バーチャルコーポレーション

サプライチェーンは一企業で成り立つものではなく、サプライヤからカスタマーまで長い鎖でつながつている。法人としては別組織を仮想的に管理対象として一つの企業体として考えるコンセプトが、バーチャルコーポレーション。


 経営改善のためのサプライチェーンは、決算の単位となる一つの企業だけではなく、資材供給業者(サプライヤ)から直接の顧客(カスタマー)、さらにサプライヤのサプライヤからカスタマーのカスタマーまで、長い鎖を構成する。サプライチェーンとしては、社外の取引先までも含んで管理することで全体最適になるが、法人としては別組織である。その別組織を仮想的(バーチャル)にマネジメントの対象として、一つの会社の組織的延長として考えるコンセプトがバーチャルコーポレーションである。
 パソコンメーカーにとってのパーツサプライヤ、自動車会社にとっての鉄鋼部品メーカー、加工食品メーカーにとって卸や小売チェーン店などでは、自社内倉庫の在庫だけでなく、バーチャルコーポレーションとして社外の物流拠点、販売・生産拠点における在庫、払出スピードなどの情報を共有化することで、各自のオペレーションの速度能力をシンクロナイゼーション(同期化)することが容易になる。
 したがって、サプライチェーンマネジメントは、バーチャルコーポレーションのコンセプトのもとでより効果を発揮するといえる。しかし、バーチャルコーポレーションには、物の流れには関係のない機能も統合する概念も含まれる。たとえば、製品企画と開発だけの企業にとっては、より上位の機能をもつ企業へアウトソーシングすることでサービスを受ける。それでバーチャルコーポレーションとしては統合される。会計サービスや広告製作サービスは、サプライチェーンには入らないかもしれないが、バーチャルコーポレーションとして統合することはできる。しかし、TVの広告や販売イベントを受託する会社は、サプライチェーンの販売活動や生産活動と同期化する必要があるという点では、バーチャルなサプライチェーンマネジメントに含まれるといえるかもしれない。
 バーチャルな統合がもたらす、新しいビジネスが生まれている。たとえば、コンピュータの製造・組立のOEMのアウトソーシングに徹している米国のソレクトロン社。同社は。IBMやHP(ヒューレット・パッカード)のコンピュータを、発注先の仕様に合わせてリアルタイムで製造計画を作り、最短のリードタイムで納品する。
 IBMやHPからみれば、自社の延長としてのバーチャルコーポレーションである。デルコンピューター社にとってのフェデックス社、P&G社にとってのウォールマート社など、バーチャルコーポレーションといえるものにはすでに多くの事例がある。