オブソリュートストック(陳腐化商品在庫)

キャッシュフローを上げるために重視されるのは、商品価値のなくなった陳腐化商品をなくすること。この改善機会が大きいということは、企業にとって宝となるものが埋もれているといえる。


 オブソリュートストックとは、商品価値のなくなった貯蔵品、つまり陳腐化した商品のことである。バランスシートには、購入した原材料に加工・生産というオペレーション経費が付加価値として加算された商品が、在庫資産として長期間にわたって計上されたままになっていることはめずらしくない。つまり、デッドストックになっている。
 ボトルネックが供給サイドにある場合は、需要は十分あって商品在庫として滞留することなく製品価値が下がる前にキャッシュに変換されるが、成熟経済下での完成製品は、市場での需要の大きさや競合関係で在庫製品の価値が決まる。また、ハイテク商品も、食品や医薬品も、製造後の経過時間によって価値が下がる生鮮食品と同じような特徴をもっている。デマンド(需要)の発生時点(または需要創造時点)と、調達・製造・物流のサプライチェーンのオペレーション時期との時間調整は、オブソリュートストックを最小限にし、損失を最小にすることである。
 生花のような商品は受注製品でない限り、つまり、見込生産の場合は売上の三〇~四〇%がオブソリュートになることが前提で価格設定されている。ハイテク商品のAV製品、半導体、そしてソフトウェア製品などの新製品がつぎつぎと上市される市場では、旧モデルはたちまちにして「腐って」しまう。
 オブソリュートストック、すなわち陳腐化在庫、物流上の流通コストや在庫コストとは違うサプライチェーンのコストである。デッドストックのコストは、財務会計上は明確に示されることはなく、生産と販売側の責任領域では、グレーゾーンになって収益性分析の対象から隠れていることが多い。
 しかし、サプライチェーンマネジメントがキャッシュフローを上げる目的で重視するのはこのオブソリュートストックを最小にすることであり、製造業の多くの会社ではその改善機会中に大きな宝の山が埋もれていることが多い。販売というデマンド創出のサプライチェーンのオペレーションと、資材調達・生産のオペレーションを同期化することで、この宝の山を掘り起こすことが可能になる。問題の大きさは、改善機会の大きさでもある。