマシンの制約条件などまで人間が考えて計画を立てていたのですが、今はAsprovaのマスターに条件さえ設定しておけば自動的に計画が出てきます。これによって大幅な時間短縮が実現できました」(藤田氏)。藤田氏はSIerなどの支援を受けることなく、ホームページのヘルプ画面などを参照しながら、マスターの設定を全て一人で行なったという。 また目に見える効果としては、まず1日当たりの納期遅延率が3分の1未満になったという。また部材を先頭工程に投入してから完成するまでの生産リードタイムも約半分になり、それに伴い工程の中の仕掛在庫も減った。さらに仕掛在庫が減ったことで在庫管理の精度も上がり、棚卸しの際の現品差(帳簿上の在庫金額と現物金額との差)も約15分の1になった。「こうした効果は、Asprova導入の前段階としてマシンを個別管理にするなど、我々が生産に対する考え方を整理したところがスタート地点になっています。そうした我々の思いを具体化する上で、Asprovaが非常に重要なツールとなったということです」(岡本氏)。 |
■今後は購買計画での利用も検討、また海外拠点への展開も視野に |
Asprovaの導入では数多くの効果が得られたが、岡本氏によれば、秦野事業所の中でAsprovaを活用できるプロセスはまだ残されているとのことだ。具体的には、受注情報に基づいて負荷計算をし、部品の投入計画を立て、さらに部品手配までを行なうフェーズで、「端的にいえば、受注情報と紐付けた購買計画の作成にもAsprovaを利用していきたいということです」(岡本氏)。より現場に近い場面では、「Asprovaで作成する実行計画と現場での作業のしやすさとの間に生じているギャップのすり合わせ」(藤田氏)といった課題も挙げられる。 またリコーでは2000年の厚木事業所での導入以降、生産スケジューラの推奨パッケージとしてAsprovaが広報されている。全社的な今後の展開として、「一部、上海の地域統括会社では既に使い始めていますが、順次海外拠点への導入も推進していきます」と岡本氏は説明する。将来的にもリコーにおけるAsprovaの活用シーンは、さらに拡大していく見込みだ。 |
■導入頂いたお客様 |
電装ユニットカンパニー 生産管理室 生産管理課 課長 深谷 昌喜様(左) スペシャリスト 藤田 勇夫様(右) |
お客様の声 株式会社リコー 秦野事業所 電装ユニットカンパニー 生産管理室 室長 岡本明久様 私たちは外的環境の変化によって生産方法の見直しから始めましたが、そこで導き出したやり方を実現するためには、新たにクリアしなければならない課題が出てきました。それは増大した管理対象を前提にして、いかに効率的に、正確に、生産計画を立てるかということです。Asprovaによってそれを実現することができました。今後もAsprovaをより深く理解することで、活用の範囲をさらに広げていきたいと思います。 |