製品ライフサイクル
製品寿命は年々短かくなっており、ライフサイクルに同期化した考えがないと機会損失と過剰在庫のリスクを負う。
新製品を開発した後、市場に投入(上市)し売上を伸ばしていく過程で、短期的に増減があったとしても、大きなトレンドとしては上昇過程があってピークに達し、その後プラトー(高原状態)の場合もあるが、いずれ下降トレンドに入り、製品としての寿命を終える。この一連の製品の誕生から、寿命の終了までを製品ライフサイクルという。
売上の年次累計をプロットするとSカーブとなって、最初はスローな立上りだが、途中で急上昇し、しばらく成長曲線が続くが、やがて飽和してフラットになる。パソコンなどのハイテク製品の新モデルは、ライフサイクルは実質一年未満である。オロナミンCやリポビタンDなどの健康飲料は、数十年以上も製品寿命を維持している。自動車なども何年かに一度のモデルチェンジによって延命を図っており、また「何年式」というアピールによって需要の維持・拡大を狙っている。
このように、新製品の発生から終了までの製品のライフサイクルは年々短かくなり、ライフサイクルの変化に同期化したサプライを行なわないと、大きな機会損失と過剰在庫のリスクを負うことになる。事業戦略として製品別のライフサイクルをマネジメントすることも、サプライチェーンマネジメントの重要なテーマである。既存の製品の寿命を縮めることになるかもしれない新製品の投入も、トータルとしての売上と採算性に貢献する視点で意志決定しなければならない。一つの製品への固執や旧製品の在庫がコスト最適の目的のために新製品の投入を遅らせたために、競合製品が市場を支配して大損失を被るケースもある。製品別のデマンドマネジメントは、製品ライフサイクルのマネジメントである。そして、製品ライフサイクルのマネジメントは、デマンドに同期化させるサプライチェーンマネジメントの問題であり、生死を分ける事業戦略の課題につながってくる。
日本陸軍がソ連軍に敗北したノモハン事変では、新兵器が開発されていたのに旧兵器の在庫を無駄にしたくないとコストを優先したために日本軍は負けたという説がある。官僚主義の兵法といえる。
製品ライフサイクルをベースとするサプライチェーンマネジメントは、企業の収益性をキャッシュベースで強化し、バランスシート上も資産効率の良い経営につながる。