コンカレントマネジメント
全体が一つの生命体のように調和のとれた同時並行の行動ができるようにするコンカレントマネジメントは、経営を円滑・効率的に実行するための新しいコンセプトの一つ。
「サプライチェーン」は順次的な物の流れを示すが、このサプライ(供給)の流れとは逆方向にデマンド(需要)の流れがあり、サプライチェーンマネジメントはデマンドに対する経営上の意志決定のためのプロセスである。しかも、サプライチェーンマネジメントの情報と意志決定事項は、全体が同期化する必要がある。行進は、列になっていても全体が見えないロープでつながれ、ドラムのリズム(聞こえなくても)にのって進む。これは、全体が一つの生命体のように同時並行するシステムであり、近年の経営における重要な考え方である。それはコンカレントマネジメントのコンセプトでもある。
小説『ザ・ゴール』において経営立て直しのスタートは工場における現場の問題であったが、ボトルネックのマネジメントにおいては熱処理が必要であるかどうかのエンジニアリングの問題や、輸出製品の価格政策の根拠となる原価計算について会計部門とのあつれきの問題があり、それを解決する必要があった。同時に、人事問題としてのインセンティブプラン(動機付け計画)も再検討の対象となっていた。すべては相互に関連しており、同時並行という意味のコンカレントマネジメントによって、「経営のスピード」と「意志決定の正確さ」を実現しなければならなかった。
コンカレントマネジメントの重要性を理解するには、ツルカメ算に対する連立方程式の有用性、一方向のトップダウン型マネジメントよりもネットワーク型の情報共有のマネジメント、古典的哲学問題、「アキレスと亀」の連立方程式による解、弁証法のもつ問題記述方式など、多くのメタファが参考になる。
複雑系のモデルも全体を一体化する統一のコンカレントモデルである。生命系における神経細胞の情報は、シナプス間を順次的に伝達するのではなく、全体がネットワークで結ばれており、そのパターンの遷移として表現できるそうである。
サプライチェーンマネジメントも物の流れは順次的であったにしても、情報伝達と意志決定の制御系は一体化されたコンカレントマネジメントである必要がある。
原価管理における自責、他責という概念は、その対局にあるといえよう。