株式会社浦和製作所 様
株式会社浦和製作所 様
Asprovaの“再立ち上げ”で 素材発注の計画立案時間を大幅短縮、
各工程の負荷状況の「見える化」を実現し、トレーサビリティの精度も向上
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浦和製作所様は1940年(昭和15年)、主に研削加工および工作機械の改造修理を行なう企業として操業を開始した。その後、自社でも旋盤やマシニングセンターを開発して加工部品の対象を拡げ、2003年にはISO9001/2000認証を取得、現在では自動車部品の加工、精密機械部品の加工および組立を中心に事業を展開している。 同社は2003年11月から3つの部門でAsprovaの導入を開始、翌年4月にカットオーバーを迎えた。しかし現場での利用が根付かず、改めて2006年6月から1部門に絞って再立ち上げを実施、倉庫管理システムとも連携を図ることで大きな成果を得た。 Asprova導入の目的、導入が根付かなかった理由、現在の導入効果などについて、常務取締役で製造部長の森谷嘉之氏、システム企画室 社長付の坂本明子氏にお話を伺った。 |
株式会社浦和製作所 ■本社所在地: 埼玉県さいたま市浦和区本太2-9-24 ■設立: 1940年7月1日 ■資本金: 5000万円 ■年間売上高: 36億円(2007年6月期) ■従業員数: 190名 ■事業内容: 電動パワーステアリングギアケースなどの自動車部品の加工、ボールネジナットなど の精密機械部品の加工および組立等 |
■計画立案工数の削減と各工程の「見える化」を目指し、Asprovaを導入 |
2003年11月当時、Asprovaの導入対象となったのは、自動車部品の電動パワーステアリング(EPS)、精密機械部品のボールネジ(BS)、およびリニアガイド(LG)の3部門だった。当時の課題について、常務取締役 製造部長の森谷嘉之氏は次のように説明する。 「この3製品の加工ラインでは、人の頭の中で全の計画が立てられて動いていました。基本的に受注生産なので、計画担当者は多大な工数をかけて、遅くまでお客様とも電話で調整しながら計画の詳細を詰めていたのです。またその担当者が体調を崩すなどして休んでしまうと、他の人間では見えない部分が非常に多かったということもあります」。 そこで同社はこうした課題を解決するためにAsprovaを導入し、計画立案の工数を削減するのと同時に、各工程が今どんな状況にあるのかを「見える化」しようと考えた。これによって負荷工程の把握と改善が可能となり、さらに先を見越した材料の発注などが実現きる。同社では約半年をかけてマスターの整備と計画パラメータの構築を行ない、併せて計画担当者への操作教育も実施した。そして2004年4月からAsprovaは稼働を開始する。 |
■管理責任者が不明確な状況下で、Asprovaは“日報出力用のツール”に |
しかし導入以降、Asprovaは当初の期待通りの効果を上げることができなかった。当時の状況を森谷氏は次のように振り返る。 「Asprovaに実績を入力してスケジューリングはさせていたのですが、それを日報として出すだけで何の評価もしていませんでした。実際にラインを動かすスケジュールは、やはり計画担当者が頭の中で組んだものだったのです」。 この原因について森谷氏は“専任の担当者がいなかったこと”を反省材料として挙げる。導入プロジェクトの開始当時、EPSは社長が、BSとLGについては森谷氏が管轄していた。その後BSの立ち上がり時期に森谷氏がEPSの部門に異動になり、責任部署が替わってしまったのだ。こうした人事面の変化が、Asprovaの活用に拍車がかからない大きな原因となったのではないか。「管理責任者が明確でない状態では、第一にAsprovaを使ってスケジューリングする役割の人間が明確にはなりませんし、ひいてはAsprovaの提案してくるスケジュールが適正なものかどうかの検証さえできません。そこではやはり“ベテランの経験”に頼った計画が、現場では一番信頼できたということです」(森谷氏)。 こうした状態は約2年間続き、その間Asprovaは“日報出力用のツール”として利用されていたことになる。 |
■約2ヵ月をかけ、Asprovaと自社の計画方法の違いを検証 |
同社は2006年6月、改めてAsprovaの“再立ち上げ”に取り組み始めた。この時にはAsprovaの活用をまず軌道に乗せるために、3つの部門の中では工程が一番シンプルなEPS部門に対象を絞った。このEPSの加工工程は、まず素材となるアルミダイカストを鋳造品メーカーに発注し、一旦倉庫に搬入、そこから計画に応じてマシニングセンターに投入し、加工処理後、検査/箱詰め/検品を経て、顧客に出荷という流れになる。 同社では約2ヵ月をかけて、EPS部門のAsprovaの計画パラメータを大幅に変更したが、再立ち上げからプロジェクトに参加したシステム企画室の坂本明子氏は、この間の具体的な取り組み課題を次のように説明する。 「始めに行なったのは、それまでに動かしてきたAsprovaの計画の立て方と、実際の加工ラインのやり方がマッチしているかどうかを検証することでした。その結果明らかになったのは、これまでのAsprovaでは、投入する素材量や稼働率から計画を立てるフォワード方式だったのですが、うちはお客様から事前に納期と必要数量を提示していただいているので、納期から逆算して加工計画を立てるバックワード方式のほうが適しているだろうということです」。ただし素材は鋳造品で、鋳造品メーカーに発注してから納品まで時間がかかるため1ヵ月単位での発注となる。そのため素材発注の部分についてはバックワードでは難しい。「そこで最終的には、計画の立て方は基本的にバックワードに変更し、それで対応できない部分についてはフォワードに近いやり方を残すという対応を取りました」(坂本氏)。 また坂本氏は苦労したポイントとして、“Asprovaで何が実現できるのか”を見極めることを挙げる。「例えばAsprovaでは最終的な出荷数から逆算し、不良品率を加味した上で投入する素材量を決めるのですが、私たちのやり方では始めに投入素材量を決め、そこから不良品が落ちていく形になります。Asprovaを真に活用していくためには相互の違いを見極め、Asprovaをチューニングして実現できることと、別途プラグインなどを導入しなければできないことを判断する必要がありました」(坂本氏)。 その後、さらに約1年をかけてAsprovaのアウトプットを見ながらパラメータを調整する作業を繰り返し、いよいよ2007年11月から、Asprovaの計画に沿ってラインを動かし始めた。 |
■素材発注計画の立案時間を大幅に短縮、納期遅れの予測も把握可能に |
本稼働から現在に至るまでの利用効果について、森谷氏はまず、素材の発注計画を立てる時間が大幅に短縮されたことを挙げる。「以前は実際の加工に入る約1週間前から計画担当者がPCの前で準備を始めていました。今では素材発注の計画立案に約1時間、注文書を発行するためにAsprovaにデータをセットするのに約1時間で、合計2時間程度で作業が完了しています」(森谷氏)。 またAsprovaで加工日程の計画を立てることにより、各ラインの負荷状況が把握できるようになった。これにより納期遅れの予測が“見える”ようになり、事前に回避策を講じることが可能となる。「現在では週に3回、計画担当者に計画進行表を配布していますが、ここでは納期遅れが赤い文字で表示されてくるので、その場合には“違うラインで対応してください”という指示を事前に出すことが可能です」(坂本氏)。 さらに同社では、素材となる鋳造品が納入された時点で「発注No(=ロットNo)」を発行し、それと紐付けて各工程の作業日をAsprovaに取り込むことで、素材が納入されてから製品の出荷に至るまでのトレーサビリティを実現している。 |
■倉庫管理システムの構築で、在庫の「見える化」も実現 |
同社では、Asprovaの再立ち上げと時を同じくして、“自動倉庫”と呼ぶ倉庫管理システムも構築した。高さ約15mの建屋の中に1200パレット程度が入る搬送ラックを作り、搬入された素材ラインで製造した完成品が、どこに保管されているかをPCの画面上で確認できるというものだ。これによって在庫の「見える化」も実現することができた。「自動倉庫の仕組みを導入したことで、在庫量は2年前に比べて約4割、削減することができました」(森谷氏)。 またAsprovaと自動倉庫の双方からデータを吸い上げ、出庫準備表を出力するシステムも構築した。Asprovaで立てた計画と自動倉庫の在庫情報を擦り合わせ、朝晩2回、自動倉庫に具体的な出庫指示を出すというものだ。 「2つのシステムを繋ぐ新たな仕組みを設けたことによって、倉庫のオペレータに対して、ロットNo単位での出庫指示を出せるようになりました。これによって作業の精度も大きく向上しました」(森谷氏)。 |
■今後は、より有効な活用方法を目指し、生産だけでなく会社の計画にも活用することを目指す |
森谷氏は、まだAsprovaを十分活用できているとは思っていない。「現時点での満足度はまだまだです。もともと導入時期からスケジューラというものに対して大きな夢を抱いていたのです。実際の運用に向けては時間はかかりましたが、形にはなってきていて、それで今後期待することは、周辺を整えるということを早期にやっていきたいが、その上でAsprovaが持つ、未来が見えるという強さに期待して設備投資の判断材料に活用したり、工場内の生産計画だけでなく会社としての計画も立てていけたら、と思います。大きすぎる期待かもしれませんが。」(森谷氏)。 | |
森谷氏、坂本氏は、アスプローバ社が保守ユーザ向けに定期的に開催しているアスプローバ活用研究会には毎回足を運び、この言葉のとおり、活用の糸口を探ろうとしている。同社は大きな夢に向かって一歩一歩着実にすすんでいるようである。 |
■お客様の声 |
当社は1回目の導入Asprovaの利用がうまく軌道に乗らなかったという苦い経験を持っています。そこで気付かされたことは、導入担当者が持つ責任の重大さとAsprovaで実現できることを十分に見極めることでした。こうした取り組みを経て、Asprovaは現在、生産管理の起点として確実に機能しています。 |
株式会社浦和製作所 常務取締役 製造部長 森谷 嘉之氏(右) システム企画室 社長付 坂本 明子氏(左) |