スループット

一定期間当りの処理スピード(算出量)のことで、スループットはボトルネックによって決まる。したがって、ボトルネックを改善しないとスループットは増大しない。


 スループットは、サプライチェーンシステムから算出される一定期間当りの物流のスピードである。スループットは金額で表現され、かつサプライチェーンに販売を含めると、「キャッシュフローを生む速度」や「ある期間の売上」の概念である。それは、工場内のサプライチェーンでは完成品の算出速度であり、試作から量産の立上げまでの間に上昇するものである。個々の工程(オペレーション)の効率が上がって稼動率が向上することと、工程間の接続がうまく連動すること、すなわち同期化することでスループットは上昇する。逆に各オペレーションがバラバラに能力を発揮していては、たとえ、それぞれの平均能力が高くてもスループットは上がらない。
 サプライチェーンの各オペレーションの能力変動は、仕掛在庫を増やしてスループットを落とす。また、材料はあっても能力の低いオペレーションや、能力は十分にあっても一回のオペレーションで処理できるほど材料がなければ、設備がアイドリング状態になり仕掛在庫として蓄積していく。
 半導体工場などでは、稼動率を上げることで各工程の能力のゆらぎが蓄積することになって仕掛在庫が増え、リードタイムが長くなり、逆にスループットを落とすことがある。工場やそれから拡張された資材納入から製品が顧客に納入されるまでのサプライチェーンにおいてもまったく同じ原理が成り立つ。それはまた、ハイキングなどの行進や交通システムの乗り継ぎを伴った移動や、ダイゲームなどのアナロジー(推論)が成り立つ。
 スループットはオペレーションの能力変動によって左右されるとともに、能力の最も低いボトルネックによって決定される。ボトルネックの能力を上げないで非ボトルネックの能力を上げても、在庫を作るだけでスループットは一切増えない。トヨタ式生産システムの「流し生産」から「流れ生産」をサプライチェーンマネジメントのコンセプトでいえば、オペレーションの同期化によるスループットを増大させる方法論ということができる。
 メタファで分析したハイキングにおける最後尾の進行スピード、ダイゲームの最後の一人が取り出すマッチ棒の数は、サプライチェーンのスループットであるキャッシュフローの算出速度である。そしてそのスループットは、サプライチェーンのボトルネックで決定される。そのため、ボトルネックの能力が一〇%向上すると、スループットは一〇%の向上となる。