ロジスティックスと物流

物の流れの管理という点では、物流もロジスティックスもサプライチェーンも同じような意味がある。しかし、スループットを上げる、社内だけでなく、社外へとマネジメント範囲が広がつているのがサプライチェーンで、今後のキーワードである。


 ロジスティックス、物流(物的流通)と、サプライチェーンの違いは、ビジネスマン共通の疑問である。私自身の考えは、ロジスティックスと物流は、生産プロセスは含めず、工場外の流通上の改善を目的とするものであるのに対して、サプライチェーンは製造現場の物の流れと、工場外や社外への業務改善を統合したマネジメントである、……というのが当初の考えであった。また、サプライチェーンマネジメントの理論的基礎となった制約ベースのTOC(制約理論)が、製造現場のスループットの向上を図るものであったことを考えると、サプライチェーンマネジメントは工場内のボトルネックのマネジメントや、シンクロナイゼーションによってスループットを増やす考え方を、仕入先、顧客まで組織横断的に拡張するマネジメントであるともいえる。
 ところが、ロジスティックスの専門家にいわせると、ロジスティックスには生産プロセスの改善も含んでおり、全体最適の収益性向上を狙うマネジメントであるとのことである。最近はロジスティックス関係の記事に、「サプライチェーン」という用語が多く使われるようになった。ところが、逆に製造プランニング&スケジューリングを語るときには、ロジスティックスや物流という言葉はあまり使わない。
 いずれにせよ、現段階で言葉の定義を厳密に行なうことは重要ではない。要は企業の収益力強化をすることが重要である。物流の業務改善やロジスティックス革新分野で認識されたコンセプトやモデルは、サプライチェーンマネジメントの理論化の中でいずれ一体化されていくであろう。物流ネットワーク構築や3PL(サードパーティロジスティックス)という共同配送による流通コストの削減、在庫管理方式の改善による在庫コスト削減などは、ロジスティックスの永続的課題である。
 これがサプライチェーンマネジメントの世界では、シンクロナイゼーションのマネジメントでリードタイムを短縮し、スピードを上げることで固定経費を軽くし、コスト削減を図るという関係でロジスティックスとつながってくる。また、在庫管理はコントロール対象が直接在庫ではなく、デマンドとサプライのマネジメントである。つまり、在庫はボトルネックを起点にしてシンクロナイゼーションするマネジメントであり、指標である。
 ロジスティックス、物流とサプライチェーンマネジメントはほとんど同義語といってもよい。というのも、トヨタ自動車のジャストインタイムは、米国のスーパーマーケットの棚管理という物流をベンチマーキングして得られたサプライチェーンマネジメントだからである。
 言葉の定義を厳密にすることよりも、その言葉が生まれて普及するプロセスに注目している方が、新しい発想を得るのに参考になるのではなかろうか。