Interview
プロダクト開発とお客様サポート、
二つの視点で製品の価値を高めていく

Li Tong
李 彤
開発マネージャー
Asprovaの開発において、製品の品質向上は終わりのない挑戦である。今回は、開発からサポートまで幅広い役割を担う李彤氏にインタビューを行った。

開発とサポート、現場を支える二つの視点

現在の仕事内容を教えてください。
主に二つの役割を担当しています。一つは本体の機能開発です。もう一つは、お客様やパートナー様からのサポート対応ですね。
サポート業務について、具体的に教えていただけますか?
パートナー様から製品の使い方についての問い合わせが毎日5、6件ほど来ていますので、弊社の方針として24時間以内の一次回答を心がけています。海外からの問い合わせについては、時差の関係で多少時間がかかることもありますが、1-2日以内には必ず返答するようにしています。
なるほど、ユーザーからしてみると、そうしたスピーディな対応はものすごい安心感につながっていると思います。では、開発の面ではどんなお仕事をされているのでしょうか?印象に残っているお仕事などがあれば具体的に教えて下さい。
開発マネージャーの写真
私は入社して12年なのですが、2022年に開発した"前後依存後段取り"機能が特に印象に残っています。これは製造後の設備調整や段取りに関する機能で、ご要望自体は10年以上前からあったものです。ここ最近でご要望をいただく事が増えてきたのをきっかけに開発が決定しました。今までのシステムは工程の前に行う段取りだけ対応していたので、そこを改善する必要がありました。
その点をもう少し詳しく伺ってもよろしいでしょうか?
段取り時間というものは、前の作業と後の作業の組み合わせで決まるんです。同じものを作り続けるなら調整は必要ないのですが、違う製品に切り替えるときは1時間か2時間の段取り時間が必要になります。その設定を製造の後でもできるようにしてほしいという要望でした。
一見シンプルな機能追加に見えますが...。
そうですね。外から見ると単純に見えるのですが、内部的には、とても複雑でした。他の機能と組み合わせたときに問題が起きないか、そもそも組み合わせることができるのか。開発しながら一つずつ確認する必要がありました。

品質を支える開発プロセスとテスト体制

その確認はどのように行ったのですか?
弊社では新機能を開発するとき、必ず数千個のテストケースを使ってテストを行います。お客様の実データを使って、プログラムを変更するたびにテストを実行して、おかしな結果が出ていないか確認します。今回は新しいテストケースも100個ほど追加しました。
数千個も。大変ですね。
ただ、テストは1時間半くらいで終わるんですよ。アスプローバが独自開発した専用のツールがあって、自動的にプログラムを起動して、データを読み込んで、スケジュールを作って、結果を出力して、過去の結果と比較するところまでやってくれます。そうしたシステムのおかげもあり、バグの原因特定と修正がスムーズにできました。
実際の開発プロセスについて、もう少し詳しくお聞かせください。
開発マネージャーの写真
弊社では2-3年前から、PoCと呼ばれる独自の共同開発手法を採用しています。これは一般的なPoCとは少し異なり、お客様とベータ版のやり取りをしながら開発を進める手法です。まず、開発期間やテスト期間の見積もりについてお客様と合意を取ってから開発を始める手法です。テストについても段階的で、まず私自身がテストを行い、次に社内の他のメンバーやパートナー企業にテストしてもらい、そこで様々なバグが見つかりました。最終的にはお客様の環境でベータテストを実施します。この3-4ヶ月の開発期間中、合計で10数個のバグが見つかりました。
パートナー企業という名前が出たので、そちらとの関係について、もう少し詳しく教えていただけますか?
実はお客様は自分でAsprovaの設定をすることは少なくて、ほとんどの場合、パートナー企業に任せています。今回の機能も、開発前はパートナー企業が複雑な設定を駆使して何とか実現していました。その手間を省くためにも「標準機能として実装してほしい」という要望があり、開発が決定した経緯があります。なのでこれは単にお客様の利便性だけでなく、パートナー企業の作業効率化にもつながったと考えています。
そういった開発やサポート対応の中で、李さんのモチベーションになっているものは何でしょうか?
一番は、開発した機能でお客様に喜んでもらえることです。工場の方々は、スケジュール作成のために Excel で手作業をして、大変な思いをされています。それが私たちのシステムで楽になる、その手助けができることが一番嬉しいですね。"前後依存後段取り"機能も、実際にリリース後すぐに他のお客様も使ってくださり、本当に必要とされていた機能だったんだなと実感できて、とても嬉しかったです。
そんな李さんの目から見て、Asprovaの強みはどこにあるとお考えですか?
開発マネージャーの写真
ひとことでいうと、1994年からの30年で、様々な業種のお客様の要件に対応してきた実績と経験です。例えば中国でも、類似の製品が数多く存在しますが、実際の現場での要求に応えられず、プロジェクトが失敗するケースが多いと聞いています。Asprovaのコアの部分は容易に真似できないものです。

Asprova、未来への展望

それは本当に、Asprovaの強みですね。今後の競争環境について伺ってもよろしいでしょうか?
はい。私たちの製品はこれまで、スタンドアローン形式での提供でした。ただ今後はインストール不要で、ウェブサイトを開けばすぐ使えて、どの端末からでもアクセスできる。複数の人が同時に編集もできる形式が主流になり、弊社もクラウド化を進めていく必要があると考えています。将来的にはOSに縛られず、どこからでもアクセスできるようにしたいと考えています。
最近話題になっている、AIの台頭についてはどうお考えですか?
正直、AIには危機感を持っています。例えば「この工程からこの工程まで、最適な生産計画を立ててください」とAIに指示するだけで計画が立てられるようになったら...それは大きな脅威になりますね。2、3年前まではAIがここまで発展するとは誰も思っていませんでした。今、画像生成AIでグラフィックデザイナーの仕事が変わってきているように、スケジューリングの分野でも同じことが起こる可能性はあると思います。
AIへの対応は今後どのようにするのか、伺ってよろしいでしょうか。
他社がAIでスケジューリング問題を解決する前に、私たちが先手を打ちたいと考えています。AIの力を借りて、より良いソリューションを提供していく方向です。例えば、今は複雑な設定が必要ですが、将来的には自然言語で簡単に設定できるようになればいいですね。
御社の強みとAIを組み合わせていくわけですね。
その通りです。単にAIを脅威と見るのではなく、チャンスとして活かしていきたい。もちろん、簡単ではないとは思っていますが、お客様により良いサービスを提供するために、新しい技術も積極的に取り入れていきたいと考えています。
最後に、これからの抱負をお聞かせください。
これからも引き続き、技術の進化に柔軟に対応しながらも、これまで培ってきた経験とノウハウを活かし続けていきたいと考えています。クラウド化やAIの活用など、新しい取り組みにも積極的にチャレンジしていきますが、それは常にお客様の業務改善という原点を見失わないように心がけています。"プログラム的にできるけれど、時間やリソースの制約で実現できていなかった機能"にも、一つずつ取り組んでいきたいですね。お客様の「あったらいいな」という要望を、確実に形にしていきたいと考えています。
ありがとうございました。