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株式会社日本色材工業研究所 様

株式会社日本色材工業研究所 様

Asprovaの導入でMRPとスケジューリングを同時に実現、
業務フローの見える化やスケジュール時間の短縮を達成



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株式会社日本色材工業研究所様は1957年、化粧品のOEMサービスの提供を目的として設立された。今回Asprovaを導入した座間工場様は、1979年11月に同社の主力工場として、GMP基準(化粧品の製造および品質管理に関する技術指針)に基づき設置されたものだ。生産品は、パウダー類、口紅、クリーム類の大きく3つに分類され、商品企画から研究開発、原料調達、製造、出荷という各工程を厳しいチェック体制の下で行なっている。

同工場ではAsprovaを導入し、MRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)と生産工程のスケジューリングを同時に実現、その利用範囲は、他の綾瀬工場や吹田工場にまで及んでいる。Asprova導入の背景、導入時の苦労点、導入効果などについて、取締役で座間工場長 兼 業務部長の竹田雅夫氏、生産本部 業務部 生産管理チームの細川正幸氏、同 福森梓氏、同 大久保有平氏にお話を伺った。

株式会社日本色材工業研究所  株式会社日本色材工業研究所
 ■本社所在地: 東京都港区三田5-3-13
 ■設立: 1957年3月1日(創業1930年)
 ■資本金: 5億5274万9050円(2008年2月現在)
 ■年間売上高: 60.82億円(2007年度)
 ■従業員数: 235人/外臨時等176人
 ■事業内容: メイクアップ化粧品を始めとする基礎化粧品
               医薬部外品などの商品企画・提案から一貫生産までのOEMサービス



■基幹システムのリプレイスと共に、MRPとスケジューリングの連動を目指す

Asprovaの導入以前、同工場では基幹システムとしてあるERPパッケージを利用しており、生産工程のスケジューリングとMRPについても、そのパッケージの機能を使って行なおうとした。しかし各々の処理に時間がかかりすぎてしまい、実際には使い物にはならなかったという。当時の状況を、取締役 座間工場長 兼 業務部長の竹田雅夫氏は、次のように振り返る。

「以前利用していたERPパッケージの機能では、生産計画の立案や所要量の計算にかかる時間がとても実用に耐えうるレベルではありませんでした。そこでスケジューリングについてはExcelなどを使って人手で計画を立て、MRPについては自社でシステムを開発して運用を行ない、各々の結果を基幹システムに入力する、という対応を採っていました。こうした状態が続く中で、各々の処理時間をさらに速めると共に、人にかかる作業負荷も軽減したいという思いがありました。また当時はスケジューリングとMRPの2つの機能を連動させることができず不便を感じておりました。
そこで私共はスケジューリングとMRPとを連動し、ジャストインタイムに近い計画の立案や、正確な所要量計算を行い、将来的に在庫の圧縮も可能となるシステムの構築を目指そうと考えました。」。

こうした目標を実現するために、同工場では先の生産管理パッケージを含めた基幹システムをリプレイスし、さらにAsprovaを導入することを決定した。ちなみに同工場の生産形態は受注生産で、生産工程としては、ファンデーションや口紅などの製品内容物(=バルク)を製造する「バルク製造工程」と、作ったバルクを容器に充填・包装し、製品化する「アセンブリ工程」に大別される。
■導入実績と機能面から、Asprovaを選択

実際のプロジェクトとしては、基幹システムのリプレイスを行ない、さらにスケジューラーとMRPを導入するというものだ。後にSIerとしてパートナーとなる日本電子計算株式会社を含め、3社から提案をもらったという。当初、3社の提案してくるスケジューラーはまちまちだったが、同工場では2006年2月からAsprovaのプレ検討を始めており、最終的には座間工場側からスケジューラーとしてAsprovaを指定したという。
その理由について竹田氏は、「やはり導入実績が一番あったことが大きいのですが、もちろん機能や処理速度の点からもAsprovaがいいと判断しました。また私たちの生産工程は、いわゆるプロセス系と組み立て系の2つの形態を含んでいますが、Asprovaはこの両方に対応していたこともあります」と説明する。

こうして座間工場は、基幹システムとして日本電子計算の提供する中堅製造業向けERP「JIPROS」を採用し、2006年10月からAsprovaに照準を合わせて導入準備に着手した。約10ヵ月で導入を終え、2007年8月から試験運用を開始、同年9月から新しい基幹システムと同時にAsprovaの本格稼働を開始した。
 
■導入時のポイントは、MRPとスケジューリングのバランスを取るためのマスター設定

今回の座間工場の導入プロジェクトは、AsprovaでMRPとスケジューラーの両機能を同時に実現しようとする非常に難易度の高い取り組みだった。この点について、生産本部 業務部 生産管理チームの細川正幸氏は、次のように語る。
「的確なスケジューリングができなければ、的確な所要量計算もできません。この両者をスムーズに連動させるためには、やはり1つの製品の中で完結できるのが望ましいのです」。

ただしAsprovaでMRPを行なおうとするなら、通常は生産工程をある程度簡略化してAsprovaに登録し、MRPエンジンの代わりとして使用するという形を採る。この場合、AsprovaはスケジューラーというよりもMRPとしての役割がメインになる。一方、スケジューリングを正確に行なうためには、生産工程を細分化してAsprovaに登録しておく必要がある。つまり両機能を並立させるためには、Asprovaのマスター設定に絶妙のバランスが求められることになるのだ。

この時、同工場のバルク製造工程では、製品加工する釜の内壁にバルクが残留し、生産にロスが生じる。このロス分は機械ごとに異なるため、所要量計算を行なう際にはその違いも考慮に入れなければならない。

「釜の内壁に残るバルクのロス量を考慮しない中期的な所要量計算を実現するだけなら、粗いマスター設定でも問題ないのですが、今回はこのロス分までを見込んだ詳細の所要量計算が必要でした。そのためマスターの設定も細かくする必要があったのです」(細川氏)。
そこで細川氏は、Asprovaの標準機能である“式機能”を活用して8000文字にも及ぶ式を記述し、求めるレベルの精度で所要量を算出できるようにした。機械ごとのロス分の違いを加味してさらに計算精度を高める必要があること、さらには生産指示を出すためにもより詳細なマスターが必要なことなどから、その過程は試行錯誤の繰り返しだったという。
こうした困難な取り組みを経て、ようやくAsprovaは実運用に耐えうるチューニングを完了したのである。

■業務フローの「見える化」を実現、全受注を6分でリスケジュール

以前のシステムでは、生産管理チーム、バルク製造チーム、アセンブリチームといった各部署が基幹システムから情報を受け取り、各々所要量計算と予定の作成をして情報交換を行なっていた。そのため予定の確定や最終的に必要な原材料の数量を把握するのに多大な手間と時間がかかっていた。これがAsprovaの導入によって大きく改善された。「受注データや在庫データなどが基幹システムからAsprova MSに渡され、そこで生産管理チームがリスケジュールを行うことによりMRP(所要量計算)が回り、さらに詳細スケジュールが立案されて各チーム担当者に渡される、という流れになっています。関連部署はAsprova MESでスケジュールを閲覧・確認します。所要量計算を行なう役割をAsprovaに集約し、また計算方法もマスター登録したことで、見える形でルール化されています」(細川氏)。

現在Asprovaは2日に1回、基幹システムから各種データーを受け取り、全受注(約3ヵ月分)について計画を立てている。細かいロスを考慮した、MRP、生産計画をするため、1回の立案で複数回割付けを行っているが、約6分でスケジュールできているという。この点について、生産管理チームの福森梓氏は、次のように語る。「私たちは受注生産なので、お客様の都合によって予定の変更が頻繁に発生します。その度に予定調整を行なう必要があり、随時Asprovaでリスケジューリングをかけるのですが、1回あたりの計算時間が6分程度なのでストレスもほとんどありません。スケジュールを確立していくために、変動項目を設定し、他をスケジューリングし直すということを繰り返しています」。

また同工場では、今回のシステム導入に併せて、基幹システムとAsprovaの操作手順書を作成した。この点について、生産管理チームの大久保有平氏は次のように語る。「私自身、以前の基幹システムを使っていた時に、操作手順が分からなくて苦労したという経験がありました。そこで誰でも、またいつ担当者が代わっても対応できるように、各工程の担当者から業務フローの聞き取り調査を行ない、基幹システムとAsprova操作画面のハードコピーも細かく取って、操作手順書を作りました」。

この操作手順書は電子ファイル形式で約220ページにものぼる“マニュアル”となっており、同工場で特定の個人にノウハウが集中しない取り組みにも関心が払われていることがよく分かる。
さらに本稼働後の取り組みとしては、COMインタフェースを利用してプラグインの作成に取り組み、8000文字もあった所要量の計算式を数百文字にまで短くして、今後の計算式のメンテナンスを行ないやすくした。またスケジュール調整の操作を簡略化するためのプラグインも作り、手間の削減と運用のしやすさを実現している。

加えて同社では製品サイクルが速く、1年間に全品目の約4割が新製品に置き替わるため、マスターを随時メンテナンスしていくことが重要となるが、Asprovaでの運用上、これらの作業の更なる効率化を図るためにAccess等でツールを作成し、運用するといった工夫を凝らしている。
こうして同工場では、導入時や稼働後に出てきた数々の課題改善に積極的に取り組むことで、現在では運用上の大きな課題はほぼ解消できているとのことだ。「今回のプロジェクトで、一応目標としていたシステムは完成しました。今後会社の方向性が変わるなどして運用方法が変わらない限り、適宜改良を加えながら現行のシステムを利用していきます。現在では様々な外的要因によって在庫削減も思うように進みませんが、我々を取り巻く環境が落ち着いてくれば、今後数字で表せる効果も出てくると思います」(竹田氏)。
■お客様の声

今回のAsprova導入は、基幹システムのリプレイスと併せて行なったという点で、非常にハードなプロジェクトでした。またMRPとスケジューリングを同時に実現するという点で、難易度も相当に高かったと思います。しかしプロジェクトメンバーの頑張りで、現段階では理想的な仕組みを作ることができました。
株式会社日本色材工業研究所 生産本部 取締役
座間工場長 兼 業務部長
竹田 雅夫 氏
株式会社日本色材工業研究所 生産生産本部 業務部
生産管理チーム
細川 正幸 氏
株式会社日本色材工業研究所 生産本部 業務部
生産管理チーム
福森 梓 氏
株式会社日本色材工業研究所 生産本部 業務部
生産管理チーム
大久保 有平 氏