生産計画と生産スケジュールの違い

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生産計画は本来負荷計画と不可分の関係にあるにも関わらず、従来の生産管理システムで生産資源の負荷を考慮した生産計画を自動で作成するのは難しいことでした。そこで生産資源に効率よく作業を割り付け、納期遅れしない計画を自動的に作成する生産スケジューラが登場しました。

(1)生産計画と負荷計画

製造業の生産管理部門では、顧客からの確定受注情報や内示情報を元に、製品在庫や手番を考慮した上で、まずは日割り調整した基準生産計画(MPS=Master Production Schedule)を作成します。

このMPSを部品構成表(BOM=Bill of Material)に従って所要量展開して、リードタイムを考慮して製造オーダーを作成しますが、生産管理システムのMRP(Material Requirement and Planning)を駆使して製造オーダーを作成している会社もあれば、Excel作業で行ってている会社もあります。

こうして作成した製造オーダを時系列に並べることで、品目単位の製造予定表(月次生産計画)を作成しますが、ここまでがいわゆる生産計画(Production Planning)と呼ばれるものです。

生産計画を立案し、実際に現場への製造指図を発行するにあたり、ラインへの割付けが必要になりますが、このときのラインにかかる仕事量が負荷であり、負荷を消化するために既存資源量で対応できるかどうかを予測し、生産準備の段階で負荷を分散させたり、残業を入れたり、ラインを追加したりするのが負荷(能力)計画(Capacity planning)です。

つまり生産計画と負荷計画は不可分の関係にあり、負荷計画の間違いは生産計画の間違い(納期遅れ)に直結します。

(2)MRPと生産スケジュール

生産管理システムのMRPは、負荷計画を考慮しない無限能力バックワードで、ラインごとに製造オーダーを山積みする仮の生産計画であり、製造オーダーを消化するだけの生産資源と稼動時間が存在するかを確認しながら、マニュアルで代替資源や代替日程への平準化割付を行ないます。

MRPの負荷計算機能では、ライン別に品目別の標準負荷(サイクルタイム)を設定し、オーダ数量に応じてラインにかかる負荷時間を計算し、リードタイム(日)ずらしした日に「山積み」して1日あたりのライン能力とぶつけることで、日単位の勝ち負けが確認できます。

日単位の「山積み」結果として判明したライン能力のあふれ分が、前倒し(もっと早く割付ること)すれば納期に間に合うのかどうかを知るために「山崩し」を行いますが、これを自動的にやってくれるのが生産スケジューラで、この負荷平準化機能の有無がMRPと生産スケジューラの大きな違いの一つと言えます。

この設備の負荷を考慮した日程計画と資材調達計画を同期的に行う手法はAPS(Advanced Planning and Scheduling)と呼ばれ、全体最適化志向の先進的スケジューリング手法であると考えられています。

(3)生産スケジューラの機能

Excelを使って生産スケジュールを作成する場合は、工程別に日単位の固定リードタイムで製造オーダーを積み上げ、1日の能力をオーバーするオーダーについては、前倒しするか残業または休日出勤で対応します。

生産スケジューラでは1個あたり何秒、または1時間当たり何個生産といったサイクルタイムで製造リードタイムを計算しますので、理論的に可能な最短時間の製造リードタイムでスケジュールを作成します。

固定リードタイムで計算するExcelに比べて、サイクルタイムで計算する生産スケジューラではリードタイムの短縮が見込まれます。

製造リードタイムが短縮することにより、工程内に滞留する仕掛品在庫と製品倉庫に置かれる製品在庫が削減します。材料入荷のタイミングを遅らせることができる、材料在庫も削減します。

またボトルネックになりやすい工程の前後工程が在庫を作りすぎないようにボトルネック工程のタクトに合わせた生産スケジュールを生成することができます。

ボトルネック工程の稼働率を最大化することによりリードタイム短縮、在庫削減が実現できれば、自動的に棚卸資産としてではなくキャッシュで持てる期間が長くなり、キャッシュフローが改善されます。

(4)生産資源の見える化による全体最適化

生産スケジューラの大きな特徴の一つとしては、受注から生産と購買を一気通貫で見える化することであり、生産資源を時間、負荷、在庫など多面的に俯瞰することができます。

ERPなど基幹業務システムは工程別に生産管理を行いますので、工程間に中間在庫が発生しやすくなり、リードタイム短縮にも限界がありますが、工程間を串刺し状に繋ぐことで、生産に流れを作ります。

そして工場の中の工程の流れを一気通貫で見える化することができるということは、工程単位の部分最適化ではなく、工場全体での全体最適化を考えるのに役立ちます。

生産管理システムは工程ごとに管理を分けている場合が多いですが、これではリードタイムを短縮するのに限界があり、工場内で各工程ごとに仕切りがあったり建屋が分かれていたりすると、工程間の在庫は山積みとなり生産リードタイムが長くなります。

工程間を隔てる壁こそが、モノの流れと情報の流れを滞留させ、リードタイムが緩くなり仕掛在庫が増える要因であることに気づけば、生産工程を串刺し状につなげ、生産に流れを作ることの重要性が判ります。

生産スケジューラによって全体最適化された生産スケジュールに基づいて、材料の所要量、工程への投入タイミングを明確にすることで、各工程間の在庫が削減されます。

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