バッチサイズ(ロットサイズ)

一回のオペレーションで処理する量をバッチサイズまたはロットサイズというが、サプライチェーンではバッチサイズ(ロットサイズ)が大きければいいとはいえない。


 サプライチェーン上で、物の移動・加工など一回のオペレーション対象の物量単位を「バッチサイズ」、または「ロットサイズ」と定義する。一回のロットで何個を納入・仕入するか、トラック一回の輸送の最小単位はいくつにするというように使う。それは、一個ずつ個別にオペレーションするよりも、このようにロット単位にまとめる方が、単位コストが安くなるからである。タクシーに乗るとき、三人で乗ると一人当りの運賃は一人で乗るときの三分の一になり、単位コストは下がる。バッチサイズ三人の方がバッチサイズ一人よりも、三倍のコストダウンになる。
 炉釜の中での熱処理や殺菌処理なども、タンクやトレーの中でまとまった量をバッチ処理することでコストが下がる。家庭用の料理や食材でも、一週間分まとめて収納できる大型冷蔵庫があれば、食材のバッチサイズを大きくでき、数量当りの単位コストでみると買い物をする労務費が低減することと同じである。
 このようにバッチサイズはコストを最小化するために必要な知恵であるが、一方では、冷蔵庫の大型化のように、バッチサイズを大きくすることは、在庫コストを増やす要因にもなる。バッチサイズを大きくすることは、低減するコスト要因と増大するコスト要因を含んでいるため、トータルコストを最小にする最も経済的なバッチサイズがどこかにある。それを求める考え方には、在庫管理に伴う最適発注のロットサイズ計算のような、数学的に定式化されたものがいろいろある。
 ところが、最適なロットサイズ決定方式であってもコストが指標となっており、サプライチェーンマネジメントの重要な指標である時間(リードタイム)やスループットの考え方はまったく反映されていない。たとえば、大型冷蔵庫では買い物が週一回ですむため調達コストは下がるが、反対に買い入れたときから消費するまでのリードタイムが長くなり、新鮮さという商品価値を失う。
 近くのコンビニエンスストアを冷蔵庫代わりに使うとすれば、オンデマンドで小口多頻度で買物をする方がコストは高くなっても時間の価値、すなわち新鮮さの価値は上がる。バッチサイズが大きいことは、在庫として滞留している時間が長くなるので、リードタイムが長くなり鮮度を落とし結果的にスループットを落とすこともある。サプライチェーンマネジメントで最も重要なのは、コストではなくスループットである。
 小口多頻度のコンビニエンスストアの納入システムRDCを開発した菱食は、サプライチェーンの中抜きである卸不要論の中で、連続増収増益を続けている。