ベストプラクティス

「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」という兵法が、企業経営には必要である。そのために、自社内外の戦略・経営方法を比較分析し、最良のやり方を発掘・導入すべきである。


 ベストプラクティスとは、ベンチマーキングという手法によって企業内外のグループ間の比較分析を行ない、幅広い選択肢の中から最良な業務のやり方を発掘・導入し、創造することである。
 サプライチェーン上のオペレーションやそのマネジメントのやり方は、同業種、異業種を含めて他から学ぶことは多い。他企業、他部門を研究し学ぶスタンスがない限り、企業の進化はない。
 ベストプラクティスは、同業企業から得られるとは限らない。ベンチマーキングで有名なゼロックス社は、スポーツ用品の通信販売をしているL・L・ビーン社から、物流部門、倉庫管理部門に関するベンチマーキングで、L・L・ビーン社の倉庫・資材管理のベストプラクティスを探究した。ベンチマーキングで改善対策となる問題領域を発見し、自社と他社の過去と現在の業務プロセスを分析しながらベストプラクティスを探究することは、継続的な改善案を作成することと同じである。
 ゼロックス社でベンチマーキングを成功させたロバート・キャンプによれば、ビジネスの競争で参考となる戦略書は紀元前五〇〇年頃の孫子の兵法「敵を知り己を知れば、百戦危うからず」である。この考え方が、ベンチマーキングによるベストプラクティス探究に必要である。自社企業を知り、トップ企業、競争企業のプラクティスをサプライチェーン上で比較分析する。格差を見るには、ROAなどの経営指標とともにその根拠となるプラクティスを「なぜ」を繰り返すことで追究する。「なぜ、シェアが下がっているのか?」「なぜX社が伸びているのか?」「なぜ、納期が守れないのか?」「なぜ、在庫が多いのか?」「なぜ、材料不足が発生するか?」……。これらをあらゆる側面から追究し、根本原因を見付けていく。その質問と回答との繰り返しが、ベストプラクティスの発見につながる。
 ベストプラクティスは必ずしも模倣の戦略とはいえないが、自己満足と「井の中の蛙」を避けて、常に目を開いておく必要がある。自社のやり方について客観的に観察する視点がないと、いつのまにか遅れをとる。