JIT(ジャストインタイム)
米国のスーパーマーケットの商品補充をヒントに考えられたJIT。トヨタ生産方式として、日本の自動車産業を優位にし、その仕組みは多くの製造業に取入れられている。
JIT(ジャストインタイム)は、トヨタの生産方式として大野耐一氏が発案した製造業のモデルシステムといわれている。JITが生まれた背景には、戦後の日本の自動車メーカーが生き残れるかどうかということがあった。生産量が日本の一〇倍もあった米国の自動車産業の存在を前に、果たして日本に自動車メーカーが必要かどうかという議論が行政サイドにもあったという。
大野氏は圧倒的な強さをもつ米国の大量生産型システムに対して、多種少量生産で勝負しようと、常識では無理なテーマを追究していた。彼は、本社を含めた経営戦略や生産活動全体で米国に挑戦しようとしたわけではなく、工場のシステムに着目した。その基本的思想の中には生産管理という間接的なビジネスプロセスを「居候」とみなし、直接人員が自律神経のように現場で判断できるようにし、大脳系の管理機能を排除したことにある。また、この生産活動に自律神経の機能を組み込むためのヒントとして、米国のスーパーマーケットの仕組みを参考にした。それは、スーパーマーケットは、顧客が必要な部品を必要なときに、必要な量だけ引き取ると、その分を小さなバッチで補充するという考え方である。
この補充のサイクルタイムを短かくすると補充する個数も少なくてすみ、長時間滞留する在庫も少なくてすむ。そして何よりも資材部品・仕掛品の工場内の滞留時間、すなわちリードタイムが短かくなる。このJITのオペレーションは、前工程が後工程から刻々と発信されるカンバンという情報に反応する自律神経として設計されている。自律神経の反応動作は、情報が大脳を経由することなく筋肉に伝えられて行動を起こすのと同様に、オペレーション上の停止や再開が、メンバー間の情報共有により相互依存しながら行なわれる。この生産システムの進化するプロセスは、「流し生産」から「流れ生産」といわれる。これは、試作生産から量産に立上げるときの各工程のオペレーションの能力拡大と、オペレーション間での同期化の進化でもある。
「流し生産」と「流れ生産」の二つの生産システムの差は、リードタイムが三分の一、コストが二分の一と経験的といわれている。スループットが二倍になれば、固定費の単位コストは二分の一になる。