情報共有と可視性

情報量の増えた今日、情報をデータベース化し共有化することが必要である。サプライチェーンにおいても情報の共有と意志決定のために、自律性をもたせることが効率的といわれる。


 中央にすべての情報が集中し、中央集権体制のもとで運営される経済や政治よりも、意志決定権が分散され、自由な行動をベースとした社会の方が活性化されるというのは、二〇世紀の多くの事件から学んだ。企業経営の組織、特にサプライチェーンマネジメントの組織論においても、情報共有と意志決定の分散(自律性)が効率的であるといえる。カーネギメロン大学のフォレスター教授のインダストリアルダイナミックスは、サプライチェーン上の情報の流れが分断された企業間において、デマンドの流れ(仕入発注の上流への伝達)の変動がサプライの流れ(物流)の変動を大きく増幅させ、機会損失と過剰在庫の原因になることを実証した。
 意志決定をする組織が自律分散で情報が分断されいては、前記のようにフォレスター効果といわれる問題に直面する。また、情報が全員にわたる情報共有のもとでは、中央の権威は維持できず「中央」は機能しない。中央が機能するためには、分割した機能間で情報が分断され、中央にすべての情報が集中するようにした方がよい。大きな軍隊組織、宗教組織、そして官僚組織は歴史的にこの方式で成功してきたといえる。
 近年の科学のパラダイムである複雑系でも、西欧の主流的考えである階層構造による中央集権のマネジメントのみの経営が行き詰まり、情報共有で可視性を上げる自律分散制御の機構も(中央からの命令ではなく、一つの行動指令があるのみ)組み込んだ組織が強力であることが実証されてきた。
 サプライチェーンマネジメントも、情報技術による共有情報のモデル化技術としてとらえることができる。分断されたバラバラな情報では、いくらインターフェースをとってもサプライチェーン上の可視性は上がらない。したがって、ここでいう情報共有とは、サプライチェーンのインテグレーションモデルを実現することがベースになっている。
 ERPのコンセプトは、サプライチェーンを構成する購買、生産、販売(オーダーエントリー)、在庫管理、売掛、買掛のシステムが統合化されたデータベースに、モデル化するところに重要性がある。