マイクロブルアリー(地ビール)/マイクロベーカリー(焼きたてパン)

地ビールや焼たてパンは、サプライチェーンマネジメントの考えを取り入れている。それは、消費者の満足を基準にビジネスを考え、展開していることからも説明できる。


 工業化の発展は、大量生産・大量販売による物量拡大でコストを下げ、多くの消費者が物の消費による満足度を上げることで経済を拡大させてきた。そこではテーラー方式による部品や工程の標準化が物流拡大とコストダウンに貢献し、価格の低下が需要を増大させた。さらにスケールメリットによるコストダウンを生み、インクリーシングリターン(収穫逓増)の法則通り、市場はシェアの大きい会社ほど利益が上がり、さらに大きくなるというポジティブフィードバックによって経済が成長した。
 多くの工業製品はインクリーシングリターンの法則により、持てるものはますます持てるようになって、集中化と規模の拡大が産業のトレンドであった。二〇世紀初頭、米国の自動車会社は一六〇〇社もあったという。それが、今はクライスラーとダイムラーベンツのように、米国のビッグスリーの一つとヨーロッパのトップ企業が合併するほど集中化の流れにある。
 こうした工業化の流れと逆に動いてるのが、マイクロブルアリー(地ビール)、マイクロベーカリー(焼きたてのパン屋)である。サプライチェーンマネジメントは、ハイテク製品でも生鮮食料品と同じように、すぐ陳腐化することで企業の生存がおびやかされる問題を解決しようというところから発生した。大量生産・大量販売によるコストメリットよりも、リードタイムの短かい新鮮な製品が重要なのは寿司だけとは限らない。たとえば、ビールであり焼きたてのパンである。
 ビールは本来、麦芽とホップと「酵母菌」を原料とする生鮮食品である。それを、「酵母」を熱処理やフィルタで除去(生ビール)して、工業製品として大衆飲料化にしたのがナショナルブランドのビールである。それに対して、生鮮食品として発酵・貯蔵という一ヵ月の仕込みのリードタイムで、かつ、一ヵ月以内の消費を前提にしたビールが、「生鮮食品」としてのマイクロブルアリー(地ビール)である。すなわち、リードタイムという時間によってセグメントされた市場は、その製品仕様(レシピ)の多様性と生鮮食品としての原点復帰が、冷蔵輸送と翌日配達などの新しいロジスティックスとサプライチェーン再構築によって、新しい市場ができる可能性がある。マイクロベーカリーという、店頭での焼きたてのパンの製造販売も、新鮮さを消費者の満足度の基準にしてビジネスをしており、サプライチェーンマネジメントビジネスのモデルとして説明できる。
 地ビールレストランやコンビニエンスストアの焼きたてパンは、製造業と流通業やサービス業をつなぐサプライチェーン再構築の中で登場したニュービジネスといえる。