インベントリー(在庫)
サプライチェーンマネジメントでは、インベントリーを有効に活用することが大切である。変動するボトルネックの前の在庫がスループットを上げるために、バッファとして活用することが、キーになる。
原材料、仕掛、製品の在庫を総称して「インベントリー」と定義する。サプライチェーンマネジメントの理論からみると、インベントリーは重要な概念である。サプライチェーンのオペレーション能力が同期化しないでバラバラであることにより、また能力の不安定な変動(ゆらぎ)があることによって在庫が増え、リードタイムを長くさせ、スループット(算出量)を落とす。
在庫は負の面が多いとみられているが、一方でサプライチェーンのボトルネックとなるオペレーションの稼働率を最大に上げるためには、ボトルネックの前にバッファとして在庫を置くことがスループットを増やすことになる。もっともボトルネックの定義からすると、その前に在庫が滞留しているのが通常である。
ボトルネックとなるオペレーションは常に一〇〇%の稼動状態であるべきであり、その不安定な能力変動による稼働率の低下は、サプライチェーン全体のスループットの低下に直結している。稀れにしかない前工程からの材料不足は、スループットを落としてしまう。たとえば、販売能力がボトルネックであるとき、商品は過剰在庫になることが通常の現象である。ところが、生産工程・輸送・倉庫などの資源能力の変動でたまに商品不足になると、販売の稼動率を落とし、全体のスループットであるキャッシュフローを低下させる。
このような可能性を最小にするためには、戦略的なバッファとしての在庫をもつことがキャッシュフローを最大にする仕掛けになる。ボトルネックがもし組立後の検査工程であれば、その前に組立後の製品在庫をバッファとしてもつことがスループットを上げることになる。ボトルネックのマネジメントはその能力を上げることと、その前に在庫を積むことで稼動率を落とさないようにすることである。しかし、ボトルネックの稼働率が最大をキープしている限り、他のオペレーションはその動きに同期化させて在庫を最小にした方が、リードタイムは最小になりスループットは最大になる。
インベントリーには二つの側面をもつ。
一つは政策としてのインベントリーで、サプライチェーンのオペレーションスピードが制御できないために、バッファとして介在させる。これによって同期化しないオペレーション速度でも、重要なボトルネックが非稼動(アイドリング)になることを防ぐ重要な働きをする。
もう一つは、同期化の速度制御がうまくいかないときに、結果として思いがけないところに貯ってしまうこともあるインベントリーもある。この同期化には、速度を制御するドライバーのようなスキルが要求される。