共同物流

従来の流通構造に変革をもたらす共同物流。小売とメーカー、競合関係にある会社が共同で流通センターをもったり、共同で倉庫を建設したりする気運が高まっている。


 サプライチェーンマネジメントにおいて、「共同物流」はメーカー・卸・小売の従来のサプライチェーンの役割分担のあり方に革新をもたらす考え方である。日本の流通構造は、大量生産、大量販売のメーカー主導のもとに「代理店制度」という慣習の中で形成されてきた。これは供給側に立った流通であり、そのことが供給者がそれぞれ単独の流通システムを形成してきたといえる。
 小売のチェーンストア化の流れは、川下のデマンド側からの流通構造の変革である。米国発のECR(効率的消費者対応)やQR(クイックレスポンス)と同じように、消費者を起点としたデマンドに合わせたサプライチェーンを構築するには、小売・卸・メーカーの倉庫や流通機構を見直し、売り手、買い手という対立構造から、消費者が満足するようなパートナーシップを目指す必要がある。事実、最近では、小売チェーンにとっての卸の役割や小売とメーカーの役割分担のもとに、共同倉庫を建設したり、競合関係にあるメーカー同志が共同で流通センターをもったり、さまざまな形での共同物流の機運が高まりつつある。
 米国発の3PL(サードパーティロジスティックス)がメーカー・卸・小売における役割分担の再編成の中で生まれたように、共同物流も問屋不要論がある中で、サプライチェーンによる新しい生き残りを探るビジネスコンセプトかもしれない。
 イトーヨーカ堂と花王の共同在庫センターや、平和堂による複数メーカーとの共同倉庫などが卸抜きの共同物流だとすれば、三井物産の東南アジアにおける日系電子機器メーカーの発注・在庫管理や、販売代理機能などのアウトソーシング事業なども、サプライチェーンにおける新たなパートナー関係を模策する動き、すなわち「共同物流」といえる。
 「共同物流」の仕掛けは、関係者の利害関係を大局的見地から消費者の満足度で整理し、その行動が全体最適につながる創発を促すであろう。