遺伝的アルゴリズム(GA)
複雑系の最適解を求める手法の一つとして、遺伝的アルゴリズム(GA)がある。サプライチェーンも複雑系であり、GA手法の応用も可能である。
遺伝的アルゴリズム(GA)は多様な複雑系の進化、最適化のための手法として実用化されており、これからもサプライチェーンマネジメントの最適化手法として注目されるに違いない。GAは二つの親個体としての状態からまったく異なる新しい子個体を生成し、世代交代を進めてより最適な進化した状態を作り出す最適化の進化アルゴリズムである。
サプライチェーンのオベレーションで必要なのは、オペレーションの設備や作業の数、製品の数、手順の数で、それらを組合せると現実的には気の遠くなるほど多くの変数になる。一つのプランを表現するデータの組合せは一つの形質を表現する遺伝子の列であるとすると、二つのプランをコード化して交叉することで、二つの親遺伝子の形質とまったく違う形質をもつ多様な遺伝子が作れる。
遺伝子の組合せで表現できる目的関数の解空間は複雑な曲面をしており、傾き情報のみで探索すると局所解に収束してしまうが、GAの手法は多様な遺伝形質の中から短時間に最適な形質を発見する方法であり、大局的な最適解を求める手法である。
遺伝的アルゴリズムは、クラシックな巡回セールスマン問題、すなわちN個の都市を重複することなく全部巡回する最短ルートを決定するという問題で、最新のコンピュータを使ってかなり大きなNまで解けるようになったそうだ。これはサプライチェーン問題とも類似性がある。遺伝的アルゴリズムの重要な点は、多変数の解空間の中で局所的な進化的停滞に陥ることなく、大局的最適解を得ることができる多様性にある。そのため設計問題、スケジュール問題まで応用が進んでおり、サプライチェーンマネジメントにおいても、全体最適を目指す非線型の現実世界のモデルから最適解を求めることに適しているといえる。
GAの組込まれたサプライチェーンマネジメントシステムにおいては、プランナーの役割はゴールを設定することと制約条件を与えることであり、システムは自己学習によってアルゴリズムを進化させる。スループットを最大にするオペレーションの同期化計画作りは、プランナーの役割とともに、進化するアルゴリズムがベースとなるであろう。
GAの実用例はスケジューリング、レンズの設計など設計変数が多くて数学的手法に限界があるときである。コンピュータのメモリ上にモデルを展開し、多様な選択肢を評価する場合に適している。