MTS(見込生産)
需要予測によって見込生産するMTS。需要予測の正確度が過剰在庫を防ぎ、また品切れという機会損失を防ぐので、いかに需要予測を正確にするかが課題である。
MTS(メイクツーストック)は、直訳すればストックのための生産であり、需要予測によって見込生産することであり、これはプッシュ型生産といえる。MTSは、需要予測の正確度が在庫切れによる機会損失を防ぎ、また反対に過剰在庫を最小限にするために要求されてきた。大量生産、大量販売の工業化社会では、この見込大量生産が標準化を促し、コストダウンという経営効率化を促した。
経済拡大とともに消費者の所得は増大し、需要は右肩上がりで増え続けた。需要は、経済の好不況のサイクルとともに変動し、需要が下がって在庫が増えても、やがて需要が回復すると在庫はキャッシュに変わる。そのため、過去の需要変動サイクルから、どのようにして先を読むかが経営上の主要テーマである。具体的には資材の調達と生産、配送のリードタイムと需要予測から、いかにして安全在庫を設定し、最適な生産と発注点を設定するかなど、生産・在庫管理システムの開発が経営効率の上から求められている。
需要がある程度読めれば、見込みの生産計画で問題はない。MTO(受注生産)がボタンを押すと動き出すエレベータ(オーダーによってサプライオペレーションが起動)とすれば、MTS(見込生産)はあらかじめ時間帯毎の乗客数(見込需要)が過去のデータから読める列車のダイヤ編成(サプライ計画)のようなものである。加工食品や雑貨・テキスタイルなどのほとんどの日用品はMTS型で、それらは消費者のニーズに即応(小売店頭在庫)することが、機会損失を最小にする。
MTSの課題は、在庫が過剰にならないようなサプライマネジメントをすることである。そのため、QR(クイックレスポンス)やECR(効率的消費者対応)、CRP(連続的補充計画)やVMI(ベンダー在庫管理)のようなプル型のデマンドによって、小口(バッチサイズの小さい)サプライを多頻度に実行することが必要である。それによって、商品の流れを速くし、キャッシュフローを上げる。本来、プッシュ型のMTSをプル型のCRPやVMIのサプライチェーンモデルに切換えることが、サプライチェーンマネジメント成功の秘決である。